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ワープする宇宙

ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く

 

形態形成場仮説は余剰次元で証明できたりしないのだろうか。

GPSで、誤差1メートルに保つためには、一般相対論効果による補正をしなければならないというのは興味深い。

 

原題はwarped passagespassagesとは経路という意味を持つ。

ユニバース(宇宙)に対して、マルチバース(多重宇宙)という考えを示しているので、邦訳の宇宙はこのコンテキストでの宇宙である。この宇宙には、時間を加えた四つの時空次元のほかに、見えない次元が隠れている可能性がある。それらの余分な次元を余剰次元と呼ぶ。余剰次元に名前が必要なとき、パッセージと呼ぶ。

 相対性理論によれば、時間と空間は、物質やエネルギーがあれば必ず歪められる。もし、宇宙に隠れた次元があれば、その方向に歪められ曲がることもあるはずで、その様子を表すのが「ワープ」という専門用語である。

ということから、邦題は、「ワープする宇宙」とされたのではないかと推察した。

 

目次

Ⅰ部 空間の次元と思考の広がり
序章 なぜ見えない次元を考えるのか/本書のあらまし/未知の興奮
第1章 入り口のパッセージ――次元の神秘的なベールをはぐ
次元とは何か/愉快なパッセージを通って余剰次元へ/二次元から見る三次元/有効論理
第2章 秘密のパッセージ――巻き上げられた余剰次元
物理学における巻き上げられた次元/ニュートンの重力の法則と余剰次元ニュートンの法則とコンパクトな次元/次元に別の境界はありうるか
第3章 閉鎖的なパッセージ――ブレーン、ブレーンワールド、バルク
スライスとしてのブレーン/境界をなすブレーンと埋め込まれたブレーン/ブレーンにとらわれて/ブレーンワールド――ブレーンのジャングルジムの青写真
第4章 理論物理学へのアプローチ
モデル構築/物質の中核/今後の展開
Ⅱ部 20世紀初頭の進展
第5章 相対性理論――アインシュタインが発展させた重力理論
ニュートン万有引力の法則/特殊相対性理論等価原理――一般相対性理論の始まり/一般相対性理論の検証/宇宙の優美な湾曲/湾曲した空間と湾曲した時空/アインシュタイン一般相対性理論/最後に/まとめ
第6章 量子力学――不確かさの問題
びっくりするようなすごいもの/量子力学の始まり/量子化と原子/電子の量子化/粒子のとらえがたさ/ハイゼンベルク不確定性原理/二つの重要なエネルギー値と不確定性原理の関係/ボソンとフェルミオン/まとめ
Ⅲ部 素粒子物理学
第7章 素粒子物理学の標準モデル――これまでにわかっている物質の最も基本的な構造
電子と電磁気学/光子/場の量子論反粒子陽電子/弱い力とニュートリノクォークと強い力/これまでにわかっている基本素粒子/まとめ
第8章 幕間実験――標準モデルの正しさを検証する
トップクォークの発見/標準モデルの精密テスト/まとめ
第9章 対称性――なくてはならない調整原理
変わるけれども変わらないもの/内部対称性/対称性と力/ゲージボソンと粒子と対称性/まとめ
第10章 素粒子の質量の起源――自発的対称性の破れとヒッグス機構
自発的対称性の破れ/問題点/ヒッグス機構/弱い力の対称性の自発的な破れ/おまけ/注意/まとめ
第11章 スケーリングと大統一――異なる距離とエネルギーでの相互作用を関連づける
ズームイン、ズームアウト/仮想粒子/なぜ相互作用の強さが距離によって決まるのか/大統一/まとめ
第12章 階層性問題――唯一の有効なトリクルダウン理論
大統一理論における階層性問題/ヒッグス粒子の質量に対する量子補正/素粒子物理学の階層性問題/仮想のエネルギーを帯びた粒子/まとめ
第13章 超対称性――標準モデルを超えた飛躍
フェルミオンとボソン――ありそうもない組み合わせ/超対称性の歴史/超対称性を含めた標準モデルの拡張/超対称性と階層性問題/破れた超対称性/破れた超対称性とヒッグス粒子の質量/超対称性――証拠を査定する/まとめ

Ⅳ部 ひも理論とブレーン
第14章 急速な(だが、あまり速すぎてもいけない)ひものパッセージ
初期の騒乱/ひも理論の起源/超ひも革命/旧政権のしぶとさ/革命の余波/まとめ
第15章 脇役のパッセージ――ブレーンの発展
発生期のブレーン/成熟したブレーンと探されていた粒子/成熟したブレーンと対称性/双対性の詳細/まとめ
第16章 にぎやかなパッセージ――ブレーンの発展
粒子とひもとブレーン/重力――あいかわらずの特異性/ブレーンワールドのモデル/ホジャヴァ-ウィッテン理論/まとめ
Ⅴ部 余剰次元宇宙の提案
第17章 ばらばらなパッセージ――マルチバースと隔離
私がとった余剰次元へのパッセージ/自然性と隔離/隔離と超対称性/隔離と輝く質量/まとめ
第18章 おしゃべりなパッセージ――余剰次元の指紋
カルツァ-クウライン粒子/カルツァ-クウライン粒子の質量を確定する/実験上の制約/まとめ
第19章 たっぷりとしたパッセージ――大きな余剰次元
大きさが(ほぼ)1ミリメートルもある次元/大きな次元と階層性問題/高次元重力と低次元重力の関係/階層性問題に戻ると/大きな次元を探す/大きな余剰次元加速器で探す/副産物/まとめ
第20章 ワープしたパッセージ――階層性問題に対する解答
歪曲した幾何と、その驚くべき帰結/歪曲した次元での拡大と縮小/さらなる発展/歪曲した幾何と力の統一/実験の意味するところ/さらに奇妙な可能性/ブラックホール、ひも、その他の驚異/最後に/まとめ
第21章 ワープ宇宙の注釈つきアリス
第22章 遠大なパッセージ――無限の余剰次元
局所集中したグラビトン/グラビトンのKKパートナー/まとめ
第23章 収縮して膨張するパッセージ
そのころのこと/局所的に集中した重力/まとめ
Ⅵ部 結びの考察
第24章 余剰次元――あなたはそこにいるのか、いないのか?
何を考えればいいのか
第25章 結論――最後に

 

第3章 閉鎖的なパッセージ――ブレーン、ブレーンワールド、バルク

複数のブレーンがあるマルチバース(多重宇宙)。

ブレーン(高次元空間に存在する膜状の物体。粒子と力を閉じ込めることができる)高次元のバルクに埋め込まれている世界では、一部の粒子は高次元を飛び回ることができるが、ほかの粒子はブレーンにとらわれたままである。つまり、ブレーンが高次元空間全体の境界になっている。この高次元空間全体をバルクという。バルクは全方向に伸び、つまり、あらゆる次元に及ぶ。

わたしたちの世界はバスルームにおけるシャワーカーテン(膜、ブレーン)で、わたくしたちはシャワーカーテンに着いた水滴のようなものである。水滴はシャワーカーテンの上を移動できるがシャワーカーテンからバスルームに飛び出すことはできない。バスルーム全体が高次元(5次元、6次元など)の世界である。
 わたくしたちはブレーンの3次元世界のなかを移動できるが高次元の世界へ飛び出すことも異次元の世界を見ることもできない。
 わたしたちの住む3次元のブレーン以外にも、異なる次元のブレーン(異次元の世界)がいくつかあると考えている。ブレーンが高次元の空間全体の境界になっている。この全体の空間を「バルク」という。

第4章 理論物理学へのアプローチ

 

量子力学一般相対性理論

今日の素粒子物理学の基本(標準モデル、対称性、対称性の破れ、階層性問題)

まだ解決されていない問題に対する新しい考え方(超対称性、ひも理論、余剰次元、ブレーン)

 

 

ひも理論の基本的な前提は、粒子ではなく、ひもが自然界の最も基礎となる物体である。

私たちの周囲の世界で観測される粒子は、ひもの振動によって生じる結果にすぎない。

ひものさまざまな振動のしかたに応じて、さまざまな粒子が現れてくる。

 

素粒子とはそれ以上分割できないと考えられている基本粒子。
標準模型では次の3つの種類に分けられる。
・物質を構成する粒子
・力を伝える粒子
・物質に質量を与える粒子

・物質を構成する粒子
さらに2つのグループに分かれる。
一方のグループは「クォーク」で6種類。
さらにそれぞれは3種類の色を持っている。
もう一方のグループは電子の仲間で「レプトン」と呼び、これも6種類ある。
レプトンには電子の兄弟とニュートリノの兄弟がある。

6種類あるクォークレプトンは、それぞれ3つの組に分類され、これを「世代」と呼ぶ。
世代の違いは主に重さの違いだが、世代の存在理由は不明。
第2世代以降の素粒子は、宇宙の創世時には存在していたが、現在の地球には存在しない。


・力を伝える粒子
ゲージボソン
自然界には4種類の力が存在するので、これに対応してゲージボソンも4種類が存在する。
電磁気力を伝える光子(フォトン)、重力を伝える重力子(グラビトン)、強い力を伝えるグルーオン、弱い力を伝えるウィークボソン
このうち重力子(グラビトン)だけはまだ発見されていない。
また、グルーオンは色によって8種類に分けられ、ウィークボソンには3種類の粒子がある。


・物質に質量を与える粒子
→「ヒッグス粒子」と呼ばれるものがあります。
素粒子にはもともと質量がなくて、ヒッグス粒子(ヒッグス場)が質量を与える。

 

 

 

Ⅱ部 20世紀初頭の進展
第5章 相対性理論――アインシュタインが発展させた重力理論

GPSで、誤差1メートルに保つためには、一般相対論効果による補正をしなければならないというのは興味深い。

 

●光速は一定である。観測者の動く速さによって変わることはない。
相対性理論は私たちの空間と時間に対する概念を修正し、それらを単一の「時空」構造として扱えることを示している。
特殊相対性理論はエネルギーと運動量(物体が力にどう反応するかを示すもの)と質量の値を関連付ける。その一例がE=mc^2の方程式で、Eがエネルギー、mが質量、cが光速を表す。
●質量とエネルギーは時空を曲げ、その曲がった時空が重力場の原因と考えられる。

 

アインシュタインの十字架

「物質があるところでは光の軌道がその重力によって曲がる」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8D%81%E5%AD%97%E6%9E%B6#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Einstein_cross.jpg

 

次元の数は、時空の次元の数。

身の回りに見える世界は、四次元宇宙。

時間だけを別にするときは、3+1次元の宇宙、もしくは三つの空間次元

 

第6章 量子力学――不確かさの問題

1電子ボルト(eV:イーヴィ)は、1個の電子を1ボルトの電位差に逆らって動かすのに必要なエネルギー。


量子力学の考え方では、物質も光も「量子」という不連続の単位からなっている。たとえば光も、連続しているように見えながら、実際には光子という不連続の量子からなっている。
●量子は素粒子物理学の基盤である。既知の物質と力を説明する素粒子物理学の標準モデルにしたがえば、すべての物質と力は最終的に素粒子とその相互作用の観点から解釈できる。
量子力学は、すべての粒子にそれぞれの「波動関数」という関連した波がある、とも言っている。この波の絶対値の二乗は、粒子がある特定の位置に見つかる確率を示す。便宜上、これからときどき「確率波」についても触れることになるが、これは、もっと一般的に使われる波動関数の絶対値の二乗である。この確率波の値は、確率を直接的に示す。こうした波は、あとで「グラビトン(重力子)」- 重力を伝える粒子 - について説明するときにも出てくる。確率波は「カル ツァ-クライン(KK)モード」を語るときにも重要となる。KKモードは、粒子が余剰次元に沿った、つまり通常の次元に対して垂直な運動量をもっている波である。
古典物理学量子力学のもう一つの重要な違いは、量子力学が、粒子の経路を正確には定められないとしているところである。粒子が出発点から到達点に移動するときの正確な経路は誰にもわからない。したがって、私たちは粒子が力を伝えるときにとりうる経路をすべて考慮しなくてはならない。量子の経路には相互作用をしている粒子がすべて関わってくるため、量子力学的効果は質量にも相互作用の強さにも影響を及ぼす。
量子力学は粒子をボソンとフェルミオンに分ける。この二種類の粒子の存在は、標準モデルの構造に不可欠であり、標準モデルから発展した「超対称性」の考えにも欠かせない。
量子力学の「不確定性原理」を特殊相対性理論の関係性と考えあわせると、物理定数を使うことによって、粒子の質量とエネルギーと運動量を、その粒子が力や相互作用を経験できる最小限の距離に関連づけられるとわかる。
●この関係性が最もよく適用されるのは、「ウィークスケールエネルギー」と「プランクスケールエネルギー」という二つのエネルギーである。ウィークスケールエネルギーは25O GeV (ギガ電子ボルト)で、プランクスケールエネルギーはそれよりはるかに大きい10^19MGeV である。
●ウィークスケールエネルギーの粒子に測定可能なほど影響を与えられるのは、10^-16センチメートルより短い距離で働く力だけである。これはきわめて微小な距離だが、核内の物理過程、および粒子が質量を獲得するときのメカニズムには、この距離が関係する。
●「ウィークスケール長さ」は非常に小さな値だが、「プランクスケール長さ」よりははるかに大きい。プランクスケール長さは10^-33センチメートルで、プランクスケールエネルギーをもった粒子に対して力が影響を及ぼせる範囲の大きさである。プランクスケールエネルギーは重力の強さを 規定する。粒子がそれだけのエネルギーをもたないと、重力は強くならない。



Ⅲ部 素粒子物理学
第7章 素粒子物理学の標準モデル――これまでにわかっている物質の最も基本的な構造
●標準モデルは、重力以外の力と、その力の作用を受ける粒子で構成されている。広く知られている電磁気力に加え、原子核の内部で作用する二つの力、強い力と弱い力がある。
●弱い力は、標準モデルの最も重要な、いまだに解明されていない謎を投げかける。ほかの二つの力が質量のない粒子によって伝えられるのに対し、弱い力を伝えるゲージボソンは質量をもつのである。
●力を伝える粒子に加え、その力の作用を受ける粒子も標準モデルには含まれる。これらの粒子は二種類に分かれる。強い力の作用を受けるクォークと、それを受けないレプトンである。
●これまでにわかっている粒子は、物質のなかに見つかる軽いクォークレプトン(アップクォークダウンクォーク、電子)だけではない。もっと重いクォークレプトンも存在する。アップクォークダウンクォーク、電子には、それぞれ二つずつ重いバージョンがある。
●それらの重い粒子は不安定であり、したがって、それより軽いクォークレプトンに崩壊する。 しかし、粒子加速器での実験でこれらの粒子を生みだせていることから、おなじみの軽い安定した粒子と同じ力の作用を重い粒子も受けていることがわかる。
電荷を帯びたレプトンニュートリノ、アップ型のクォーク、ダウン型のクォークからなる粒子の各グループは「世代」と呼ばれる。世代は三つあり、それぞれがうまく各タイプの粒子の重いバージョンを含んでいる。これらの粒子の種類をフレーバーという。アップ型クォークのフレーバーが三つと、ダウン型クォークのフレーバーが三つ、電荷を帯びたレプトンのフレーバーが三つ。そしてニュートリノのフレーバーが三つある。

●このあとは、もう特定のクォークレプトンについては詳細も名称も出てこない。ただし、フレーバーと世代については知っておいてもらう必要がある。これらによって粒子の特性に強い制約が生じるからで、ひいてはそれが、標準モデルの先にある物理への決定的なヒントと制約になるからだ。
●それらの制約のうち、とくに重要なのは、電荷は同じでもフレーバーの異なるクォークレプトンどうしがお互いに変化するのは皆無に近いということだ。粒子がすぐにフレーバーを変えるような理論は、その時点で除外される。詳しくは後述するが、これが超対称性の破れのモデルなど、もっか提案されている標準モデルの拡張版にとって大きな難題となっている。



第8章 幕間実験――標準モデルの正しさを検証する
素粒子物理学の研究において最も重要な実験ツールは、高エネルギー粒子加速器である。そのうち衝突型の加速器は、粒子どうしを加速して衝突させるもので、このときに充分なエネルギーがあれば、通常は質量が大きすぎて自然界に存在できない粒子を生成させられる。
●現在稼動中の衝突型加速器のなかで、最も高いエネルギーを出せるのがテヴァトロンである。
●テヴァトロンの約七倍のエネルギーを出せる大型ハドロン加速器 (LHC)が数年以内の稼動を めざしてスイスに建設されており、完成の暁には、さまざまな素粒子物理学モデルを検証するこ とになっている。


第9章 対称性――なくてはならない調整原理
●二つの異なる配置構成が同じようにふるまうことを、対称性があるという。
素粒子物理学では、対称性はある特定の相互作用を排除する有益な方法として働く。対称性を保存しない相互作用は許されないからだ。
●対称性は力の理論にとって重要な要素である。機能しうる最も単純な力の理論には、それぞれのカにかかわる対称性が含まれているからだ。これらの対称性が、ありえない粒子を排除する。また、力の最も単純な理論によって導かれてしまう高エネルギー粒子についての誤った予言も、対称性によって排除される。


第10章 素粒子の質量の起源――自発的対称性の破れとヒッグス機構
●高エネルギー粒子についての正しい予言をするためには対称性が欠かせないが、クォークレプトンウィークボソンに質量があることから、「弱い力の対称性」は破れなくてはならないとわかっている。
●それでも誤った予言を導かないようにするために、高エネルギーでは弱い力の対称性を維持しておかなくてはならない。したがって、弱い力の対称性は低エネルギーでのみ破れる。
第10章 素粒子の質量の起源——自発的対称性の破れとビック
●あらゆる物理法則が対称性を維持していても、実際の物理系が対称性を維持していないとき、 「自発的対称性の破れ」が生じる。自発的に破れる対称性とは、高エネルギーでは保存されるが、低エネルギーでは破れる対称性である。弱いカの対称性は自発的に破れる。
●弱いカの対称性が自発的に破れる過程を「ヒッグス機構」という。ヒッグス機構が弱いカの対称性を自発的に破るには、ウィークスケール質量、すなわち25O GeV とほぼ同じ質量をもっ粒子(ヒッグス粒子のこと)が存在しなくてはならない(対称性の破れのスケールと粒子の質量が関係づけられるのは、特殊相対性理論の E=mc^2によってエネルギーと質量が関連づけられるため)。


第11章 スケーリングと大統一――異なる距離とエネルギーでの相互作用を関連づける
●「仮想粒子」は現実の物理的粒子と同じ荷量をもつ粒子だが、そのエネルギーは違う値をとれる。
●仮想粒子はきわめて短い時間しか存在しない。「真空」、すなわち粒子がまったくない宇宙の状態から、一時的にエネルギーを借用する。
●物理過程に対する「量子補正」は、仮想粒子が本物の粒子と相互作用することから生じる。この仮想粒子からの寄与は、生成と消滅によって本物の粒子の相互作用に影響を及ぼし、本物の粒子どうしのあいだを媒介する役を果たす。
●「無政府主義原理」によって、粒子の性質を考えるときはつねに量子補正を考慮に入れなければ ならない。
●「大統一理論」では、高エネルギーでのただ一つの力が、低エネルギーでは重力以外の三つの既知の力に変わる。三つの力が統一されるには、高エネルギーでそれぞれが同じ強さをもたなくてはならない。

 

第12章 階層性問題――唯一の有効なトリクルダウン理論

●ヒッグス機構が粒子に質量を与えるしくみであることはわかっているが、ヒッグス機構を働かせる最も単純なしくみは、ひどいごまかしを加えないとなりたたない。この最も単純な理論では、ウィークボソンクォークの質量についての予言が実際より約一京倍も大きくなってしまう。どうして実際はそうではないのか、という疑問が「階層性問題」である。
●階層性問題は、低いウィークスケール質量と莫大なプランクスケール質量との比から生じる。プランクスケール質量は重力にとって重要な意味をもつ。プランクスケール質量の値が大きいということは、重力が非常に弱いことを意味する。したがって、階層性問題を別の言い方で表現すれば、なぜ重力はこんなに弱く、重力以外のほかの力に比べて圧倒的に弱いのか、ということになる。
●階層性問題を解決する理論は、やがて実験で検証可能になる。ウィークスケールエネルギーより 高いエネルギーで働く加速器での実験で、かならず何かしらの答えが出るからだ。大型ハドロン加速器がまもなくそのエネルギーを探る予定になっている。

 

第13章 超対称性――標準モデルを超えた飛躍

●「超対称性」は、本質的に粒子スペクトルを二倍にする。超対称理論では、すべてのボソンに超対称性によって対をなすフェルミオンがあり、すべてのフェルミオンに超対称性によって対をなすボソンがあるとされる。
量子力学的効果によって、ヒッグス粒子は軽いままでいるのが(超対称性がないと)難しくなるが、 ヒッグス粒子が重くなりすぎると標準モデルはなりたたなくなる。余剰次元理論が出現するまで、 超対称性はこの問題を扱う唯一の方法だった。
369 第13章 超対称性――標準モデルを超えた飛躍
●超対称性は、なぜヒッグス粒子が軽いのかという疑問にはかならずしも答えていないが、ヒッグス粒子が軽いという仮定をもっともらしくすることで、階層性問題の解決の糸口を与える。
●標準モデル粒子とそのスーパーパートナーがヒッグス粒子の質量に及ぼす、多大な仮想粒子による補正は、すべて合わせるとゼロになる。したがって超対称理論では、ヒッグス粒子が軽くても問題は生じない。
●超対称性は階層性問題を解決するかもしれないが、その対称性は完全ではありえない。もし完全なら、スーパーパートナーが標準モデルと同じ質量をもつわけだから、すでに実験で超対称性の証拠が見つかっているはずである。
●「スーパーパートナー」が本当に存在するならば、それはパートナーの標準モデル粒子より質量が大きくなくてはならない。高エネルギー加速器は、ある程度までの質量の粒子しか生成できないので、まだスーパーパートナーを生むだけのエネルギーには達していないとも考えられる。それならスーパーパートナーがまだ見つかっていないのも説明がつく。
●いったん超対称性が破れると、「フレーバーを変える相互作用」が起こりうる。これはクォークレプトンを、同じ電荷をもった別の世代の(つまり、もっと重いか、もっと軽い)クォークレプトンに変える過程である。既知の粒子のアイデンティティを変えるのだが、これは自然界では 非常に珍しい過程で、ごくまれにしか起こらない。しかし、超対称性の破れの理論のほとんどは、これが非常にひんぱんに、実験で確認されているよりもずっとひんぱんに起こると予言してしまう。

 

Ⅳ部 ひも理論とブレーン

 

第14章 急速な(だが、あまり速すぎてもいけない)ひものパッセージ

古典理論で対称性が保存される場合でも、仮想粒子を含む量子力学的過程ではその対称性が侵害されることもある。このような対称性の侵害をアノマリー(異常)といい、アノマリーが含まれる理論はアノマラス(変則)といわれる。

●光子が電磁気力を伝えるように、「グラビトン」という粒子が重力を伝える。
●ひも理論にしたがえば、この世界の根本的な物体は「ひも」であり、点状の粒子ではない。
●後述の余剰次元のモデルはひも理論を主体として使うことはしない。きわめて小さいプランクスケール長さ(10^-33センチメートル)より大きい距離では、素粒子物理学で充分だからだ。
●ただし、ひも理論はやはり素粒子物理学にとって重要だ。低エネルギーにおいても、ひも理論の導入する新しい概念や分析手段は役に立つ。

 

第15章 脇役のパッセージ――ブレーンの発展

M理論は、超ひも理論と11次元の超重力のどちらも包含する11次元理論。


●ひも理論は誤った呼称である。ひも理論には高次元ブレーンも含まれているからだ。Dブレー ンはひも理論におけるブレーンの一種で、開いたひも(丸まって輪になっていないひも)の端は かならずこの面に位置している。
●ブレーンは過去10年のひも理論の重要な発展の多くに寄与した。
●ブレーンは「双対性」を示すのに決定的な役割を果たした。この双対性により、外見的に異なる別種のひも理論がじつは互いに等しいことが証明された。
●低エネルギーでは、10次元の超ひも理論が11次元の「超重力理論」、すなわち超対称性と重 力を含めた11次元理論と双対になる。片方の理論の粒子はもう片方のブレーンと合致する。
●ブレーンについてこの章でわかったことは、あとの話には関係してこない。ただ、ひも理論の世界でこれほどブレーンが注目されている理由の一部は、ここで説明したことに表れている。

 

第16章 にぎやかなパッセージ――ブレーンの発展
●ブレーンワールドはひも理論の枠組みのなかで考えられた可能性だ。ひも理論の粒子と力はブレ ーンにとらわれているのかもしれないとする見方である。
●重力はほかの力とは異なっている。重力はブレーンに閉じ込められることがなく、常にすべての次元に広がる。
●ひも理論がこの宇宙を記述しているとすれば、そこには多くのブレーンが含まれているかもしれない。その場合、ブレーンワールドは非常に自然な帰結となる。

 

第17章 ばらばらなパッセージ――マルチバースと隔離
●粒子は異なるブレーンに隔離されている可能性がある。
●きわめて小さな余剰次元でも、観測可能な粒子の性質に影響を及ぼせる。
●隔離された粒子はかならずしも無政府主義原理の対象とはならない。遠く離れた粒子は直接の相互作用ができないので、かならずしもすべての相互作用が起きるわけではない。
●超対称性の破れの原因となる粒子が標準モデルの粒子から隔離されているモデルでは、粒子を別のフレーバーに変えてしまうような相互作用を導入せずに、超対称性を破ることができる。
●隔離された超対称性の破れは検証が可能である。高エネルギー加速器でゲージーノが生みだされれば、ゲージーノの質量を比較して、予言と一致するかどうかを確かめられる。
●隔離されたフレーバー対称性の破れは、粒子の質量が異なる値をとれる理由を説明する手がかりになるかもしれない。

 


第18章 おしゃべりなパッセージ――余剰次元の指紋
●カルツァークライン(KK)モードは余剰次元の運動量をもつ粒子である。これは高次元粒子で ありながら、私たちの四次元世界にこっそり紛れ込んでくる。
●KK粒子は既知の粒子と同じ荷量をもった重い粒子のように見える。
●KK粒子の質量と相互作用は高次元理論によって定められる。したがって、そこには高次元時空の性質が反映されている。
●あらゆるKK粒子を発見して、その性質を測定できれば、高次元の大きさと形状がわかる。
●現在の実験上の制約を勘案すると、すべての粒子が高次元空間を自由に移動できているとすれば、余剰次元が10^-17センチメートルより大きいことはありえない。

 


第19章 たっぷりとしたパッセージ――大きな余剰次元
●標準モデルの粒子がブレーンに閉じ込められているとすれば、余剰次元は物理学者がこれまで考えていたよりずっと大きくなりうる。約0.1ミリメートルもの大きさをしている可能性もある。
余剰次元がそこまで大きくなれるとすれば、電磁気力、弱い力、強い力に比べて重力がこれほど弱い理由も説明できる。
●大きな余剰次元で階層性問題が解決されるとすれば、高次元重力は約一TeVで強くなる。
●高次元重力が約一 TeVで強くなるとすれば、LHCがKK粒子を測定可能な頻度で生成するだろう。KK粒子は衝突で生じたエネルギーを持ち去るので、エネルギーの失われた事象がKK粒子の現れた痕跡となる。

 


第20章 ワープしたパッセージ――階層性問題に対する解答
●バルクとブレーンのエネルギーにより、ブレーンそのものは完全に平坦だとしても、時空は劇的に曲がっている可能性がある。
●この章で見たモデルでは、重力ブレーンとウィークブレーンという二つのブレーンが想定されており、それぞれが有限の大きさをもつ五番めの次元の境界をなす。時空はバルク内のエネルギーとブレーン上のエネルギーによって歪められている。
余剰次元を一つ導入すると、まったく新しい方法で階層性問題が解決される。このモデルにおける五番めの次元は大きくないが、非常に歪曲している。重力の強さは、対象が五番めの次元のどこにいるかに強く依存している。重力は重力ブレーン上では強く、私たちのいるウィークブレー ン上ではきわめて弱い。
●自分が四次元にいると思っている観測者の視点から見ると、五番めの次元で異なる場所にいたものは、それぞれ異なる大きさと質量をもっている。重カブレーンに閉じ込められているものは非常に重くなる(プランクスケール質量とほぼ同じ質量をもつ)が、ウィークブレーンに閉じ込められているものはそれよりもずっと軽く、およそ一TeV の質量をもつ。
ヒッグス粒子がウィークプレーンに閉じ込められていると(ただしゲージボソンは別)、すべての力の統一と、階層性問題の解決がなしうる。
●グラビトンのパートナーとなるカルツァ-クライン粒子は、加速器実験において明らかに独特の事象を起こす。検出器のなかで崩壊して標準モデルの粒子に変わるのである。
●標準モデルの粒子がバルク内にいるモデルでは、別のKK粒子が生成され、観測される可能性がある。

 

第21章 ワープ宇宙の注釈つきアリス


第22章 遠大なパッセージ――無限の余剰次元
●時空の歪曲のしかたによっては、余剰次元が無限に伸びていながら、なおかつ目に見えない可能性もある。
●重力はある一定の有限の領域に厳密に拘束されていなくても、そこに局所集中することがある。
●重力が局所集中している場合、質量のないKK粒子が局所集中した四次元グラビトンである。この粒子は重力ブレーンの近くに集中している。
●それ以外のKK粒子はすべて重カブレーンから離れたところに集まっている。それらの確率関数の形状と、確率関数が最高値をとる位置は、それぞれの質量によって決まる。

 

第23章 収縮して膨張するパッセージ
●局所集中した重力は局所的な現象である。時空の遠く離れた領域がどうなっていようと、この現 象には影響がない。
●重力は、この世界の別の領域では別の次元があるかのようにふるまえる。局所集中したグラビトンはかならずしも空間全体に広がってはいないからである。
●私たちは、世界が四次元に見える、空間の孤立したポケットに住んでいるのかもしれない。