akon0.98bのよっぱらいの戯言

好客三年不変店 好店三年不変客

強さと脆さ

強さと脆さ

ブラックスワン刊行後の批判に対しての反論。

原著は増補版のために書き下ろされたエッセイを、日本語版では独立した本として出版したの出版社としてはよいアイディアと思う。

 

ブラック・スワンとは「予想されない出来事が不意に起こること」。

 

人は、紙には絶対に書かないことでも口でなら言う。

 

過去の歴史は絶え間なく書き換えられているので、過去も大部分は推測だ。

 

知慮の原則

第四象限確率が事前にわかっているか(ボラティリティか不確実性か)と、ペイオフがシンプルか複雑かのふたつの軸でタレブは四つの象限を作り、不確実性と複雑なペイオフの組み合わせである「第四象限」にブラック・スワンが生まれやすいとしている。

バーベル戦略→守りを固めた態度と、行きすぎなぐらい積極的な態度を同時にとる戦略。

第四象限を和らげるため第四象限を抜け出すための一番わかりやすい方法は「刈り込み」だ。

手に入るなら保険を買 って、エクスポージャーの一部を抑え、自分を「バーベル」の状態に置く。

バーベルはつくり出せず、エクスポージャーをなくせない場合は、次のような原則に従う。

ブラック・スワンを和らげるための知恵の原則

1.時の試練と、はっきりとは現れない知識に敬意を持つ

2.最適化を避ける。無駄を愛する事を学ぶ

3.確率の少ないペイオフを予測しない。

4.起こりにくい事象に「典型的な姿」なんてないのに気をつける。

5.ボーナスの支払いにはモラル・ハザードがついてまわるのに注意する。

6.リスク指標は避けて通る。

7.よい黒い白鳥か、悪い黒い白鳥か

8.ボラティリティが見られないのをリスクがないのと取り違えない。

9.リスクを表す数字を見たら気をつけろ

  

黒い白鳥に強い社会を創るための10の提言(原則)

1. 壊れやすいものなら、早く、まだ小さいうちに壊れたほうがいい

2. 損失を社会化し、利益を私有化してはいけない

3. 目隠しをしてスクールバスを運転していた(そして事故を起こした)連中は、二度とバスを運転させてはいけない

4. 成功報酬をもらえる人に原子力発電所を経営させてはいけない。金融リスクの管理もだめだ。

5. 複雑なことは単純なことで中和する

6. 子供にダイナマイトを渡してはいけない。注意書きが貼ってあってもダメだ

7. 信頼に支えられる仕組みなんてネズミ講だけだ。政府に「信頼を取り戻す」なんてことをさせてやらないっといけないいわれはない。

8. ヤク中が禁断症状に苦しんでいても、麻薬を与えてはいけない

9. 市井の人たちは金融資産を価値の保蔵手段として使うべきでない。

また、あてにならない専門家のアドバイスに老後の生活を託してはいけない

10. オムレツは割れた卵でつくる

 

ブラック・スワン』用語集

■学術自由主義者

知識には厳密な決まりごとがあるが、だからといって制度でお墨付きをもらう必要はないと考える(私自身のような)人。制度化された知識が追求するのは自己保全であり、真理ではない(政府もそうだ)。学界はひどい専門家の問題(「空っぽのスーツの問題」の項を参照)に陥って、見た目がいいだけのにせものの知識を生み出すことがある。講釈系の学問(「講釈系の学問」の項を参照)にはとくに多く、そういう類が黒い白島の主な源になっている。

 

■アペレス流の戦略

「よいほうの黒い白鳥」へのエクスポージャーを最大化し、好ましい偶然が起こったときに利益を得ることを目指す戦略。

 

■バーベル戦略

守りを固めた態度と、行きすぎなぐらい積極的な態度を同時にとることからなる戦略。あらゆる不確実性の源から資産を守り、その一方でとてもリスクの高い戦略にほんの少し資産を投じる。

 

■教養俗物

見せかけだけで誠実さのない教養を身につけた俗物。ニーチェは、通説に弱く、文化に浅く形だけ接する新聞の読者やオペラ好きを指してこの言葉を使った。私はそれを、実験を行わない分野で業界用語を駆使し、創造力、好奇心、学識、そして教養に欠け、自分の考え、つまり自分の「学問」のまわりから出ようとしない研究者に拡張して使っている。そういう人たちは、自分の考えと世界の手触りの食い違いを感じ取ることができない。

 

■黒い白鳥を見るのに不自由

黒い白鳥一般の役割を過小評価し、ときどき特定の黒い白鳥に限って過大評価すること。

 

■黒い白鳥の倫理問題

黒い白鳥には反復ができないという性質がある。そのため、黒い白鳥を予防する人と治療する人は報われ方が 違う。

 

■追認の誤り(追認バイアス、プラトン的追認)

自分が信じていることや、つくりあげたもの(やモデル)を支持してくれる事例ばかり探すこと。そのうえ、そんな事例を見つけてしまうこと。

 

■空っぽのスーツの問題(「専門家の問題」)

プロの中には、プロでない人たちと能力の点で違いはないのに、なんらかの理由で、かつ実績に反して、専門家だと信じられている連中がいる。臨床心理学者、経済学者、リスク「専門家」、統計学者、政治アナリスト、 金融「専門家」、軍事アナリスト、CEOなんかがそうだ。こういう輩は自分の知識を麗しい言葉と業界符了と数学で飾りつけ、往々にして高いスーツを着用している。

 

■移行的推論

仮説を立てずに歴史を顧みる手法。この手法では、一般化をできるだけ行わず、因果関係を主張することの副作用に注意を払う。

 

■知識に関するうぬぼれ

本人がわかっていると思っていることと、その人が実際にわかっていることの差。前者が後を上まわって、いればうぬばれているということであり、後者が前者を上まわっていれば謙虚だということを示す。成長とは、知識に関して謙虚な人であり、自分の知っていることに大きな疑いを持っている人のこと。

 

■認識の不透明

ランダム性は、なんらかの点で情報が不完全であるために起こる。そうしたランダム性は、機能の面から見れば、「真の」ランダム性つまり「物理的な」ランダム性と区別できない。

 

■果ての国

一つの観察結果が全体に大きな影響を与えうる領域。

 

■物言わぬ証拠の誤り

歴史を見るとき、私たちにはことの全体が見えない。過程のバラ色の面だけが見える。

 

■まぐれにだまされる

偶然を必然と混同すること。それがさまざまな迷信につながり、日常にも顔を出す。たとえば、何かの仕事の稼ぎが大きいのは、本当は運の要素がとても大きいのに、能力によるものだと信じ込んでしまう場合などがある。

 

■未来を見るのに不自由

未来の性質を考えに入れることができないという人間の生まれついての欠陥のこと。他の人にも脳みそがあるということを考えに入れられない自閉症に似ている。

 

ジョン・ロックの狂える人

間違った仮定にもとづいて反論の余地のない厳密な議論を展開する人。ポール・サミュエルソン、小ロバー ト・マートン、ジェラール・ドブリューなど。彼らはそうやって不確実性のインチキなモデルを生み出し、お かげで私たちは黒い白鳥に振りまわされる。

 

■宝くじの誤り

よいほうの黒い白鳥を集める投資を宝くじのまとめ買い呼ばわりする底の浅い議論。宝くじは拡張可能でない。

 

■お遊びの誤り(オタクの不確実性)

プラトン的な誤りが不確実性の研究に現れたもの。偶然の研究をゲームやサイコロの狭い世界に押し込めること。非プラトン的なランダム性には不確実性がもう一種類ある。現実の世界ではゲームのルールにも不確実性が伴うのだ。ベル型カーブ(ガウス分布)、またの名をGIF (Great Intellectual Frand、壮大な知的サギ)は、お遊びの誤りをランダム性に応用したもの。

 

マンデルブロの灰色の白鳥

なんとか考慮するところまでは私たちにもできるが、性質を完璧に把握して正確な計算を行うことはできない、 地震、ベストセラー、株式市場の暴落などの黒い白鳥。

 

■月並みの国

月並みが支配し、極端な成功や失敗がほとんどない領域。一つの観察結果が全体に大きな影響を与えることはない。月並みの国はベル型カーブの上に建っている。ガウス的な世界と拡張可能な世界の違いは、気体と液体の違いのように質的なものである。

 

■講釈系の学問

すでに起こった過去に合わせて、もっともらしくそれらしい説明をつくる学問分野。対語は実験系の学問。

 

■講釈の誤り

互いに関連していたり、いなかったりする一連の事実に対し、それに合った説明やパターンをほしがるの性質。それを統計に応用したものがデータ・マイニングである。

 

■オタクの知識

どんなものでもプラトン化して研究できる、あるいは、プラトン化できないものはすべてとるに足らないと信じ込むこと。懐疑主義オタク派というものまで存在する。

 

プラトン性の境目

プラトン的に表現されたモデルが現実に接し、副作用が現れる領域。

 

プラトン

三角形などの物体や、社会的には友情や愛といった、純粋で明確で簡単に見分けがつく概念に焦点を絞り、他方で、一見して複雑であり、扱いが難しい構造を無視すること。

 

■確率分布

互いに異なる事象のオッズ、つまり事象がどんなふうに「分布」しているかを計算するために使われるモデル。何かが正規分布に従うとは、ガウスのベル型カーブを使えばいろいろな事象の起こる確率を計算できるということである。

 

帰納の問題

黒い白鳥の問題を論理的・哲学的に拡張したもの。

 

■不完全情報としてのランダム性

単純に言ってしまえば、何かの原因が不完全にしかわからないために推測ができないなら、それはランダムである。かならずしも過程が真に予測不能という性質を持つ必要はない。

 

■振り返ったときの歪み

時間が先へ進んでいるのを調整せずに過去に起こったことを検証すること。後づけの予測可能性という幻想に結びつく。

 

■リヴァース・エンジニアリングの問題

角氷を見て水たまりを推測するほうが、水たまりを見てるとの角氷の形を推測するよりも簡単である。この「逆問題」があるために、(歴史のような)講釈系の学問や説明は信用できない。

 

■行きと帰りの誤り

黒い白鳥(でもなんでも)が存在するという証明がないことを、黒い白鳥(でもなんでも)が存在しないという証明があることと取り違えること。統計学者や、式をたくさん解きすぎて推論のほうを忘れてしまった人たちが陥る。

 

■ 予測のスキャンダル

(とくに講釈系の分野で)予測を行う人たちの、ひどい成績、くどいコメント、そして自分のひどい成績に気づいていないことを、混ぜ合わせたもの。

 

■抽象的なものの軽視

抽象的だけれども重要なものより、何かの文脈に置かれたものを好むこと。「子どもが一人死ねば悲劇だが、100万人死ねば統計にすぎない」

 

統計学の循環性(統計による循環論の問題)

確率分布を知るにはデータが必要だ。データが十分か、どうすればわかる? 確率分布からわかる。ガウス分布なら、ほんの数個データがあれば十分だ。ガウス分布かどうか、どうすればわかる? データがあればわかる。つまり、どんな確率分布を仮定するのがいいかを知るにはデータが必要だし、どれだけデータがいるかを知るには確率分布が必要だ。これでは深刻な循環論に陥ってしまうが、臆面もなくガウス分布やその親戚に頼ればなんとか回避できる。

ガウス分布正規分布、ベル型カーブ

 

■勘違いした連中の不確実性

不確定性原理や、それと同じぐらい大げさな話を日常生活に持ち込みたがる人たち。素粒子のことを心配しながら、その一方で明日危機がやってくるかどうかも予測できないのを忘れてしまっている。