akon0.98bのよっぱらいの戯言

好客三年不変店 好店三年不変客

ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険

 

 

Hrafnkell 辞書編纂者の偏愛

Hrafnkellアイスランド・サガの1つ。

saga(アイスランド語)をサガと訳し注記がない。

ロマンシング サガのサガと思って読み進めたが、サガは、おもに中世アイスランドで成立した古ノルド語(古北欧語、古アイスランド語とも)による散文作品群の総称で、これが転じて、フィクションにおいて、一家一門の物語を壮大に描く長編の叙事小説となった。

 

ウェブスターは商標登録されていない。

 

But 「文法」の誤解

"but try"は、"but""try"の間にみえない"to"があり、不定詞が不定詞になるのに"to"は必ずしも必要ない。

不定詞は名詞の代用語になりえる。

名詞は前置詞の目的語になれる。

つまり、ここでのbutは接続詞ではなく、前置詞だ

 

goodは副詞だが、I'm doing well.といわずに、I'm doing good.というので副詞である。

 

辞書とは言語の使われ方をただありのままに記すものだ。

 

poorは質の良し悪し、badは道徳性に言及している。

 

It’s 繁茂する英語

it's”はit isit hasを略したもので、it isやit hasでないものなら"its"を使うべき。


Irregardless まともじゃない言葉

Irregardless(~にもかかわらず)は、非論理的な造語であり、「まともじゃない言葉」であるが辞書に残っているところに価値がある。

娘がその地域の方言で、"I'm done my homework."といい、"I'm done with my homework."という標準英語を話さないことで、標準英語を使いこなす能力がない人間とみなされる。

ハイチ・クレオール語で話せば、白人ではないとみなされる社会である。

一方で、意識して「エボニクス」でしゃべるのは政治的な意味があり、「ホーミー」はやめて「ガイズ(guys)」を使うようになったり、「ニガ(nigga)」を使うようになる。

inggを発音しない黒人英語

filliの発音を長く伸ばすメキシコ英語

 

Corpus 骨を拾い集める

abecedarian(人間の学習をすべて拒否した16世紀のドイツのアナバプテスト)

珍しい言葉で、意味も稀である。

このことを確認するために、コーパス(corpus、複数形はcorpusesではなく、corpora)をつかって集める。

ただし、情報源がオンラインだと、気ままに変えられたり、編集されたり、消えたりする。

ある言葉が定着したかどうかは、引用符、イタリック体、注釈などがついているかで判断する。

 

Surfboard 語釈の宿命

辞書編纂者は辞書的語釈のみで、本質的語釈はよくない辞書編纂の見本とされる。

つまり、ある特定の場面で言葉がどのように使われるか、どんな意味で使われるかについて述べる。

hellaはveryを意味するカリフォルニア方言

 

Pragmatic 無感情で実用的な用例

用例には出典があるもの(著者引用例)とないもの(作例)がある。

引用は以下の基準をクリアしていなければならない。

・もっとも一般的な使い方を表わしている。

・辞書に載っている語のみを使っている。

・可能な限り人間的かつ退屈な文である。

 

Take 小さくも厄介な言葉

Takeだけでひと月かかった。

 

Bitch よろしくない言葉

bitchは雌犬を指していたが、「ふしだらな女性」という意味を持つようになり、フェミニズム運動によって、男性にも使われるようになる。

女性が女性にnice! bitchといったら侮辱したことになるのか。

辞書編纂者は「侮辱語」とレーベルをつけることによって、その意味を使い手にゆだねることができる。

白人辞書編纂者はniggerの項目を編集せぬばねらなくなって、この言葉が代弁する数世紀にわたる攻撃に気が付く。

 

Posh 語源をめぐる妄言

"port out, starboard home(往きは左舷、帰りは右舷)"

poshは、切符が英国とヨーロッパ間だったり、船の日陰側だったり、

英国のポーツマスを出発する詳細不明の旅で日当たりのよさを約束するものだとか

詳細がわからないので、語源もわからない。

OKoll korrectの頭文字で、故意に聞き間違えた綴りから略語を作るという

19世紀初頭にいっとき流行った遊びから、"all correct"の綴りを面白おかしく変えたものだ。

 

頭文字とは複合語の主要な部分のイニシャルを合わせて作られた単語で、その読みが単語となったもの。たとえばネイトーと読む"NATO"、スナフと読む"snafu"など。

 

American Dream 初出という旅

1980年代に差別化のために、初出を設けた。

これは意外と大人気だった。

 

言葉はたいてい話し言葉として生まれた、それから親しい間のやりとりで書き言葉になり、やがて活字となって世に広まっていく。

したがって、最初に使ったのはいつなのかをはっきり知ることは不可能。

初出の定義と情報は辞書によって異なる。

 

"boston marriage"の語釈は「ふたりの女性の間で長く続く恋愛関係」なので、ヘンリー・ジェイムズが「ボストンの人々」で使った"boston marriage"は、「女性間の恋愛関係」という意味で使ったわけではないので、初出として採用できない。

 

"American Dream"とは、「平等主義と特に物質的な繁栄に重点を置いたアメリカ社会の理想。

また、この理想を実現した繁栄または生活」。

この言葉の初出では「American Dream自体が風前の灯となっていた」と書かれていた。

 

言語学者のアーノルド・ツヴィッキーがつくった"recency illusion(新語感覚)"という言葉は、自分にとって新しい言葉に出合うと、なんでも最近の造語だと思い込むことを指す。

"whatever""weveに、"obviously"を"obvi"に若い世代が使うことで英語を滅ぼしていくと大げさに嘆き悲しんでいるが、"happening""hap"と略したのは、14世紀末のことである。

OMGをはじめに使ったのは、ウィンストン・チャーチル宛の手紙で、1917年に遡る。

 

Nuclear 発音と教養

発音編纂者は発音例を音声データとして集める。

英語は表音式言語ではない、つまり、文字とそれが表わす音が一対一で対応しない。

このために独特な発音記号が使われている。

音声データによる発音はオンライン辞書の最大の強みである。

 

Nuclearを非標準的発音であるヌーキャラーと発音する歴代の大統領や国際的な指導者が多い。

辞書にも非標準的発音を載せている。

自分にふさわしい社会的地位を目指す人にとっては、話し方は大きな問題である。

一方、素早く伝達しなければ命に関わる環境での話し言葉もある。

 

Nude 肌色は何色か

“nude(肌の色)”は「服を着ていない」ことなのか、「白人の肌の色」なのか。

今日、色の解釈に人種を引き合いに出すべきではない。

そこで、語釈を「人の肌の色にあった(淡いベージュなどの)色」とした。

 

 

Marriage 権威と辞書

“marriage”は同性婚を含むのか。

法的に認めている州もあれば認めていない州もある。

道徳的に認めている人もいれば認めていない人もいる。

 

 

ライトイン運動

だれか、あるいはなにかが間違っているという強い確信、はなはだしく見当違いな草の根的正義感、そして、自由なインターネットアクセスから必然的に生まれたもの。

辞書に気に入らない項目を見つけた人は、親しい友人に900人に働きかけ、その語の削除か修正きだというメールを送る。

その900人がライトイン運動について自分のブログやSNSに投稿する。

すると今度はその親しい友人900人が、その語の削除か修正きだというメールを送る。

これが逆ピラミッド構造になって、みんなが少しずつ貢献するが、その頂点にいる人(辞書編纂者)を除いて、だれにも見返りはない。

メールを受け取った辞書編纂者は、まず、出所を突き止める。

「辞書におけるひとつの項目の掲載、あるいはひとつの項目の漏れに対して不快な思いや、腹立たしい思いに対して配慮のために、辞書編纂者として本業がおろそかになってはならない」

「語釈を加えるということは、単にその語の現在の用途すべてについて読者に正確な情報を提供するという問題に過ぎない」

「辞書からひとつの語を取り除いても、その語が具体的に指すものはもちろん、間接的に指すものも消し去ることはできない。辞書から差別語を取り除いても差別はなくならない」

 

 

エピローグ とてつもないこと

(オンライン)辞書とオンライン検索は違う

FTW(絶対に)の意味を知りたければ、オンラインでみつけられる。

disposition(性質)の意味を知るには、しかるべき力を持つ人が書いた語釈が必要となる。

 

 

ギークの対極にスーツな奴と理解していたが、Dweeb、Dork、Geekの交わりがNerd

ギークはひとくくりにしてはいけないようだ。

https://www.forbes.com/sites/erikkain/2011/11/09/geeks-vs-dorks-vs-nerds-vs-dweebs/#72d9c4f70eb3

 

 

●目次

Hrafnkell 辞書編纂者の偏愛

But 「文法」の誤解

It’s 繁茂する英語

Irregardless まともじゃない言葉

Corpus 骨を拾い集める

Surfboard 語釈の宿命

Pragmatic 無感情で実用的な用例

Take 小さくも厄介な言葉

Bitch よろしくない言葉

Posh 語源をめぐる妄言

American Dream 初出という旅

Nuclear 発音と教養

Nude 肌色は何色か

Marriage 権威と辞書

エピローグ とてつもないこと