言語の構造の二つのモデル
・伝達理論的モデル→言語をひとつのマルコフ過程とみる考え方
言語に規則があるのは、人間が言語を規則的に作ったためではなく、言語が自然法則に従っているからである。
外界から取り入れた言葉の情報は、感覚器官を通じて知覚され、音声なら聴覚、手話や文字なら視覚、点字なら触覚が言語の入力となっており、それぞれの知覚のことをモダリティと呼ぶ。
言葉は、音声や文字などのパターンとしてすでに記憶されていて、別に記憶された文法の規則性に基づいて解釈される。
意識のある状態では、絶えず言語を用いて心の中で考えている。
しかし、言語化の過程そのものは無意識に自動的に行われる。
意識的に話す内容を考えながら、無意識的に話す。
人工的に決めた規則に従う言語は「特別な訓練なしに自然に習得し使用する」ことができない。
自然言語の特徴
・あいまい
・文の複雑さに上限がない
・文法が変わりやすい
言語の定義
心の一部として人間に備わった生得的な能力であって、文法規則の一定の順序に従って言語要素(音声・手話・文字など)を並べることで意味を表現し伝達できるシステム
ミラー・ニューロンは言語の起源ではない。
クレオール化の現象
意思疎通ができない異なる言語圏の間で交易を行う際、商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供たちの世代で母語として話されるようになった言語を指す。
言語の理解の方が表出よりも先に起こる
言語は生得説(獲得)か学習説か
人間は経験できることが非常に限られているのに、なぜ経験したこと以上のことを知ることができるのだろうか
→刺激の貧困
言語獲得の三つの謎
・決定不能
・不完全性
・否定証拠
→幼児の脳には初めから文法の知識がある
自然言語には分を作るための必然的な文法規則があり、これが普遍的かつ生得的な原理である。
一方、意味や概念の学習は後天的であり、単語と意味のつながりは連想に基づくものであってその連想は偶然的
言語の獲得は一定の成長の過程をとる
獲得 学習
生得的 後天的
遺伝 環境
言語能力 認知能力
特殊性 一般性
音声・手話 文字
文法 意味
文 単語
規則 連想
必然 偶然
創造 模倣
普遍性 多様性
演繹 帰納
成長 教育
無意識 意識
潜在的 顕在的
手続き的記憶 宣言的記憶
言語の多様性
欧州ではインド・ヨーロッパ語族かウラル語族に属する十二の言語と、どちらにも属さないバスク語がつかわれる。
太平洋地域のオーストロネシア語族とアフリカのニジェーネ・コルドファン語族は、それぞれ千以上の言語を含む。
生成文法理論
人間の言葉には、文の構造に一定の文法規則があり、それが多様に変形されうる。
普遍文法
全ての人間が(特に障害がない限り)生まれながらに普遍的な言語機能 (faculty of Language) を備えており、全ての言語が普遍的な文法で説明できる。
人間の心/脳の中に存在しているもの (I-language) で、ある言語の母語話者がその言語を話すために保持している知識の体系 (language competence)
脳に言語獲得装置 (LAD) があり、言語獲得装置が持つ規則を言語学的に記述したものが普遍文法。
言語には、普遍的な文法の原理が本能として備わっている。
非侵襲脳活動計測(脳機能イメージング)では、ニューロンのレベルから神経計算原理は明らかにすることは難しい。
脳機能イメージングを使えば、低次の言語処理に関係する領域から、
高次の言語処理に関係する領域を分離することは可能
脳の決定論
堀田のドクマ
遺伝子→脳→行動
認知脳科学
言語学と生理学と心理学の積集合
言語の脳科学の四つの柱
・言語の現象を体系的に扱う言語学
・言語をコンピュータでモデル化する工学的アプローチ
・人間の脳の構造(解剖学)と言語の脳機能(生理学)を調べる
→干渉法と計測法
→磁気刺激
→頭蓋内記録
→脳波・脳磁計測→ERP、MEG
・言語の遺伝的基礎を研究する
→PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)→微量のDNAを百万倍程度に増やすことができる
→ただし、ミトコンドリアDNAだけで、細胞核にあるDNAではない
は含まれず臓器ではない。
臓器移植でも脳の移植が行われることはない。
脳移植とは、分裂機能を持つ動物の胎児のニューロンを部分的に移植して、機能再生を促す技術である。
ブロードマンの大脳皮質地図
12から16と48から51は欠番
言語の機能を担う言語脳は、ブローカ脳(前頭葉)、ウェルニッケ野(側頭葉)、角回・縁上回(頭頂葉)である。
メンタルモデル
文章を理解したり、論理的な推論を行うときに、それぞれの可能性に対して作られる心の中のモデル
母語を使う限り自動的で無意識なので、文法が意識に上がることはほとんどない
ウルマンの説
単語を覚えるのは「宣言的記憶」→頭で覚える
文法を使うときは「手続き的記憶」→体で覚える
宣言的記憶は、過去の体験の模倣で、電気刺激によって記憶されている断片的な内容がそのままとりだされて言語される
言語は創造的に言葉を並べていくので、秩序だった脳の働きを必要とする。
失読失書
文字を書くときは漢字と仮名の両方に障害がおこることが多いが文字を読むときには、漢字と仮名で障害の程度が違う。
仮名は表音文字であり、漢字は音と意味の両方を表す。
タイプ-0 文法(制限のない文法)→チューリングマシン
タイプ-1 文法(文脈依存文法)→線形拘束オートマトン
タイプ-2 文法(文脈自由文法)→非決定性プッシュダウン・オートマトン
タイプ-3 文法(正規文法)→有限オートマトン
ゴールドによる文法推論
ある文法. 規則に従う正しい文と、文法規則に従わない誤った文 (負例、否定証拠) を一つずつ. 与えていき、元の文法を推定する
幼児は負例を必ずしも与えられるわけでもないのに、言語を獲得するので、文法についての知識は幼児の脳に存在する。
コネクショニズム、コネクショニスト・アプローチ
ニューラルネットでは、ニューロンに相当する素子同士の結合(コネクション)を強めたり弱めたりすることで、学習の効果を保存する。
この方法では、ひとつのニューロンに特定の情報を記憶させることはできず、全体のネットワークとして情報を表現させる。→分散表現。シンボルを持っていない(ノンシンボル)
言葉のようなシンボルの世界をノンシンボルで表現するか
ニューラルネットワークによる確率モデルを使えば負例を明示的に与えなくても
予期しないときに暗黙のうちに与えるだけでエルマン流の学習は可能だ。
手話とマイム
マイムでは、顔の表情や頭の動きは、主に感情を表現するために使われる。
日本手話では、手の動きと合わせて、顔の表情や口の形、うなずきなどの頭の動きを同時に使い、副詞としての意味を加えたり、文節の切れ目や疑問文などの文法的に働きを持っている。
マイムでは、時間のような抽象的な概念を伝えるのが難しい。
手話は基本的に左脳を使い、マイムでは右手を使うときは左脳を使い、左手を使うときは右脳を使う。
マイムの順序は動作を表す意味の流れで決まっているが、手話の順序は意味だけで決まっているわけではない。
手話には、ろう者の使う日本手話と中途失聴者の使うシムコムがあり、通じない。
テレビで使われている手話はいずれでもない人工言語
ろう学校では、口話法を徹底させるために手話を教えない。
口話法
→聴覚障害者が健聴者の口の動きを読み取り、聴覚障害者が表現したい言葉を「発話(口の形と音声)」で表す技術。「読唇術」の一種
バイリンガルの言語発達→統合言語仮説
・統合言語仮説
→二つの言語をあたかも一つの言語体系をなすものとしてとらえている時期があるとする考え方
-第一段階→二つの言語を区別せず、同じ文に二つの言語の単語が混じる
-第二段階→単語が混じる割合が減るが、文法を区別できず、一方の文法を両方の言語に使ってしまう。
-第三段階→語彙と文法において、二つの言語を区別する
・即時分化仮説
→子どもはかなり早い時期から二つの言語をそれぞれ別の体系として人別することができるという考え方
ナチュラル・アプローチ
母国語を取得したときと同じように(または近い形で). 自然に第二言語も習得させる教授法
・コミュニケーションに焦点を当てる。
・発話を強制しない。徐々にできるようになるのを期待する。
・初期の発話は自然な段階で進む