akon2.00βのよっぱらいの戯言

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貨幣発行自由化論 改訂版

 

 

 

 

中央銀行は必要ない。経済の正常化のために、通貨発行は民間に任せよ。」

「経済理論家または政治哲学者の主要な仕事は、今日政治上不可能であることを政治上で可能になるように、世論に影響を与えることにあるべきだ。」

名目貨幣の価値を維持する技術的可能性は残されている。

これがビットコインの誕生を示唆していたのだろう。もちろん、ハイエク1992年没なのでビットコインについては言及していない。齊藤誠の『現代においてハイエク著「貨幣発行自由化論」を読む』という解説においてハイエクの理想通貨と暗号通貨について言及している。

 

第1章 具体的な提案
共同市場の加盟国は、それぞれの領域において、取引がお互いのどの通貨ででも自由に行われることについて、またそれぞれの領域内で合法的に設立されたどの機関によっても、銀行業務が自由に行われることについて、どのような障害も設けないことをお互いの正式の条約によって義務付ける。

 

第2章 基礎的な原理の説明
政府による貨幣供給の独占を廃止するだけでなく、公衆が好む別の貨幣の供給を民間企業に認めることは有益である。

 

第3章 貨幣発行における政府独占の起源
排他的な貨幣鋳造権は、政府にとっての主要な収入源であり、権力の象徴として役立った。公衆の利益という観点から認められたものではない。
元来、政府の役割は、鋳貨の重量と純度の証明であった。それがいつの間にか、発行する貨幣量を計画的に決定することまでをも含むようになった。
政府による貨幣の強制借入に対し、人々は受領書を受け取った。これが紙幣出現の発端である。政府独占で発行されている金属貨幣の請求権として紙幣が使われるようになった。
歴史を振り返ると、金だけが安定通貨を供給でき、全ての紙幣は早晩減価するものと決まっているように見える。しかし、名目貨幣の価値を維持する技術的可能性は残されている。
政府は、財源を拡大し、政府赤字を貨幣発行により補っている。雇用を創出するという口実に基づいてなされるのが常である。

 

第4章 政府特権の濫用の歴史
紙幣が重要になり始める17世紀まで、貨幣鋳造の歴史は、鋳貨の金属含有量の引下げと商品価格上昇の物語である。
貨幣の歴史は、政府の利益のために仕組まれたインフレーションの歴史である。

 

第5章 法貨の神秘性
債権者への債務の弁償が政府発行の貨幣でなされても、債権者はこれを拒否できないような種類の貨幣のことを法貨という。これは、すべての貨幣が法貨でなければならないことを意味しない。
貨幣は、社会の進化の過程で自生的に生成したもので、政府によって貨幣が創造された訳ではない。
契約と異なるものを債務者が支払い、債権者が受け取ることを法律が可能にしている。それは取引に課せられた強制的かつ不自然な解釈である。
税金をどの通貨で支払うか決定するのは政府の自由である。損害賠償や不法行為の補償のような契約によらない支払いは、裁判所がどの通貨で支払うべきかを決定する必要がある。

 

第6章 グレシャムの法則をめぐる混乱
悪貨は良貨を駆逐するというグレシャムの法則には適用限界があり、異なった形態の貨幣の間に固定された交換比率が強制されている場合にのみ、グレシャムの法則は有効。

 

第7章 並行通貨と貿易貨幣
金貨と銀貨が貨幣として同時に存在していた頃、各政府は金と銀の間に異なった交換比率を設定した。他国よりも過小評価された鋳貨は、全て失われる結果となった。

第8章 民間通貨の発行
世界各所で設立され、自由に銀行券を発行できる発券銀行の存在を仮定する。銀行券の名称や単位名は無断使用できず、偽造からの法的な保護があるとする。
発券銀行が引き受ける唯一の法的義務は、所有者の選択に応じて別の貨幣に交換することである。発券銀行は、発行貨幣の購買力が一定になるように、通貨量を統制する意図があることを公表する。
発券銀行は、発行貨幣の価値を一定に保つため、基準となるコモディティを公示する。時と場所に応じて、発券銀行コモディティ変更の権利を有するような商品準備本位制度である。
発券銀行同士の競争は、通貨の価値を一定に維持することを余儀なくさせる。厄介なのは、発券銀行が取り扱う限度を越えて需要が急速に伸びることであるが、これも新たな競争により救われる。

 

第9章 発券銀行間の競争
発行機関が通貨量を統制できる場合に限り、貨幣価値に対する責任が発生する。

発券銀行の方が、独占発行者よりも貨幣価値の安定に全力を尽くす。政府がこれまでの発行方法を改めない場合、国民通貨への需要は減少し、やがて消滅していくことになる。
契約や経理にどの通貨を用いるかは、事業にとって非常に重要である。金融業界紙発券銀行自身によって、各通貨間の交換比率や公示された価値基準からの乖離が公表されるであろう。
自動販売機、交通運賃、チップ、賃金などにより、小売取引において支配的な通貨というのは決まってしまう。通貨のあいだの競争は、企業間での使用に限定されるであろう。

 

第10章 閑話休題 貨幣の定義について
ある地域で受け取られる貨幣は一種類ではない。


ある客体が貨幣の資格を得るためには、広く受け取られる交換手段でありさえすればよい。貨幣的事象の因果関係に関する限り、貨幣と貨幣でないものの間に厳密な境界線はない。

 

第11章 競争通貨の価値はコントロールできるか

価値は供給量でコントロールできる。供給量は通貨取引と短期貸し出しによってコントロールできる。


第12章 どんな通貨が選ばれるのか

通常の競争する商品の選択と変わらない。


第13章 貨幣のどの価値が重要か

安定通貨が選ばれる。


第14章 貨幣数量説が無用であることについて

貨幣数量説は複数の通貨流通を想定していない。

現金残高需要と流通速度に注目すべきだ。


第15章 通貨供給の望ましいあり方

安定した物価の維持


第16章 フリーバンキング

結局、一国一通貨だった。


第17章 全面的インフレ、デフレはもはや生じないか

複数の銀行が政府の干渉を受けることなく異なる通貨を自由に発行して競争する限りにおいて、全面的インフレ、デフレはありえない。


第18章 金融政策はもはや不要かつ存続不能である

政府には全体の利益に適う行動はとれない。

国際収支問題は存在しない。

金利の決定も不要。

 

第19章 固定相場制より望ましい規律

競争から政府独占よりまさる貨幣が生まれる


第20章 国ごとに通貨圏を形成すべきか?

一国一通貨は必然でも望ましくもない

同一政府の統治下における経済圏では単一通貨のみが通用することに利益があるが、国際貿易においては意味がない。

国が発行する通貨は政府の権力を強化する手段。

 

第21章 政府財政と支出への影響

政府が貨幣発行を独占すると政府の支出が野放図に拡大する。

政府の貨幣発行独占は中央集権化を助長する。


第22章 移行期に検討すべきこと

複数の新通貨は段階的ではなく一気に導入する

 

第23章 国家からの保護

民間銀行の最大の脅威は国家による妨害。

 

第24章 長期的展望

よく似た通貨が共存する。

 

第25章 結論

貨幣の管理を政府が把握する限りは金本位制は容認できる安全な制度だが、政府を介さなければもっとうまく変動を抑えられる。

良貨は善意ではなく利己心から生まれる。

 

齊藤誠の『現代においてハイエク著「貨幣発行自由化論」を読む』

暗号通貨(cryptocurrencies)とハイエクの「理想の通貨」

ハイエクの構想では、政府の思惑とは独立に通貨制度が実体経済をしっかりと支える仕組みを作り上げることを意図していたが、暗号通貨という金融技術は、通貨制度を実体経済から引き剥がし、仮想空間の最果てへと強引に引き連れていく怖さがある。

 

ハイエクの通貨発行自由化論

・複数の通貨発行銀行が「理想の通貨」の発行を競わせる

通貨発行権のない銀行には信用創造を許さない

 

理想の通貨

・通貨の範疇は非常に幅広く、通貨価値の源泉も柔軟

・理想の通貨とは、通貨価値が安定し、交換機能、価値貯蔵機能がバランスよく備わっている通貨。

・複数の銀行が競って発行する「理想の通貨」と非発券銀行に投融資を許さないナローバンキング制度が両輪となって、通貨制度が実体経済を支える。

・理想の通貨のもとでは、マイルドなデフレで通貨価値が増価し続けることはありえないので、マイルドなデフレとゼロ近傍の金利が長期的に継続し、旺盛な貨幣需要が生じる流動性の罠については、考察しない。

・通貨価値が安定している理想の通貨は、借金を抱える政府にとっは厄介な存在で、国債を継続して大量発行する政府にとって、マイルドなデフレとゼロ近傍の金利が長期的に継続し、旺盛な貨幣需要国債消化の受け皿となる流動性の罠の方が都合がよい。大量の国際を返済せざるを得ない政府にとって、インフレが加速して、国際返済負担が軽減される状況が望ましい。

 

暗号通貨が開いたパンドラの箱

民間主体が発行してきた暗号通貨は、理想の通貨と真逆の通貨となってきた。

 

中銀暗号通貨

・暗号通貨発行についても、通貨価値が安定するように通貨需要に応じて通貨供給を弾力的に調整することが可能

・中銀券のように中銀暗号通貨も家計や企業が保有する場合、競合関係にある民間銀行の預金通貨には緊張がもたらされる。とくに、経済危機で取り付けが起こる状況では、民間銀行は自らの銀行預金が一瞬で消えてしまう事態に備えてもっとも流動性の高い資金、つまり、中銀当座預金か中銀暗号通貨の形で、預金として受け入れた資金のほぼ全額を常に保有する必要に迫られる。民間銀行の中銀暗号通貨への対応の結果として、ナローバンキング制度が自主的に選択される。

・通貨金利がゼロの場合、金利水準が高いと通貨保有の機会コストが大きくなり、通貨需要が弱まる。一方、金利水準が低いと、通貨保有コストが小さくなり、通貨需要が強まる。

・各国の中央銀行どうしが自らの暗号通貨によって通貨価値を競うと、国内で中央銀行と民間銀行の緊張関係が生じて、民間銀行の預金通貨が中央銀行の暗号通貨に完全に従属するものと同じような現象が生じ、ほとんどの中央銀行が最も競争力のある暗号通貨を発行する中央銀行に対して、従属する。

 

目次
第1章 具体的な提案
第2章 基礎的な原理の説明
第3章 貨幣発行における政府独占の起源
第4章 政府特権の濫用の歴史
第5章 法貨の神秘性
第6章 グレシャムの法則をめぐる混乱
第7章 並行通貨と貿易貨幣
第8章 民間通貨の発行
第9章 発券銀行間の競争
第10章 閑話休題 貨幣の定義について
第11章 競争通貨の価値はコントロールできるか
第12章 どんな通貨が選ばれるのか
第13章 貨幣のどの価値が重要か
第14章 貨幣数量説が無用であることについて
第15章 通貨供給の望ましいあり方
第16章 フリーバンキング
第17章 全面的インフレ、デフレはもはや生じないか
第18章 金融政策はもはや不要かつ存続不能である
第19章 固定相場制より望ましい規律
第20章 国ごとに通貨圏を形成すべきか?
第21章 政府財政と支出への影響
第22章 移行期に検討すべきこと
第23章 国家からの保護
第24章 長期的展望
第25章 結論

解説 齊藤誠