エンジニアとしての在り方についてはadeleから、CEOとして在り方についてについてカーリーから学んだ。とはいえ、一度しか会っていないけど。
プレゼンがうまいなんて誤差。「入札のためにプライベートジェットで飛んできました」とカマしたことも誤差。入札に負けたはずなのなぜかスーパードームをちゃっかり売りつけていた(なお、別にCEOでなくても社内システムから簡単にプライベートジェットは予約できるらしい。当然、怒られるけどそんなことやってしまう仲間たちは楽しい。)
勝っていたらそれぞれ違う人生を歩んでいただろうな。
「コンパックの買収が成立しない場合、コンピュータ事業は危機的な状況になる。
株主の利益を守るため、プリンタ事業を別会社にする」というバックアッププランが結局、カーリーが去った後に実施されたのは残念である。本書は「コンパックの買収」までしか述べていないが続編を書いてほしい。
Retrun to HPwayというカーリーのフレーズが書かれていないのは謎。
本書の邦題を「私はあきらめない」としてしまったことで、カーリーのperfect enough(原題)というフレーズの意味が出版社にはわからなかったんだろうな。
アップル、コンパック、タンディ、IBMが新型機が未完成でバグ修正がすんでないうちに、宣伝期間を設けてそれらの製品の自慢をした。技術を競争するのではなく、価格や宣伝文句や外観の美しさを売りにした。HPではそれを「おざなりな仕事をマーケティングでカバーする手法」と呼んでいた。
「歩き回る管理経営」が悪いわけではないが、他社がまねできないような独自のテクノロジーを備えていなければならないというHPの考え方は時代遅れになっていた。そして、結果として、PA-RISCという強力なエンジンを持ちながら、インターネット、クラウドでも遅れた。
そこにカーリーは、perfect enough(じゅうぶんに完璧)、つまり、「すばやく、刺激的な形で売り出せば競争に勝てるというときには細部の詰めにはこだわらず、とにかく市場に出すことを優先する」というニューエコノミーをHPに持ち込んだ。
この世にカーリーが存在しなかったら、ニューエコノミーのほうがカーリーを創造していただろう。
ニューエコノミー
ITの発展で景気循環が消滅し、成長が永遠に続く新しい経済が生まれたとする考え方。
カーリーが売ったのは、製品ではなく、目の前に広がる希望や前進の物語だった。
カーリーはあだなで、本名はカーラ・カールトン・スニード
三つの大陸で五つの学校に通うことになり、順応性が高くなり、「永遠のアウトサイダーだったけど、おかげでアウトサイダーであることをこわいとは思わなくなった。
小さな不動産会社の受付から、管理職候補としてAT&Tに入社
選考過程に紆余曲折あり、一直線ではなかった。
最終候補者
オラクルの最高業務責任者レイ・レイン
サンの社長エド・ザンダー
インテルの上級副社長ポール・オテリニ
マイヤーズ・プリッグの性格タイプで誰もがNFP型と判断した
→外向的、直感的、情緒的、感覚的な人
→エナジャイザー(活気を与える人)あるいはチャンピオン
カーリーの情熱とHP社員の天性の慎重さが出合ったことで、
壮大で無謀な科学実験に立ち会うことになった。