頭の中の妄想を、手で思考する
→妄想によって新しいことを生み出すには、思考のフレームを意識して外したり、新しいアイディアを形にし、伝えたりするためにコツが必要だ。
イノベーションのスタート地点には、必ずしも解決すべき課題があるとは限らない。
非真面目は不真面目とは違う。
真面目なイノベーションはやるべきことをやる。
非真面目なイノベーションはやりたいことをやる。
やりたいことは何なのかを非真面目に考える。
想像を超える未来を作るために必要なのは、それぞれの個性が抱く妄想。
自分の価値軸のうえで、面白いと感じたことを素直にやつ真剣に考える。
妄想=やりたいことを実現するにはいろいろな工夫や戦略が必要だ。
第1章 妄想から始まる
表情フィードバック仮説→「表情がフィードバックされて、その表情の感情を引き起こす」という仮説。すなわち、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」という仮説
新しくて面白いものは「ふつう」ではない
アポロ計画を実現させたヤバい妄想
妄想の先に何があるのか
→脳とコンピュータがつながれば、脳はインターネットとつながる。
地球上の人類の脳が皆がつながったら、いったい何が起こるか。
クラークの三法則
・高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
・可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。
・充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。
とし、「ニュートンは3つの法則で満足したようなので、私もここで慎み深く止めておくことにする」と締めくくっている。
スマートヘッドライト
雨粒の動きを予測して、ライトの乱反射を抑え、視界を改善する。
「雨の日の夜、クルマの視界が悪いのは雨粒にヘッドライトの光が反射しているから。だったら雨粒を避けてヘッドライトの光を飛ばせばいい」
カーネギーメロン大学金出武雄
「天使度」と「悪魔度」のバランス | 天使度(発想の大胆さ)マイナス | 天使度(発想の大胆さ)プラス |
---|---|---|
悪魔度(技術の高さ)プラス | 面白さが伝わらない。ひたすらスペックを上げる技術競争 | 誰にでもわかる。破壊力があるイノベーション |
悪魔度(技術の高さ)マイナス | つまらない。レベルが低い | 実用性が乏しい。一発屋。思いつき |
第2章 言語化は最強の思考ツールである
モヤモヤした妄想は「言語化」で整理する。
「やりたいこと=クレーム」は一行で言い切る
クレームは「答え」ではなく「仮説」で
「やりたいジャンル」はクレームではない
今やりたいことは、今やる。
発明は必要の母
始める前にあらすじを書く
決着をつけるための「最短パス」を考える。
早く決着がつけられれば、多数のアイデアを試せる
まず「素材」の不良である。元来料理の良否は、素材の良否がものをいうのである。「まずい」素材をうまいものに是正するという料理法は由来発明されていない。「まずい」ものをうまくなおすことは、絶対不可能という鉄則がある。
オズの魔法使い法
https://core.ac.uk/download/pdf/144447101.pdf
Wizard-of-Oz 法とは, 人間 (Wizard) がシステムのふりをして被験者と対話 することにより, 実際のシステムとの対話に近いデータを取得する手法。
第3章 アイデアは「既知×既知」
「好きなもの」が三つあれば妄想の幅が広がる
ブレストはワークしない
→マインドマップ、マンダラート
多数決ではジャッジできない
アイデアには孤独なプロセスが不可欠
インプットを増やす暦本研の会議
→みんなが知らない面白そうなものを持ってきて紹介する会議
→みんなが面白いというものでなくてもいい
ブレストは他人の意見に詰まらないとか言わないというルールがあり、バランス感覚である。
イノベーティブなアイデアには、何かしら世の中のバランスを崩すようなところに価値がある。
バランス感覚ではイノベーティブなアイデアは生まれない。
アイデアの責任を負うのは個人である。それを思いついた個人であるべきである。
集団で考えると責任が分散してしまうので、真剣に考えることができない。
日本代表の卓球選手からもらったVRのヒント
→スポーツは速度を落として練習できない
他者との出会いで「課題と解決策」のマッチング
→私たちはボールの軌道を目で追って反応しているのではなく、相手のフォームや音で一瞬で次のプレーを予測している。
→アイディアは掛け合わせ
「未知」への好奇心が天使度を鍛える
第4章
試行錯誤は神との対話
一回やってみて失敗するくらいがいい。
→同じようなアイディアは自分以外も思いつくことができるが、その実現を阻む壁を越せるのは自分しかいないし、自分らしさが出せるかもしれない
→ここから先はライバルも脱落するはずだと思えるレベルに突入すると逆にファイトがわいてくる。
失敗は課題の構造を明らかにしてくれる
→認知的不協和音→
→失敗が重要なのはそれが「自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス」だから。
→「私は失敗したことがないるただ1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」エジソン
他人のダメ出しから貴重なアドバイスを得る。
見る前に跳べ――「GAN」考案者の一パーセントの汗
→「99%の霊感と1%の汗」
→じっと熟考するのではなく、ダメ元でもいいのでまず手を動かしてみる。
「眼高手低」の二つの意味
→批評は上手だが、実際に創作すると下手(へた)であること。
→暮しの手帖の創刊編集長である花森安治は「眼高手低」を以下の解釈で編集方針のひとつとしていた。
「高い理想を持ちながら、現実もよくわかっている」
「眼高」は「手低」の前にあるとは限らない。
「手低」が「眼高」を呼ぶこともある。
手を動かし続けられるのも才能
→個人的には論文を書くために、机に座り続けられることも才能だと思っている。
試行錯誤とは「神との対話」である
→天使のようなひらめきは、腕を組んで考え込んでいてもやってこない。
調理場という戦場「コート・ドール」より、
パリの三ツ星レストランのオーナーシェフ、ベルナール・パコーが新しい料理を作り出しているプロセス
まず彼は、最初の方法を一日でやめた。一日でやめる決心は、なかなかつかないですよ? なのに彼は次の日にはもう、静かに隅っこの方で皮をきちんと剥いた違う方法を試していた。
そして、操作の手順に無理がない。無理をしないで、固執しないで、くまなく方法を試しているんですよ。赤ピーマンの皮を剥いてみるだとか、焼いて真っ黒になった皮を水で流して取って、そのあとに中のものを抜いてコンソメで煮てみるとか。
「この方法、よくないな」と思ったら違う方法にすぐに移る。彼の方法の推移が劇的にいい結果を生んでいるのを、目の当たりにしました。ダメだと思ったら引いて、別なことをやってみるというのを、絶えず、しかも静かに持続しているのです。(中略)
そういう静かな改良の積み重ねによって、彼は最終的には驚くほど革新的な料理に 仕上げていました。
自分の「やりたいこと」とは、自分の手が動くこと
→やりたいことが見つからない人は、今の自分が何に手を動かしているか考えてみるといい
第5章 ピボットが生む意外性
自分のアイデアはかわいく見えるという認知バイアス
「コンコルドの誤謬」に学ぶ勇気ある撤退
→サンクコスト(埋没費用)
環境が整わない場合は、いったん眠らせておく
スマートスキンの研究は「通信」から始まった
論文〆切の三カ月前の方向転換
→テルミンから二次元通信を思いつき、天使度が不足しているので、アイディアの方向をマルチタッチにひぽっとして、スマートスキンが生まれた。
ピボットで天使度を上げる
ジョブズとの特許侵害騒動
実験中の不思議な現象から生まれた「Traxion」
→Traxion→振動によって人を誘導する→仮想力覚
https://rekimotolab.files.wordpress.com/2014/03/wiss13.pdf
プリンターの技術から生まれた光学マウス
→紙送りセンサーは止まった状態で動く紙をみている。
→光学マウスは自分が動く、相対的にはおなじこと。
トレードオフのバランスを崩す
→紙送りセンサーは画素数を捨てる代わりに高速度を追求した
医学の知見からトレードオフをした広視野角HMD
→HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の視界を広げる際に、全面を同じ解像度する必要はない。周囲視界の映像は少しぼやけていても、リアリティが失われることはない。
ニューラルネットを使った「エクストビジョン」のアイデア
→周辺視界はぼやけてかまわないので、画面の外側に投影することにした。
「そもそもの目的」に立ち返る
→たとえば新しい椅子のデザインを考えるとき、イストは四本の脚と座面を持つものという形にとらわれるのではなく、機能に注目する。
→ウェラブルチェア歩ける椅子
イナーシャ(慣性)が無駄な「こだわり」を生む
第6章 「人間拡張」という妄想
技術が人間を拡張させる。
SF作家とエンジニアの妄想は一体化している
大きな影響を受けたSFの数々
「超能力」をテクノロジーで実現する
ケイの論文を読んで「マウス」を想像
人間拡張の妄想は歌舞伎座のイヤホンガイドから始まった
人間に「ジャックイン」するインターフェース
→テレプレゼンス→遠隔地にいる人間同士がその場で対面しているかのような感覚で、対話や会話などができる臨場感を与える技術
→ジャックイン→人間が人間に乗り移って操作する形のテレプレゼンス
研究開発には、妄想を現実的な形にするフェーズがある
世界初のARゲーム
喉の動きから言葉を推測する「サイレントボイス」
→サイレントボイス→ソット・ヴォーチェ→
SottoVoce (ソット・ヴォーチェ、音楽用語で 「ささやくように」)は,超音波エコー映像を用いて,利用者の無発声音声(サイレント・ヴォイス)を検出するシステム
https://www.dcexpo.jp/archives/2019/exhibition-c/18548.html
→読唇術ではない
ソフトウェアをダウンロードして使う人工内耳
→翻訳も可能になる
入試ではAIを含めた「矯正学力」を
→なんでも持ち込みありの試験のように「ネット検索」をありにすべきだ。
「時差」を解消したいという妄想
→一年を360日する。一日は二十分長くなる。
→正午の太陽の位置は少しずつずれていき、二か月に一度はズレが戻って時刻と太陽の位置が一致する。
→つまり、時差が世界中で分散して受け入れることができる。
終章 イノベーションの源泉を枯らさない社会へ。
妄想で「キョトン」とする空気をつくれるか?
→最初に馬鹿げたように見えないアイデアには見込みがない アインシュタイン
「光速エスパー」から妄想したテレプレゼンス・システム
→カメレオン・マスク
哲学的な問題まで生んだ「人間ウーバー」
「選択と集中」だけでは未来に対応できない
ディープラーニングというブレイクスルーは誰が起こしたか
→マイペースでのんびりしているカナダのトロント大学
あとがき
妄想=信念=ビジョン
未来を語るのに、大文字のFutureと小文字のfutureがある。
ウィリアム・ギブスン
大文字:政府が主導していたり大きな予算がついていたり、「選択と集中」されたもの
小文字:それぞれの研究者や技術者の個人的な好奇心や興味、あるいは発見から始まる、妄想的な未来。
得てして本当の未来は小文字のfutureからやってくる
研究法について
https://www.slideshare.net/rekimoto/claim-62836813
優れた研究論文の書き方
https://www.slideshare.net/kdmsnr/writing-a-paper-seven-suggestions?next_slideshow=1