akon2.00βのよっぱらいの戯言

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越境する脳 ブレイン・マシン・インターフェースの最前線

 

原書タイトルは"Beyond Boundaries: The New Neuroscience of Connecting Brains with Machines
---and How It Will Change Our Lives"。
これは翻訳が悩ましい。
一線を越えたBMIといったところか。

 

現在では著者の時代から進歩し非侵襲的手法が実用化されているので、より現実味を帯びている。

 

著者はブロードマンの脳地図ペンフィールドホムンクルスなどの、脳の諸領域が別々の機能を担うとする脳機能局在論派ではなく、脳の機能単位は単一のニューロンではなく、ニューロンの集団とする脳機能分散論派である。

つまり、脳内に分散したマルチタスクニューロンが連携し、時々刻々と運動命令を発生する。局在論が直面する、脳は分割された情報をどうまとめ上げるかという「結びつけ問題」がない。

 

分散コーディング原則

脳で処理される情報は、それがいかなる種類のものであろうとも広範囲に分散したニューロン集団の再編成を伴う。

 

単一ニューロン不十分原理

単一ニューロンがどれほど特定のパラメータに鋭敏になったとしても、それ自身の発火率のみでは皮質が司る特定の機能または挙動を維持するには不十分である。たいていの単一皮質ニューロンの貢献の内容や度合は瞬間ごとに大幅に変化するので、個々の統計的信頼度が欠如していることに鑑みれば、単一ニューロンの発火率にもとづいてBMIを持続的に機能させていくのは不可能であり、したがって、思考の基本的機能単位は単一ニューロンではなく、ニューロン集団である。

 

ニューロン・マルチタスキングの原理

個々の皮質ニューロンとそれらの確率論的発火は、複数の機能ニューラルアンサンブルに同時に参加できる。すなわち、単一の皮質ニューロンが発生したスパイクを、別々のニューロンアンサンブルが、複数の機能または挙動パラメータのコーディングに用いることができる。したがって、ある瞬間において、単一皮質ニューロンはある特定の運動または感覚パラメータにより鋭敏に同調したとしても、そのスパイクは別のニューロン小集団による異なるパラメータのコーディングにも同時に参加できる。ニューロン・マルチタスキングの原理によれば、大脳皮質は全体として交差様相反応(対応する様相とは異なる感覚様相の刺激に対する反応)を示すことができ、個々のニューロンは複数の運動その他の高次な認知パラメータをコードできる。

 

神経縮退の原理

ある特定の脳活動の結果(それが脳が生み出す運動行為であれ、知覚経験であれ、あるいは歌を歌ったり、方程式を解いたりするような複雑な行動であれ)は、おびただしい数の異なるニューロン活動によって発生できる。

 

可塑性の原理

皮質ニューロンの集団によってつくられる世界の表象は固定されておらず、一生をとおして流動的であり続け、新たな経験、自己の新たなモデル、外界の新たなシミュレーション、新たに同化した道具に常に適応している。

 

相対論的な脳の仮説

外界の統計的性質にかかわる情報を得る新しい方法に直面したとき、被験体の脳はその情報を得るために使ったセンサーや道具とともに、すみやかにこれらの統計的性質を同化する。その結果、脳は外界の新たなモデル、自信の身体の新たなシミュレーション、その個体の現実世界の知覚および自己感覚を定義する新たな境界または制約群を生み出す。この新たな脳モデルは以降その個体の生涯をとおして検証され、再形成され続ける。脳が消費する総エネルギー量とニューロン発火の最大速度はいずれも固定されていることから、ニューロンの時空はこれらの制約に対して相対化されねばならない。

 

文脈の原理

刺激入力への応答として、あるいは特定の運動行為を発生させるために皮質が全体として示す反応は、その瞬間における脳全体の内的状態によって違ってくる。そなわち、脳が何らかの行動を発生するために最適の解決を導き出すには、その時点における脳内力学が欠かせない。

 

ニューロンアンサンブル発火保存の原理

ニューロンアンサンブルには最大発火数があるのみならず、ニューロンアンサンブル全体の発火率もまた一定に維持される傾向にあり、安定した平衡状態を保とうとするさまざまな補償メカニズムの働きによって平均値付近に留まる。単一または複数の皮質ニューロンが瞬間的に発火率を増加すると、同一ニューロンアンサンブルの他のニューロンが速やかに同等の発火率減少を起こし、脳全体のエネルギー予算を長期的にみて一定に保つ。

 

ニューロン集団効果の原理

皮質ニューロンアンサンブルの大きさがある規模を超えると、ニューロンアンサンブルに保持された情報はその最大値に漸近して収束する。この効果は大きなニューロンアンサンブルから得られる予測の統計的分散の大幅な減少に反映される。ある特定の行動時に、大規模なニューロンアンサンブルに機能的に取り込まれた個々のニューロン発火がニューロンアンサンブル内で平均化されるたびに、単一ニューロン発火の突出して高い分散値が消失する現象は、ニューロン集団効果の原理によって説明できる。

 

ニューロン時空連続体仮説

生理学的観点から見るなら、脳の神経解剖学が生み出した二十世紀の古典的規範とは対照的に、脳全体の機能的作用を規定または制約する皮質領域間に、絶対的または固定的な境界は存在しない。むしろ、脳は類まれながらニューロン時空連続体としてとらえるべきである。この連続体では、各機能や挙動はニューロン時空に編入された部分によって、種の進化史、遺伝と初期発達によって決められた脳構成、末梢感覚の状態、脳内力学の状態、その他の身体的制約、タスクの文脈、脳に与えられる総エネルギー量、ニューロン発火の最大速度といった一連の制約に応じて配分または誘起される。