akon2.00βのよっぱらいの戯言

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世界で最も美しい問題解決法

 

 

MINDWAREを問題解決法と意訳するなら、推論法のほうがよかったと思う。

 

概念とは

・重要なものであるべき。

・教えられるものであるべきだ。

・思考体系の中核をなすものである。

・与えられた問題を多数の観点から理解するために三角測量できる。


第一部 思考について考える
心理学の研究から心の働き方について3つの大きな気づき。

・世界についての理解はつねに「解釈」の問題である→推測と解釈が関わってくるという説 

・自分自身の置かれている状況が、思ったよりはるかに大きく自分の思考に影響し、行動を決定している。一方、人の気質などは思っているよりもはるかに影響が小さい。

・心理学者は無意識の重要性をますます認識するようになってきている

 

1章 すべてのことは推測だ
スキーマステレオタイプが、無関係だったり誤解を招いたりするような偶発的な事実によって生じることがある

活性化拡散

ある刺激に遭遇すると、関連する精神的な概念が活性化される。偶発的な刺激はある主張の真偽を判断するスピードだけでなく、実際の考え方や行動にまで影響する。

フレーミング

対象や出来事についての私たちの解釈は特定の文脈において活性化させられるスキーマだけでなく、下すべき判断の捉え方によっても影響を受ける。フレーミングは相入れないラベルのどちらを選ぶかという問題になりうる。

ヒューリスティック

問題の解決法を示してくれる経験則を使って判断に到達したり問題を解決したりする。

リンダ問題

代表的ヒューリスティック」における認知バイアスに関する代表的な事例。

大数の法則

好調な選手が今シーズンで似たような成績を挙げている他の選手と比べて、シュートを決める確率が高いわけではない

象形薬能論

神は病気の治療法を人間が見つける手助けをしようと思われ、色や形、動きという形でヒントを授けたという神学的な信念に由来

ホメオパシーや中国の伝統医学などの代替医療の根本には代表制ヒューリスティックが以前と変わらず存在

将来の行動を最も的確に予測するものは過去の行動

利用可能性ヒューリスティック

出来事の実例が容易に浮かぶほど、その出来事がいっそう頻繁に起こるものやもっともらしいものに思われる。代表制ヒューリスティックであれ利用可能性ヒューリスティックであれ、ほとんど自動的に、たいていは無意識のうちに作動する


まとめ

あらゆる認知や判断や信念は推測であり、現実から直接読み出したりしたものではない。

スキーマが解釈に影響する。

偶発的で無関係の認知や判断や認識が判断や行動に影響する。

判断を下すにあたりヒューリスティックの果たしうる役割に注意する。


2章 状況のもっと力
コンテクスト・ブラインドネスの直接的な帰結として個人の気質に関わる要因がある状況下の行動に及ぼす影響を過大視する傾向がある

根本的な帰属の誤り(基本的な帰属のエラー) 

この誤りを犯す傾向は文化によって大きく異なる。

傍観者の介在

緊急事態と言えるような状況を多数設定すると、人が犠牲者に手を差し伸べる可能性は他人がその場にいるかどうかで大きく変わった。別の目撃者がいる場合は助ける確率ははるかに少なくなった。多数の目撃者がいる場合は助けようとすることがほとんどなかった。

根本的な帰属の誤りの結果、将来の行動には現在の行動から推測されるその人の気質が反映される。


社会的促進

競争している時だけでなく、他の人からただ観察されているときでもいっそう熱心に物事を行う。犬やオポッサムアルマジロ、カエル、魚にも認められている。年齢が若いほど友人の態度や行動に受ける影響が大きくなる。

観念運動の模倣

これを行わない人と出会うと気まづくて不満の残る体験となる。何が悪かったのは当事者にはわからない。


行動の原因を評価するときの行為者と観察者の違い 行為者にとっては文脈が常に目立ってみえる。観察者は行為者が対応している状況的な要因には気付きにくく、他人について判断する時に根本的な帰属の誤りを犯す傾向が強くなる。


文化、背景、根本的な帰属の誤り

木を見る西洋人、森を見る東洋人

社会的な志向の違いは経済に由来する。

東洋人は根本的な帰属の誤りを犯すが、西洋人ほどではない。

 

まとめ

文脈に常に注意を払うこと。そうすればあなたの行動や他人の行動に影響を及ぼしている状況的な要因を正確に見分ける確率が高まる。

状況的な要因は普通、見た目よりももっと、自分の行動や他人の行動に影響を及ぼしており、一方で人の気質的な要因は普通、見た目よりももっと影響が少ない。

他の人は、あなたがそう思う傾向よりももっと強く、自身の行動が状況的な要因に反応したものであるとみなしている。しかも、彼らの方があなたよりも正しい可能性後高い。

人は変われるということを認識すること。

 

3章 合理的な無意識
ハロー効果

 ある人についてとても良い何かを知っていることが、その人のあらゆる種類の判断を色付ける。

 

サブリミナル(閾下の)

→閾とは光や音、または何らか種類の出来事などの刺激が検出可能になる点

無意識は意識よりも上手に非常に複雑なパターンを学習、発見できる。

人が意識の上で気づいていない刺激を指すために用いられる。何らかの種類の刺激にさらされる回数が増えるほど、その刺激が(もともとその刺激が嫌いでなければ)いっそう好きになるというものがある。

単純接触効果

音が発せられていることに全く気づいていない場合にも、実験が終わった後に何度も聞かされていた音の連なりと、一度も聞いたことのない音の連なりとを区別することさえできない。

スプラリミナル

(意識レベルの上にある)刺激が一見すると偶発的なものであり、ほとんど気づかれることがなくても、消費者の選択に作用しうる。

無意識は私たちのために前知覚する。

カクテルパーティー現象

カクテルパーティー効果

思考の中に多数の要素を保持する能力も無意識の方がはるかに優れている。

無意識の思考の中に保持される要素の種類は意識の場合よりもはるかに多岐に渡っている。意識を活動に参加させると物事の評価が台無しになることがある。

選択について意識的に考えると、言葉で描写できる特徴のみに注目しがちになる  選択のプロセスから意識を締め出せば、ときには良い結果が得られる。


学習

無意識は意識よりも上手に非常に複雑なパターンを学習することができる。意識が学習できないことも学習できる。無意識はあらゆる種類のパターンを見出すことにとても長けている


なぜ意識があるのか

無意識が扱うことのできないような種類の規則がある。

確かにある特定の作業は意識の規則、無意識の規則のどちらを用いても実行できる。

ある一つの規則に従って導き出された解答はその時々によってまったく異なる場合がある。


まとめ

なぜこういうことを考えているのか、なぜこういうことをしているのかを自分は分かっていると決めつけない

他の人々が自身の理由や動機について行う説明が、あなたが自身の理由や動機について行う説明よりも正しい可能性が高いと決めつけない

無意識が自分を助けてくれるように、無意識を手助けしなければならない。

問題への取り組みが捗らないならそれを放置してほかの何かをする


4章 経済学者のように考えるべきか
決定分析

期待価値分析を行うには一連の選択肢それぞれについてのありうる結果を列挙し、それらの価値を決定し、それぞれの結果の確率を計算する  価値に確率をかけるとその積が一連の行動それぞれの期待される価値となる 。

期待価値が最も高い行動を選ぶ。


利得行列

 

認知的不協和理論 

信念の方が行動と調和する方向へと動いていく
費用便益分析

期待される価値を計算する手法

純便益(便益-費用)が最大になるような行為を考えられる行為の中から選ぶべきであるというもの

具体的にすべきこと

1.代替可能な行為を列挙する

2.影響を受ける当事者を特定する

3.各当事者の費用と便益を特定する

4.測定形式を選ぶ (たいていはお金)

5.対象期間における各々の費用と便益の結果を予測する

6.これらの結果の予測に、それらが起こりうる確率をかけて重み付けをする

7.時間の経過とともに減少する量だけ、結果の予測から割り引く。割り引いた結果は純現在価値となる。

8.感度分析を行う。たとえば費用と便益の推定において起こりうる間違い、もしくは確率を推定する際の誤りから生じた費用便益分析の結果を調整する。

 

選択余地の問題

情報収集をどの時点でやめるか

最適化選択は実生活における決定の多くが目指す現実的なゴールではない。

選択を最適化しようとすることは合理的でない場合が多い 。

コンピュータがやるべきことであり人間がやるべきことではない。

意思決定にはその代わりに、限定された合理性という特徴がある。

決定を最適化しようとするのではなく、むしろサティスフィス(satisfy+sufficeの造語)する。

ある決定に対してはそれの持つ重要性に応じて時間とエネルギーを使うべきである。

 サティスフィスの問題

実際に人々がとっている行動を現実にはあまり上手く表現していない。そもそも費用便益分析をするのはなぜなのか。より多くの情報に基づいた判断ができ、軽率な決定をする可能性が低くなるから。しかし、分析をすれば常に何をすべきか教えてくれる数字が出現するというような甘い考えを持つべきではない。

パスカル→「心には理性が知らないような理由がある」

フロイト→「あまり重要ではないことについて決定するときにはいつでも、賛成と反対の理由を全て検討することが役に立つ。だが、とても重要な問題となると…決定は、無意識から、自分自身の内側にあるどこかきら来るべきである」 

無意識はありうるすべての関連情報を必要としており、そうした情報の一部は意識的なプロセスによってのみ生成される。

意識的に獲得した情報はそれから無意識の情報に加えられることができる。

無意識が答えを計算し、意識へと伝達する。


組織の選択と公共の政策

全く異なる性質の費用と便益をどのように比較するかという問題


顕示選考

特定の根拠にもとづいて導き出した値

何かの価値は、人がそれを得るために支払うつもりの額で示される。


共有地の悲劇

費用便益理論には、私の便益があなたの費用になりうるという問題がある。

 

まとめ

ミクロ経済学者は、人が決定を下す方法がどのようなものであるか、あるいは、どのように決定を下すべきなのかについて、合意していない。

しかひ人々は通常、数種類の費用便益分析を行なっており、それを行うべきであるという点においては意見が一致している。

決定が重要で複雑なものであるほど、そのような分析を行う重要性が高くなる。

明らかに欠陥のある費用便益分析でさえ、ときには、どのような決定を下すべきかをはっきりと示すことがある。

費用と便益についての完全に適切な測定基準はないが、大抵の場合、とにかく比較することが必要だ。

人命の価値を計算することは不愉快なことであり、ときにはひどく誤用されるが、懸命な政策決定をするためには、それでもなお必要とされることが多い。

私の利得があなたの負の外部性を生むような共有地の悲劇にたいしては、一般的に、拘束力があり強制的な介入が必要とされる。

5章 こぼれたミルクとただのランチ
埋没費用(サンクコスト)

埋没費用の原則とは、将来の費用と便益だけが選択の中で考慮されるべきであるというもの。

過去に払った費用は埋没していて取り返すことはできない。


機会費用

ある一連の行動を行うことによって、次善の行動を行った時の利益を失うことから生じる費用

選ばれなかった選択肢すべての合計ではなく、選ばれなかった選択肢のうち最善のものの費用 機会損失を気にしすぎると、埋没費用を気にしすぎる場合と同様の費用が発生する

 機会費用の計算はそれ自体が費用になりうる

形式主義

最善の方策とはサティスフィスするものであると言うまでは、基本的には最適化が推奨されていた。

 

まとめ

すでに使い切られて取り戻すことのできない資源が、そうした資源を用いて得られた何かを消費するかどうかについての決定に影響を与えさせてはならない。

今か将来にすることができるだろう他の行動よりも純利益の少ない行動に関わることを避けるべきだ。

没費用の罠に陥ると、いつも不要な機会費用を支払うことになる。

埋没費用と機会費用を始めとして、費用と便益に注目することは割に合う。

 

6章 行動経済学で弱点をつぶす
損失嫌悪

すでに持っているものを手放すことを避ける一般的な傾向がある。

様々な状況において、何かを得ることで幸せになる度合いは、同じものを失うことで不幸せになる度合いの半分程度でしかない。

授かり効果

カップを持っている人は、カップを持っていない人が平均して払っても良いとする金額の2倍の額をもらえる場合にのみ、カップを売ってもよいとする   

背景に損失嫌悪

チケットの購入に使える20ドル分のクーポン券を送るほうが、20ドルを割引してもらえるコード番号を記載した手紙を送るよりも売り上げが70%も高くなる 

手元にあるクーポンを現金化せず失う方が怖い 

現状維持バイアスが自分の有利に働くようにすることのできる。   

選択設計(選択アーキテクチャ)は人がどのような決断を下すか決めるかにあたり、重要な役割を果たす

個人や共同の利益に向けて機能することを意図して作られた決定の枠組みの設計を、セイラーとサンスティーンはリバータリアンパターナリズム(自由主義的な介入主義)と名付けた

正しい選択を後押しするような選択設計とそうではない選択設計との違いが微妙な場合もある

行動は金銭的な要因だけでなく、その他多数の要因によって支配されており、金銭的なインセンティブが役に立たないか他よりも劣る場合に、いくつかの非金銭的なインセンティブかとても効果を発揮する

社会的な影響

他の人たちが自分の思っているよりも優れた行動をとっていると知ることは、説教よりもはるかに効果的である場合が多い 

金銭的なインセンティブを与えたり、強制しようとしたりすることは、相手がインセンティブや強制を行わせようとしている行為があまり魅力的なものではないと示すものだと受け止めるのであれば逆効果になる可能性が高い 

 

まとめ

 損失について考えることは、利得について考えることと比べて、とても大事なことであるように思われがちだ

私たちは授かり効果の影響を受けすぎるー自分のものだからという理由だけで、それを必要以上に大事にする

人間は怠惰な生き物だ。これまでそうだったからという理由だけで、現状にしがみついている] [* 選択は非常に過大評価されている

他人の行動に影響を与えようとする時、すぐに慣習的なインセンティブ、すなわち飴と鞭という観点から考えてしまう

 

第3部 符号化、計数、相関、因果関係
統計学のルールに近いものを出来事に適用できる方法で、出来事を符号化する統計学ヒューリスティックを構築する 

代表制ヒューリスティック利用可能性ヒューリスティックなどの直感的なヒューリスティックだけを当てはめるような出来事が減る

 

7章 確率とN

サンプルと母集団

大数の法則

平均や比などのサンプル値はNが大きいほど実際の値に近くなる 

母集団の大きさが極端であると、大数の法則の力を確認しやすい 

サンプルを用いた統計の精度は本質的にサンプルを抽出した母集団の大きさに左右される   


分散と回帰 

変数

変動のある値 

非連続的な変数とは対照的に、連続したどのような種類の変数も平均値と平均値の周囲における分布を持つことになる

 正規分布(ベルカーブ)

平均値から遠い値ほど稀にしか存在しない


まとめ

対象や出来事の観測は多くの場合、母集団のサンプルとして捉えるべきである

根本的な帰属の誤りは、主として、状況的な要因を無視する傾向のために起こるが、人に短時間だけ接することはその人の行動のわずかなサンプルにしかならないということを正しく認識できていないことによっても助長される

サンプルを大きくすることで誤りを減らせるのはサンプルに偏りがない場合に限られる

標準偏差は連続的な変数が平均値の周囲にどのように分散しているかを測る便利な尺度

ある特定の種類の変数の観測がその変数の分布の極端から得られたと分かっていれば、さらに観測を重ねると極端から遠ざかっていく可能性が高い

 

8章 連鎖
カイ二乗

本物の関係性があると確信が持てるほどの十分な違いが二つの比にある確率を調べる

 関係性が有意であるかどうかを判断する典型的な基準は、テストの結果、関係性の度合いが100回のうち5回だけ偶然に起こりうると示されるかどうか 

関連性が0.05の水準で有意 変数が連続的で、それらが互いにどの程度密接に関連しているかを知りたい場合、相関という統計学的な手法を使う

ピアソンの席率相関

相関は因果関係を証明しない

相関係数は因果関係の評価における一つのステップ

AとBのあいだに相関関係がなければAとBのあいだにはおそらく因果関係はない   

第3の変数Cが隠れている場合は例外
幻の相関

確証バイアス


信頼性と妥当性

信頼性

ある特定の変数がどのような機会に測定されても同じ値を示す度合い

妥当性

測定の妥当性とは、測定することになっているものをどの程度測定しているかという尺度
符号化は戦略的思考の鍵となる

ある特性が引き出された一つの状況における行動を観察することで、その人の特性を正しく理解できる

根本的な帰属の誤りの本質   

大数の法則が性格についての推測にも当てはまるということを認識できない

 

まとめ

 関係性を正確に評価することが非常に難しい場合がある

無意味にもしくは任意に組み合わせた二つの出来事の間の相関を評価しようとするときのように、予測をひとつも持っていない相関の評価をしようとする場合、相関を確実に発見するには、相関がとても高くなくてはならない

私たちは、幻の相関を見がちである

相関について事前に抱く多くの根本には、代表制ヒューリスティックがある

相関は因果関係があることの証明にはならないが、AがBを引き起こしているかもしれないというもっともらしい理由があれば、相関によって実際に因果関係が証明されると容易に想定してしまう

信頼性とは、二つの機会において、あるいは異なる手段で測定された場合に、ある事例がどちらにおいてと同じ得点を得る度合いを指す。妥当性とは、測定が、それが予測するはずであるものを正確に予測する度合いを指す

出来事が符号化しやすいほど、相関の評価が正しくなる可能性が高くなる

大きな数のサンプルをさまざまな状況において取得していくなら、特性に関係する過去の行動から、特性に関係する将来の行動を予測しようとするときには、注意深く謙虚でいることが必要

 

第4部 実験

9章 HiPPOは無視しろ
A/Bテスト

開発者はHiPPO(highest-paid person’s opinion:給与の高い人の意見)に基づいて決めるのではなく、何が最も効果があるかという議論の余地のない事実に基づいて行動する。

設計内手法

誤差分散

まとめ

思い込みは間違いがちである

相関的な設計は、事例に条件が付与されていないために弱い

事例の数が多いほど、現実の影響を発見する可能性が高くなり、実在しない影響を発見する可能性が低くなる

ありうるすべての処置をそれぞれの事例に割り振れば、設計の感度がさらに高くなる

調べている事例が互いに影響を及ぼすかどうかを考えることは極めて重要である


10章 自然な実験と適切な実験
説得性の連続体

自然実験

類似の事例が、ある特定の点においてたまたま異なり(実際には独立変数)、そのために議論の対象となっている結果において差が生じるかもしれない(従属変数)というところが、本物の実験に似ている

相関証拠、観察証拠

二重盲検法の無作為制御的な本物の実験

まとめ

ときおり、本物の実験と同じくらい説得力のある関係性を目にすることがある

ランダムな対照実験はしばしば、科学や医学の研究において理想的な判断基準であると言われる

社会は行われなかった実験のための高い代償を払う


11章 経済学
重回帰分析

多数の独立変数がいくつかの従属変数と同時に相関される 

順次に相関されるタイプもある 

対象となる予測変数は、制御変数と称される他の独立変数とともに検討される

 目的は他のすべての変数の影響を含めない正味の場合、変数Aが変数Bに影響を及ぼすことを示すこと 

従属変数に対する制御変数の影響を考慮に入れた場合にさえ、関係が成立するということ 

重回帰分析の背後にはあらゆるものが入り混じった中から独立変数と従属変数の相関を取り除くことで、独立変数と従属変数に関連するすべてのものを制御すれば、予測変数と結果変数の間にある真の因果関係に到達することができるという理論

遅延相関

独立変数と別の変数とが後に相関するというもの 

 

相関ないからといって因果関係がないわけではない

相関は因果関係の証明にはならない。相関の欠如は因果関係の欠如の証明にはならない。

 AとBに相関がないからAとBに因果的な影響を与えることはありえないという反射的な結論に抗うべき
ある組織、社会に差別があるかどうかを統計によって証明することは出来ない


まとめ

 重回帰分析は独立変数と従属変数のあいだの関連性を調べる

重回帰分析にある根本的な問題は、全ての相関手法の場合と同じく、自己選択である] [* 以上のような事実があっても、重回帰分析には多くの用途がある

ある関係について、完璧に実施された実験の結果と、重回帰分析による結果とが重なる場合、普通は実験の方を信じなくてはならない

重回帰分析にある根本的な問題は、独立変数が建築用ブロックであり、各変数それ自体は他のすべての変数から論理的に独立しているとみなせると、一般に想定されていることだ

相関が因果関係の証明にならないのと同じように、相関のないことが因果関係のないことの証明にもならない

 

12章 質問するな、答えられないから
特に人間に関する変数を測定する際の方法論的な難しさ
質問の順序 

ライミング効果

 

態度と考えの相対性

自分自身の価値や特性、態度についての答えは多数のアーティファクトの影響を受けやすい

アーティファクト

科学的方法論では意図せぬ測定の誤り、多くは侵入的な人間の行為のために誤った所見のこと 

準拠集団

私の価値や性格、態度について質問されたら、自分がその一員であるという理由から私にとって顕著である何らかの集団と暗黙のうちに比較し、その結果に部分的に基づいて答えを出す 。準拠集団を明示すると自己報告が消滅する 。

自己高揚バイアス

他の要素が等しい場合、ほとんどの文化の人々は、自分が属する集団内の大半の人よりも自分の方が優れていると考える。

レイク・ウォビゴン効果

東アジア人はしばしば謙遜のバイアスを示す。その他の多くのアーティファクトは自己報告に関わってくる。

黙従反応傾向

同意反応バイアス

何にでもイエスと答える傾向、ヨーロッパ系よりも東アジアやラテンアメリカのあいだでよくみられる。一つの文化の中でも個人差がある。

調査を行う側が回答の区分の釣り合いを取り、回答者が質問全体の半分においては主張に賛成し、半分においては反対して、ある側面において高い得点を取れるようにすることができる

言うべきことを言うvsやるべきことをやる

人や集団や文化全体を比較するのにただ質問をするよりも、行動を測定した方が良い。  自分自身が観察されていると気づかないうちに行動を測定する方法は、あらゆる種類のアーティファクトの影響をかなり受けにくい

様々な国の人々がどれくらい誠実かを知る目的で行動を調べると、行動の指数を用いて測定された場合の国民の誠実度が低いほど、自己報告で測定された国民の誠実度が高くなることがわかっている ほぼどのような心理学的変数についても、具体的なシナリオへの回答よりも、行動の方を信頼すべきと言う原則に従う。

一方、信念や態度、価値、特性については言葉による報告よりもシナリオへの反応の方を信じるべき

できる限り、人の話に耳を貸しすぎず、人の行動の成果を見よ 

利用可能な最高の科学的手法を使わないと巨額なコストが発生することがある 

真実験>自然実験>相関研究>思い込み、マン・フー統計学
自分自身を対象に実験する

扱うNが1という問題

自動的に事前・事後設計を抱えることになり、正確性が向上するという利点がある 

混同を招く変数を最小限に抑えることもできる 

ランダムに条件を割り振る手法

 

まとめ

言葉による報告は広範にわたる歪曲や誤りの影響を受けやすい

態度についての質問は、何らかの準拠集団との暗黙のうちの比較に基づくことが多い

自分の行動の原因についての報告は、多くの誤りや偶然の影響に左右されやすい

行動は言葉よりもはっきりと語る

自分自身を対象に実験を行う

 

第5部 まっすぐ考える、曲がって考える
推論の誤りを減らすための様々な手法

形式論理学の規則に従う

実際の世界とはまったく接点を持たずに、純粋に抽象的な言葉で描写することのできる、推論のための規則 

もしも議論の構造が、論理によって規定される妥当な形式を持つ議論のうちのどれか一つに直接的に対応できるなら、演繹的に妥当な結論が保証される 

前提が真であるかどうかにかかっている 

最も古いものが三段論法命題論理学

条件付き論理などを用いて、どのように前提から妥当な結論に到達するかがわかる   

Pが事実ならQは事実である   

PはQの十分条件である 

演繹的推論帰納的推論 

原則的に推測を制御できる

弁証論的推論

推測を制御するというよりも、問題を解決する方法を提示   

ソクラテス式対話

18世紀および19世紀にはテーゼアンチテーゼが続きジンテーゼが続くプロセスが重視される    

ヘーゲルやカント、フィヒテらが主な中心となって発展   

命題の後に命題に矛盾する可能性のあるものが提示され、いかなる矛盾も解決する総合命題が提示される   

中国では矛盾や対立、変化、不確実性を扱う方法が提示される   

ヘーゲル弁証法は命題間の矛盾を抹消し、新たな命題を見つけようとする点において攻撃的であるが、中国の弁証法的推論ではしばしば、対立する矛盾の両方が真になりうるようなあり方を探そうとする   

弁証法的推論は、形式的でも演繹的でもなく、普通は抽象的な概念を扱わない   

妥当な結論ではなく、真であり有益な結論に到達することを目的とする   

実際、弁証法的推論に基づく結論が現実には形式論理学に基づく結論に反する場合がある

 

13章 論理学
形式論理学の解説を読むだけの十分な理由

形式論理学は科学と数学にとって必要不可欠である

・西洋の超合理性と東洋の弁証法的な思考習慣の二つの思考体系は異なる結論を導き出すことがある。互いを批評するにあたっての優れた拠り所となる

・教育を受けた人は論理学的な推論の基本的な形式をいくつか扱えるはずである

形式論理学は面白い


西洋における形式論理学の起源

アリストテレスが市場や集会でのひどい議論にうんざりし、議論の妥当性を分析するために、議論に用いる推論の定型を作ることに決めた。 

結論が前提から必ず導かれる場合に限り議論は妥当となる 

妥当性は真実とは関係ない 議論の妥当性という概念は重要 

結論が何らかの前提から導かれるという理由で結論にもっともらしさを付与されることによって、誰かから騙される余地を作りたくない 

前提が明らかに真であり、議論の形式から、結論も同様に真であるはずだと規定されている場合、たまたま気に入らない結論を信じないことを自分に許すことはしたくない 

真理ではなく妥当性の概念をはっきりと理解している場合、前提と結論から意味を剥ぎ取り、純粋に抽象的な用語で思考することによって、結論が前提から導かれるかどうかを評価することができる


三段論法

妥当性の問題がついて回る 

この論法がカテゴリー推論を扱うから  ある種のカテゴリー推論では、「すべての」「いくらかの」「ひとつも…ない」といった数量詞が使われる 

最も単純な三段論法は二つの前提とひとつの推論 

すべてのAはBであり、すべてのBはCであるから、すべてのAはCである   

結論は真ではないが、議論は妥当   

事務員と人間と羽の代わりにABCを用いることで議論の妥当性を確認することができる 

前提と結論が真であっても(非常にもっともらしくても)妥当ではない議論   

抽象的な用語を使うと   

すべてのAはBだ   Bの一部はCだ   したがってAの一部はCだ

 

命題論理学

三段論法は日常生活で行う必要のある推測の中でごく小さな範囲にしか適用されない 

さらに重要なものが命題論理学であり、非常に幅広い推論の問題に適用される 

19世紀半ば以降、and, orなどの演算子に重点を置いた  and, およびは連言(論理積)と関係  or, またはは選言(論理和)と関係 コンピュータの設計とプログラミングの礎となった 

 

トランプのカードについての問題

条件付き論理を応用することで求められた問題 

条件付き論理の中で最も簡単な原則である肯定式を応用することで解ける   

もしPが事実ならQは事実   

Pは実際に事実

したがってQは事実   

肯定式には後件否定(もしQでないならPではない)が含まれる   

PはQの[十分条件]ではあるが[必要条件]ではない 

後件肯定の誤り

もしもPならQという前提を、もしもQならPに誤って置き換えている 

前件否認の誤り

もしもPであればQである   

Pではない   

したがってQではない 

後件肯定の誤りと前件否認の誤りは、演繹的に限っては妥当ではない結論   

しかし帰納的にとても優れた結論が存在しうる   

前提が真であれば結論が真である可能性が高くなる   

帰納的結論のもっともらしさが、妥当ではない演繹的結論をもっともらしくみせる働きをする

実用的推論のスキーマ

条件付き論理を抽象化したものを用いることは滅多にない 

その代わりに実用的推論のスキーマというものをよく用いる 

日常生活の状況について考えるのに役に立つ規則の集まり

このスキーマの一部は条件付き論理に直接対応する 

独立した出来事と従属した出来事の違いを見分けるスキーマ 

相関は因果関係の証明にはならないという原則 

埋没費用の原則と機会費用の原則は演繹的に妥当であり、費用便益分析の原則から論理的に導くことができる 

実用的推論のスキーマの一部は条件付き論理に対応するが、正しい答えが保証されるわけではないので、演繹的に妥当とまではいかない 

実用的推論のスキーマは真であるかどうかや妥当性とは全く関係なく、人の行為が適切であるかどうかを評価することと関係する 

義務論理学

どのような種類の状況から義務が構成されるのか、どのような種類の状況において許可が与えられるのか、どういう行動を選択できるのか、義務で要求される以上のことはなんなのか、何がなされるべきなのかを扱う   

契約スキーマは義務スキーマの一種であり、許可と責務に関する幅広い問題を解くために用いることができる   

飲酒年齢の問題を正しく解くために必要とされる義務スキーマは許可スキーマと呼ばれる   

類似のスキーマに責務スキーマ

実用的推論スキーマの二つ目の種類は、条件付き論理に全く対応しないが、非常に幅広い状況に適用され、純粋に抽象的な用語で描写されることができる 

これらのスキーマを使うには論理的思考力が必要とされるが、スキーマが強力であるのは論理のおかげではなく、むしろスキーマが日常的な問題を解くヒントとなるところにある 

統計スキーマ、無作為制御設計などの科学的手順のためのスキーマ 

その他のとても一般的な実用的推論のスキーマにはオッカムの剃刀共有地の悲劇創発の概念がある 

一部の強力な実用的推論のスキーマは、推論の抽象的な設計図とはならず、広範にわたる日常的な問題を正しく解決するのを助ける経験的な原則となっている 

根本的な帰属の誤り、行為者と観測者が行動を異なる風に説明する傾向があるという一般法則、損失回避現状維持バイアス、いくつかの選択設計が、それが促す選択の質という点で、ほとんどの選択設計よりも優れているという原則、インセンティブは人に行動を変えさせる最善の方法とは限らないという原則など 抽象的な実用的スキーマは大いに役に立つが、純粋に論理的なスキーマの価値は限られている 

こう考えるのは純粋に論理的な形式主義を決して確立しなかった中国の儒教があるから


まとめ 

論理は議論から実世界についてのいかなる言及も取り除く。その目的は、議論の形式的な構造を、以前からの考えに干渉されることなくむき出しにすることである

結論が真であることと、結論が妥当であることは、全くの別物である

ベン図は三段論法的な推論を具現化したものであり、いくつかのカテゴリー問題を解くのに役に立つ、あるいは必要ですらある

演繹的推論における誤りはときに、帰属的に妥当な議論の形式に対応させることから生じる

実用的推論のスキーマとは、多くの思考の根底にある推論の抽象的な規則である


14章 弁証法的推論
西洋の論理学 vs 東洋の弁証法的論法

アリストテレスは論理学的思考の根底に次の三つの命題を据えた 

同一律

A=A: 在るものは全て在る。Aはそれ自身であり、他の何物かではない 

矛盾律

AであるとAではないは、双方ともに事実であることはありえない。何ものかが在ると無いの両方であり得ることはない。命題とその反対が両方とも真ではありえない。 

排中律

全てのものはそうであるか、そうでないかのどちらかのはず。Aである、またはAではない、のいずれかが真でありうるのであり、その中間はありえない 

 

変化の原則

現実は変化のプロセスである。   現時点で真であることは、まもなく偽となるだろう。

  矛盾の原則

矛盾は、根底にあるダイナミックな変化である。   変化はつねにあることから、矛盾はつねにある。

関係の原則(全体論の原則)   

全体は部分の和よりも大きい。   

部分は、全体との関係においてのみ意味を持つ。 

これらの原則は密接につながりあっている

中庸を探すことへのこだわり 

矛盾は単に見せかけのものであることが多いという強い推定がある 

Aは正しいがAではないは誤りではない 

大いなる真理の反対もまた真である 

ソクラテスの対話は弁証法と呼ばれることも多く、幾つかの点でこれらに似ている 

東洋の弁証法的な姿勢は道教の影響を受けている 

道とは、要するに変化の概念を捉えたもの 

陰(女性的で暗くて受動的)と陽(男性的で明るくて能動的)は交互に起こる 

道とは、自然と人間とが共存する方法を意味する言葉であり、その印とは白と黒の渦巻きをかたどった二つの力からできている 

東洋思想と西洋思想の変化の性質についての考えた方の大きな差異 

リジュン・ジは、どのような傾向についても、西洋人はその傾向が現行のまま継続するだろうと想定し、東洋人は横ばいになるか、それどころか反転する可能性がもっと高いと想定することを示した 

物事がつねに変化しているなら、その出来事を取り囲む状況に注意を向けた方が良い 

論理学的な伝統と弁証法的伝統からは、矛盾する命題や議論に対し、全く異なる反応が生まれる 


論理学 vs 道教 三つの議論 

意味があり、結論ももっともらしいが妥当ではない 

意味があり、結論はもっともらしくないが妥当である 

抽象的すぎて実世界の事実とはまったく接点がないが、たまたま妥当である 


文脈、矛盾、因果関係 

西洋人は対象物の属性を特定し、対象物をカテゴリーに割り振り、対象物の入るカテゴリーを支配する規則を当てはめる 

根底にある目的は自分の目的に沿って対象を操ることができるように、対象物の因果関係のモデルを確立すること 

東洋人は文脈の中にある対象物や、対象物の間の関係性や、対象と文脈との関係にもっと幅広く注意を向ける 

歴史の分析手法が異なるのは、どのようにすれば世界を最適に理解できるかという点におけるこうした違いから生じている 

日本人の歴史教師はまず、出来事の背景を詳細に説明する   

出来事の結びつき、人物の置かれた状況と生徒自身の日常生活との類似点について考える   

人物の行動を感情の観点から説明する   

共感を示した時に歴史的に考える能力があるとみなす   

「どのように」という質問がアメリカの2倍ほど多い 

アメリカ人教師は日本人教師がするほどには文脈の提示に時間をかけない   

まずは結果から始める   

時系列的な順序は軽視されるか、全く提示されないこともある   

要因を検討する順番は重要と思われる原因を議論することによって決定される   

結果の因果関係のモデルに適合する証拠を提示できた時、生徒には歴史的に推論する優れた能力があるとみなす   

「なぜ」という質問が日本よりも2倍多く出される 

どちらの手法も有用であるように思われるが、西洋人にとって東アジア人の歴史分析手法は単に間違っているように感じられる 

思考種類が異なることから、全く異なる形而上学、すなわち世界の性質についての想定が生まれる   

古代中国人は文脈に着目することでギリシア人が誤解した事柄を正しく理解できた   

古代中国人が文脈に注目したことから、遠隔作用がありうるという認識が生まれた   

音響学や磁気学を正しく理解し、潮汐の発生する本当の理由を知ることができた   

アリストテレスは水に沈む物体に重力、水に浮かぶ物体に軽さという性質があるとした 

重力は一つの物体の性質ではなく、物体と物体の関係性   

アインシュタインアリストテレスの時代から想定されていたような宇宙の安定性を説明するために宇宙定数を自説に加えた   

中国の弁証法的推論は、東洋思想に通じていた物理学者のニールス・ボーアに影響を与えた   

ボーアは自分が量子力学を確立できたのは、一部には東洋の形而上学のおかげであると述べている   

光は粒子か波かという西洋の論争     

光は粒子でもあり波でもある。ただ、同時に両者であることごできないだけ   

しかし中国人は、西洋人の間違えた多くを正しく理解しながらも、彼ら自身の理論が正しいと証明することはできなかった   

科学が必要   

科学とは要するに、カテゴリー化に経験上の規則と論理学の原則との関わりを加えたもの
安定と変化 ギリシア人は宇宙とその中にある物体は変化しいという考えに完全に取り憑かれていた 

ヘラクレイトスなど紀元前6世紀の哲学者達が世界は変化すると認識していたのは確か 

同じ川に二度足を踏み入れることはない 

紀元前5世紀になる頃には変化が廃れ、安定が流行していた   

ヘラクレイトスの考え方は実際に嘲りの対象となっていた   

パルメニデスが変化は不可能であることを証明した   

ある者について、それが存在しないと語ることは矛盾である。   

非存在は自己矛盾であり、したがって非存在は存在し得ない   

非存在が存在し得ないなら、変化しうるものは何もない   

なぜなら物1が物2に変化するのであれば、物1は存在し得ないのだから   

ゼノンは運動は不可能であることを証明した(ゼノンのパラドックス)   

飛んでいる矢は常に停止している 

ゼノンのアキレスのパラドックス   

アキレスが自分よりも遅い亀に決して追いつくことはできない 

ギリシア人は二者択一の論理にある厳密な直線性に囚われていた   

根本的な帰属の誤りはギリシア形而上学にまっすぐ遡ることができる 

中国人は一生懸命勉強すれば賢くなると信じてきた 

孔子は能力の一部は天から授かったものであるが、大半は努力の賜物であると信じていた 

論理学的な規則を形式的操作と呼び、具体的な現実の事象に関する具体的操作と区別した

弁証法的思考はしばしば、毎日の問題、とりわけ人間関係が関わる問題について考える際にいっそう役に立つ

まとめ 

西洋と東洋の思考の根底にある根本的な原則には、異なるものがいくつかある

西洋的な思考は、議論の妥当性を評価するために、文脈から形式を切り離すことを促す

東洋的な思考は、世界のいくつかの側面と人間の行動の原因について、西洋的な思考がするよりもさらに正確な信念を生み出す

西洋人と東洋人は、2つの命題にあいだにある矛盾にたいして全く異なる方法で反応する

東洋と西洋の歴史に対する取り組み方は、大きく異なる

西洋的な思考はこの数十年間、東洋的な思考から大いに影響を受けている

日本人の若者に寄る社会的な対立についての推論は、アメリカ人の若者による推論よりも賢明である。しかし、アメリカ人は年をとるにつれより賢くなるが、日本人はそうではない

 

第6部 世界を知る
認識論

何が知識とみなされるのか、どのようにして最善の方法で知識を得ることができるか、何を確実に知ることができるのかを研究するもの

アルヴィン・ゴールドマンは知識の理論と認知心理学、科学哲学を融合した新たな分野をエピステミックスと名付けた。

 

15章 KISSで語る

科学哲学者が取り組む問題の一部 

優れた理論とは何から構成されるのか 

理論はどれくらい経済的あるいは単純であるべきか 

科学理論はいつか立証されうるのか、あるいはせいぜい「いまだ誤りが立証されていない」だけなのか 

もしも誤りを立証する方法がなければ、理論は優れたものになりうるのか 

理論に対する、特定の目的をもった「アドホック」な解決策のどこがいけないのか


KISS(Keep It Simple, Stupid(シンプルにしておけ、この間抜けが) ) 

複雑さを禁止する 

理論は簡潔であるべきだー不要な概念は剃り落とされなくてはならない 

科学の領域では、証拠を説明づけることのできる最も簡潔な理論が勝つ

問題を解決するための過度に複雑な方法 

どの説明とどの説明が拮抗し、どうすれば最もうまく分析できるのかを判断しようとしているときには仮説がたくさんあるほど好ましい  

しかし、医学的な診断にさえ、いくつかの節約の原理が当てはまる   

複雑で高価な診断法を使う前に、シンプルであまりお金のかからない診断法を使うことと、最もあり得る可能性をまず追求することを教えている(シマウマではなく馬を疑え)


還元主義

還元主義では一見すると複雑な現象や体系は、部分の和に過ぎないと説明される  

ときに、さらに踏み込んで、部分そのものは、現象や体系そのものよりも単純な、あるいは下位にある複雑さのレベルにおいて最もよく理解されるとまで言う 

この立場では[創発]の可能性が否定される  

創発では、現象やより単純でより基本的なレベルに置いてプロセス引き起こすだけでは説明のつかない存在となって出現する  

創発のずば抜けた例が意識  

意識にはその土台にある肉体的、化学的、電気的な事象のレベルには存在しない特性がある 

一部の科学者はマクロ経済はミクロ経済によって完全に説明されると考える  

ミクロ経済は心理学によって完全に説明されると考える科学者もいる  

心理学的な現象は生理学的なプロセスによって完全に説明可能である、あるいは、いつか確実に説明されると考える科学者もいる 

還元主義者の行っている多くの努力は有益  

しかし、ある人にとっての単純化は別の人にとっての愚かさになる   


反証可能性

進化論も反証可能であるかどうか、確信が持てない  


ポパーとたわごと

カール・ポパーは、科学は、推量と、推量の誤りを立証すること、または立証できないことによってのみ前進する、という見解を広めた 

ポパーはまた、帰納的推理は信頼できないと主張した  

彼の見方によれば、命題が、それが正しいと帰納的に推論されるような証拠によって支えられているからという理由だけでは、私達は命題を信じない 

ポパーの勧告は論理的に正しい 

どれだけたくさん白い白鳥を目にしても、すべての白鳥が白いという一般化が真である、と立証することはできない  

非対称性が存在する  

経験上の一般化は反駁されうるが、真であると証明されることはできない  

なぜなら、そうした一般化はつねに、いつでも例外によって反駁されうる帰納的な証拠に依存しているから 

ポパーの主張は正しくはあるが、実際には無益  

科学はたいてい、理論を支える事実からの帰納的な推理を通じて前進する 

反証は科学において確かに重要だ  

しかし、研究とはたいてい、多かれ少なかれ理論を支えるか否定するかする所見のあいだを苦労しながら進んでいくようなものである  

科学は主に帰納によって進展するもの 

ポパー精神分析理論は反証不可能であると批判し、したがって無視してよいと主張した  

この点においてポパーは大きく間違っていた  

精神分析理論の多くの側面は実際に反証可能であり、そのうちのいくつかは確かに反証された  

治療の原理についての精神分析理論の主要な主張は、反駁とまではいかなくても、少なくとも疑わしいということが明らかにされている


アドホックとポストホック

アドホック仮説

理論から直接的に導かれるものではなく、理論を下支えする以外の目的は果たさないような、理論に施された修正 

アリストテレスの「軽さ」という性質 

プトレマイオスの周転円 

アインシュタインの宇宙定数の仮定 

アドホック理論は概して、ポストホック(あとづけ)でもある  

事前に予測されなかったことを説明するためのデータが手に入った後に考えだしたもの

 

まとめ 

説明はシンプルに留めるべきだ

単純さを求めるために還元主義を用いるのは良いことであるが、還元主義のために還元主義を用いるのは悪いことである

私達は、いかに容易にもっともらしい理論を作り出すことができるのかをわかっていない

私達が仮説を検証するやり方は、理論を反証するような証拠を探すことを怠りながら、理論を裏付けるような証拠だけを探そうとする傾向があるという点において、損なわれている

どのような種類の証拠が理論を反証するのかを明示できない理論家は信じるべきではない

理論が反証可能であることは確かに良いことだが、確証が得られることのほうがさらに重要である。

理論に反するように見える証拠を扱うためだけに提案され、理論にとって本質的ではない考えは疑うべきである。

 

16章 現実を現実のままに
「合理性のない」(arational 合理性と不合理性の中間)な科学の実践は線形で合理的な教科書的科学の進展と並行してーそれに反する場合すらあるー行われる。 

新しい理論を選び取ることは、最初のうちは論理やデータというよりも信じるかどうかの問題 

科学の合理性のなさという側面は、脱構築主義者やポストモダニストと自称する人々が客観的な真実という概念を拒絶することの一因となったかもしれない


パラダイムシフト

アインシュタインの論文が発表されてから50年後、哲学者で科学社会学者である[トーマス・クーン]が著書『科学革命の構造』において、科学はつねに、苦労して理論と格闘し、データを収集し、理論を修正するという積み重ねからなるとは限らないと発言 

クーンの分析が科学者達を動揺させたのは、ひとつには科学の進歩という概念に、一見すると不合理的な要素を持ち込んだから   

いくつかの点において古いアイデアよりも満足のいくような新しいアイデアが出現し、それが示唆する科学計画が前よりも胸を踊らせるものであるから、パラダイムシフトが起こる 

心理学の分野では認知革命

強化理論の弱点は、それが本質的に漸進的であるというところに由来する   

動物がほぼ即座に2つの刺激のつながりを学習するような現象も現れ始めた 

マーティン・セリグマンが伝統的な学習理論の中核にある教義のひとつ、すなわちどのような刺激を2つ選んでペアにしても、動物はその2つの関連性を学習するという考え方に、この上なく深刻な打撃を与えた   

セリグマンは恣意性が保証されるという考えはどうしようもなく間違っていることを証明した。    

動物が学習する準備ができていない関連性は学習されない 

学習理論の危機は、こうした変則的な事例からではなく、学習理論とは関係のないようにみえる認知的なプロセスについての研究から忍び寄ってきた   

学習理論は誤りが証明されたというよりは、顧みられなくなった   

研究計画が科学哲学者のイムレ・ラカトシュが「退行性の研究パラダイム」と名付けたものになっていたようだった


科学と文化 


テクストとしての現実 

ジャック・デリダはテクストの外部は存在しないとかたった  

現実とは単なる構造であり、私達による現実に解釈以外には何も存在しない  

事実は存在しないー「真理の体制」のみが存在する 

この極端に主観論的な考え方は1970年代にフランスからアメリカに漂着した  

脱構築主義を支える概念は、テクストを解体して、イデオロギー的な知識や価値、世界についてのすべての推測の根底にある恣意的な視点を、自然についての事実を装う表明も含めて、明らかにすることができるというもの 

他の文化における人の信念や行動の特性についての信頼性の問題を人類学者はどのように扱うのか  

「問題は生じません。私達人類学者のすることは、見たものを解釈することだから。人によって仮定するものや視点も異なるのだから、異なる解釈をして当然です」  

筆者の間違いは文化人類学者は絶対に自分を科学者とみなしているはずだと考えたところにあった。  

文化人類学者に連絡をとったとき、彼らの方も思考や行動に見られる文化的な差異について筆者が行っている経験主義的な研究に興味があるだろうと予想していたが、文化人類学者のほとんどが、筆者と話をしたいと思っておらず、データを必要としていなかった   

自分たちの解釈よりも筆者の証拠に「特権を与える」つもりはなかった 

ポストモダニストニヒリズムは文学研究から歴史や社会学にいたる学問分野において大きな進展を遂げた  

 

結論 アマチュア科学者の道具

素朴な現実主義

事実を自発的に認識することによって世界を直接的に知っているという私達の思い込み
私達の考えはたびたびひどく間違っている 

世界の特性を正確に記述するような新しい知識を獲得する能力が自分にあると自信過剰になっている 

しかも私達の行動はしばしば、自分の利益や自分が大切にする人々の利益を増大させることに失敗している
本書に示した新しい道具を何回か使えば、それを必要とするときに頻繁に使えるようになる
専門家の意見にどうのように対処すべきかについて、哲学者のバートランド・ラッセルが提示した「ゆるい命題」 

専門家の間で合意がされている場合、正反対の意見に確信を持つことはできない 

専門家の間で合意がされていない場合、専門家ではない者がどのような意見であっても確信をもつことはできない 

専門家がそろって、肯定的な意見が存在するための十分な根拠がないという場合、普通の人は判断を留保するのが賢明だろう


重要な問題についての専門家の意見に対する疑問にどのように対処すべきかの提言

・その疑問についての専門的な知識というものが存在するかどうかを調べる。→占星術についての専門的知識はない。 

・もしも専門的知識というものがあるなら、専門家の間で合意がなされているかどうかを調べる。

・もしも合意があるなら、その合意が確固たるものであると思われるほど、それを受け入れるかどうかのあなたの選択肢は少なくなる。