「ガラスの天井」についての言及はなかった。
黒人を奴隷にしていた時代に始まったカースト制度が、現代のアメリカでもまだ続いている。黒人(アフリカ系アメリカ人)を最下層に置くカースト制度によって、白人たちは身分を保証されてきた。ところが、2009年に黒人初の大統領が就任したのをみて、白人は自分たちの地位が脅かされると危機感を抱き始めた。警察が無防備な黒人たちを射殺する事件が相次ぐのは、カースト制度にすがる白人たちが、黒人による下克上を恐れているからだ。こうした白人たちの不安心理が、白人至上主義を体現するトランプ大統領の登場につながった。
不可触民
カースト制度(ヴァルナ・ジャーティ制)の外側にあって、インドのヒンドゥー教社会における被差別民
キング牧師自身がインドで不可触民と紹介されたことに驚く。
アメリカにおける当初のカースト制は、キリスト教徒か否かであった。
ヨーロッパから新世界に入ることで、チェコ人、ハンガリー人、ポーランド人が白人となり、ヨーロッパ人が作られ、カーストの上位に位置付けられた。
そもそも、黒人という人種は存在しない。ヨーロッパ人たちが世界的に奴隷を売り買いし始めたから黒人が生まれた。
アフリカには黒人がいない。アフリカの人たちは黒人じゃない。イボ人であったり、ヨルバ人やエウェ人、アカン人あるいはンデべレ人。
アフリカの人たちはアメリカやイギリスに来て初めて黒人になる。
黒人差別は、黒人という人種を、白人たちが作り出し、カースト制度によって最下層の身分に固定したことに起因する。
ヒットラーをはじめナチス・ドイツは当時、アメリカにおけるカースト制度を研究し参考にしていた。特に、アメリカでは原住民をほぼ抹殺し、黒人たちをリンチして殺しても、白人たちの正当性が保たれる仕組みに、ヒットラーたちは勇気づけられユダヤ人の虐殺に進んだ。
アメリカのカースト制度の創設者は、ヒエラルキーの底辺を正当化するために、ノアと息子たちの物語を利用したが、そこから先はマヌ法典のような聖典に頼ることができなかったので、上級カーストを作る必要性から、純潔の規制は支配カーストそのものを定義することから始まった。
タカオ・オザワ
オザワは、肌の色が多くの白人より薄いから白人だと主張したが、最高裁は「白人は肌の色ではなくコーカソイドを意味する」とした。
一方で、ロシアのコーカサス山脈に起源をもつ白人アメリカ人はほとんどいない。実際にコーカサス出身の人は弁国には当時入国できなかった。インドからの移民がコーカソイドでアーリア人であると主張して市民権を請求したが認められなかった。そして、現在のメキシコからの移民に続く。
奴隷制度廃止後のカーストの体制下では、二グロは白人の労働者や使用人として規定された。
カーストの八の柱
神の意志と自然の法則
遺伝性
族内婚と、結婚と子づくりの制御
純粋と汚染
職業のヒエラルキー→ジャーティと土台(マッドシル)
非人間化と烙印
実施手段としての恐怖、支配手段としての残酷
生まれつきの優越と生まれつきの劣等
本書では奴隷をslaveではなくenslaved person、奴隷所有者をslaveholderではなくenslaverと表現しているので、「奴隷にされた人」「奴隷にした人」と表記している。