迷惑な進化
第1章 血中の鉄分は多いほうがいい?
ヘモクロマトーシス→体内における組織損傷を引き起こす過度の鉄の蓄積
西ヨーロッパ人の30%以上がこの遺伝子を持つ。
鉄代謝不全というデメリットと引き換えに、ペストなどの外からやってきた細菌の増殖を阻止するというメリットを受け取った。
この変異遺伝子を最初に保有したのはバイキング。
過酷な環境で暮らしていた栄養不十分な民族が体内の鉄不足を最大限に補おうとして進化した結果。
鉄は細菌の餌。
つまり、貧血のおかげで、感染症にならない。
第2章 糖尿病は氷河期の生き残り?
17世紀の寒冷期に育った密度の高い木をつかったストラディバリのような楽器は素晴らしい音色を世に送り出した。
アメリカアカガエルは、冷凍環境で生命を維持するため、体内の水分量を低くして、体内の糖度を100倍くらいまで高めて、氷点を低くして、臓器や血管の損傷から身を守ります。
1万3千年前の最終氷期「ヤンガードリアス」でヒトは生き残った。
体内の水分を少なくし、糖度を高めることで氷期に生き残ったのではないかという説。
ヒトは寒さに対応して、
・体を震わす
→その動きによって、筋肉に備蓄してある糖を燃やし、熱を生み出す。
・手足の指さきがしびれてくる。
→寒さを感知して、毛細血管を閉じることで、血液が胴体に集まり、生命維持に不可欠な臓器を冷やさないように血液で温浴させる。
・ルイス波、猟師反応
イヌイットなどは、寒さで手や足の毛細血管が閉じはじめてしばらくすると、体は短時間だけ血管を開いて温かい血液を手足に送りこみ、ふたたび血管を引き締める。
・褐色脂肪
血液中の糖は脂肪細胞に届けられると蓄積されるが、褐色脂肪細胞に届けられると、その場で熱に変わる。
・小用を催しやすくなる
飲んだことはないがアメリカのセブンイレブンにあるといわれているスラーピーは食感というよりも、消化しない糖アルコールをつかったヘルシーな飲み物らしい。
体内の水分を少なくするためには尿をたくさん出し、そして糖度を高めるために、インスリンを出なくするか、作用しないようにする。
第3章 コレステロールは日光浴で減る?
太陽光はビタミンDを手助けてくれるのと同時に、体内にためているビタミンB1(葉酸)を破壊する。
皮膚は太陽光にさらされるとコレステロールをビタミンDに変える。
太陽光の少ない冬はコレステロール値が高めになる。
肌の色は体内で作り出される光吸収色素メラニンの量と種類によって決まる。
・赤または黄のフェオメラニン
・茶または黒のユーメラニン
メラニンはメラノサイトというメラニン形成細胞によってつくられる。
アフリカ人のメラノサイトは北ヨーロッパ人のメラノサイトの何倍も多くのユーメラニンを作っている。
メラニンが多いと、黒い髪、黒い目になる。
太陽光にさらされると、視神経が日光を感知するとその信号を下垂体に伝え、メラノサイトに増産命令を出す。
つまり、サングラスをかけているとメラニンの生産量が減り、日焼けによる皮膚の炎症が起きやすくなる。
最初のころは、類人猿のような濃色の毛皮をつけていて、その下の皮膚は薄い色をしていた。
毛を失うにつれて、赤外線に皮膚がさらされて、葉酸の備蓄が脅かされる。
そのために進化は、紫外線から葉酸を守るためにメラニンに富む濃色の肌を選んだ。
その人類が太陽光の弱い北に移住すると、葉酸を守るというよりも、ビタミンDを作る必要性から、淡色の肌を選んだ。
白人は黒人の突然変異種
→ユーメラニンを大量に作り出す能力の欠如
→赤毛で乳白色の肌にそばかすの人はさらにそこから突然変異した
皮膚の色は日光量と相関関係がある。
ただし、イヌイットは日光の量が少ないところにいるのに肌の色が濃いのは、ビタミンDを魚から摂取しているため。
紫外線を通さない濃い色の肌の人たちは、ビタミンDを生成するために、アポリポタンパクEという物質を活性化させる遺伝子ApoE4を持っている。これは体内に流れるコレステロール量を増やしてくれる。ただし、心臓病や脳卒中、白色人種はさらにアルツハイマー病のリスクも高める。
光くしゃみ反射
洞穴で暮らしていたころ、朝日が当たると、くしゃみして、鼻の中の細菌を放出していた。
酒が飲めない遺伝子
アルコール脱水素酵素がアルコールをアセトアルデヒドに変える。つぎに、アセトアルデヒド脱水素酵素がアセトアニリドを酢酸塩に変え、さらに脂肪と二酸化炭素と水に変える。アルコールから作られる脂肪は肝臓の近くに蓄積されるので、ビール腹になる。
アジア人の多くは、アセトアルデヒド脱水素酵素の力が弱いALDH2-2という遺伝子を持っている。
ヨーロッパでは、発酵によって造られるアルコール飲料で、水を薄めてアルコール消毒して、水を飲んでいたため、アルコールを解毒する遺伝子を持っている必要があった。
人類の体はもともと、母乳を常食にするのをやめるとミルクの主成分である乳糖を消化する酵素を作るのをやめるが、大人になっても乳糖分解酵素を作り出せるからだに進化した。
前腕やひざから下の脚の毛が濃いのは、そこが衣類では覆いきれない場所で、そこに病気を媒介する虫がつくのを防ぐ。
アフリカ以外では体毛の濃い人が多い地域とマラリアが発生する地域は重なる。
アフリカでは、体温を下げるために体毛を除去し、マラリア対策として鎌状赤血球貧血を起こす遺伝子を持つ。
CYP2D6という遺伝子は薬品の25%以上の代謝にかかわり、この遺伝子をもっていないひとは薬物代謝が遅いので用量を減らす必要がある。
CYP2D6を13個持っている人たちは薬物代謝が急速。
CCR5-Δ32という遺伝子はヒト免疫不全ウィルスが細胞内に侵入するのを阻止する。
第4章 ソラマメ中毒はなぜ起きる?
ソラマメに含まれているビシンとコンピシンという二種類の糖質は、過酸化水素などをつくりだす。ソラマメ中毒の人がソラマメを食べると、過酸化水素を追い出すG6PDが足りないため、過酸化水素は赤血球を攻撃し破壊する。破壊された細胞の中身が流れ出すと溶血性貧血となる。
ソラマメ中毒の人が多いところは、ソラマメ栽培の盛んなところ。
ソラマメ栽培の盛んなところはマラリアが多いところ。
マラリア原虫はG6PD欠損の赤血球を好まない。
さらに、ソラマメには抗マラリア薬の成分に似た作用がある。
クローバーはフォルモノネティンを作り出す。クローバーの捕食者はフォルモノネティンによって不妊症にする。
タイズに含まれるフィトエストロゲンであるケニステインは前立腺がん細胞の増殖を遅らせる。
トウガラシに含まれるカプサイシンは幸福感を高めるエンドルフィンの分泌を促すので、ストレス解消に役立つ。
ニンニクに含まれるアリシンは血栓を作りにくくさせる。
アスピリンはヤナギの樹皮に含まれる。
イチイの樹皮に含まれるタクソールは抗がん剤
第5章 僕たちはウイルスにあやつられている?
乳酸菌はコバルトとマンガンを好み、身体に必要な鉄を横取りしない。
第6章 僕たちは日々少しずつ進化している?
DNAのうち細胞を作る指示を出しているのは3%、残りのDNA(ジャンクDNA、非コードDNA)は何も作らない。
ミトコンドリアはもともと独立した最近だった。寄生している間に宿主の役に立つように進化した。
人間の進化は、ウィルスや細胞を組み込むようにして形作られてきた。
変異
DNAは母細胞から娘細胞にコピーされる。この際にエラーが10憶分の1くらい起きる。
また、放射線や強力な化学物質にさらされてときにも起きる。
第7章 親がジャンクフード好きだと子どもが太る?
ジャンピング遺伝子
生物の遺伝子は、突然変異だけでなく、環境からの圧力によって有機的に変化している。
ある遺伝子をノックアウト(ある特定の機能を持った遺伝子を切り取ってしまう実験手法)しても、その遺伝子が担っていた機能は再現される。
その有機的な働きは、今までは「ジャンク」と言われていたゲノムの部分によってもたらされ、ジャンクは言われてきたゲノムの多くは、ウィルスによってもたらされた。
ヒトがウィルスに感染されやすい特質を持つことで、チンパンジーに比べてより早い進化の道をたどった。
エピジェネティクス(後成遺伝子学)
親から受け継いだDNAを変えずに親が獲得した形質を子がどう発現(オンオフ)するか。
メチル化(メチル基が遺伝子に結合し、DNA配列を変えずに遺伝子の発現作用だけがオフになる)するかしないかで、ある病気になるDNAのスイッチのオンオフが決まる。
第8章 あなたとiPodは壊れるようにできている
プロゲリアという老化する病気は、ラミンAというたんぱく質を作っている遺伝子が原因。つまり、老化には遺伝子が絡んでいる。つまり、死に向かうようにプログラムされている。
ヘイフリック限界
細胞は決まった回数(人間の場合は52回から60回)だけ分裂すると寿命が尽きる。
ヘイフリック限界は染色体の末端を保護するキャップにあたるテロメアがすり減っていくことと関係がある。つまり、細胞が分裂するとテロメアがなくなる。
細胞が癌化してもヘイフリック限界がその増殖を断つことで、それ以上の広がることを防いでくれる。ただし、癌はテロメラーゼという酵素を使ってテロメアを延長させる。つまり、癌になるとテロメラーゼが活動する状態になる(正常な状態ではテロメラーゼは眠っているので、テロメアは短くなる)。
また、幹細胞は「未分化」の細胞で、いろいろな種類の細胞に分裂でき、ヘイフリック限界の干渉を受けない「不死」の細胞。
ヘイフリック限界はがんを予防するが、老化させる。
細胞分裂に制限回数があるのはガンを防ぐため、
一方で、細胞は決められた回数だけ分裂すると、それ以上は分裂せず、老いて死を待つのみになる。
赤ん坊は顔に直接空気が触れるまで肺に吸い込まないので、水中出産だと吸引性肺炎にかかりにくい。
水中にいる間は、すべての哺乳類は潜水反応によって息を止めている。
子宮内にいるときも胎児は息をしている。吸い込んでいるのは空気ではなく羊水。
目次
第1章 血中の鉄分は多いほうがいい?
第2章 糖尿病は氷河期の生き残り?
第3章 コレステロールは日光浴で減る?
第4章 ソラマメ中毒はなぜ起きる?
第5章 僕たちはウイルスにあやつられている?
第6章 僕たちは日々少しずつ進化している?
第7章 親がジャンクフード好きだと子どもが太る?
第8章 あなたとiPodは壊れるようにできている