新版で序文と解説が加わる。
「オルタナティブ」や「カウンター・カルチャー」と呼ばれる、いわゆる反体制思想は、役立たない。
・反体制は、多くの場合「反逆」をウリにして、自分の地位をあげようとしているだけ
・反体制は、社会問題の原因をすべて「現在の体制が悪い」に押し付けるので、目の前の社会問題の解決に役立たない
・グローバリゼーションや、市場を否定するだけで、その有用性には目をつぶっている
本書の面白みは、映画「マトリックス」は
「広告とマスメディアを通じて我々は「スペクタクル」という表象システムに引きずり込まれている。スペクタクルの悪夢から目を覚ますため、革命には「欲望の意識と意識の欲望」が必要」という、政治思想のメタファーとしているところ。
現代社会は抑圧する。自制と禁止がどんどん発達していく様子は、テーブルマナーの進展に見て取れる。
反消費主義のような大衆社会批判は、消費主義の原動力となってい。
アメリカの階級制
階級(クラス)―「平等社会」アメリカのタブー
消費が画一化するのは、「みんなが好きなものはあまり変わりない」から。
オーガニック食品、カウンターカルチャー、スローフード、反グローバリズムなどのオルタナティブな活動は、「差異」を求める消費者の欲求を満たすことになり、結果として儲かる。
解説によるまとめ
https://www.hayakawabooks.com/n/na4f6a6b2a294
・ポップカルチャー、サブカルチャーは資本主義への批判でもオルタナティヴでもなく、その一部である。
・にもかかわらずそのように錯覚されてしまったことには理由があり、それは20 世紀後半の西側左翼の直面した困難からくるものであり、またそれ自体がその困難をより深めてもいる。
・西側左翼の陥った困難とは、西側先進資本主義社会の労働者を含めた一般大衆が、資本主義の秩序を、階級支配を受け入れてしまったという事実とどう向かい合うか、という難問である。正統派マルクス主義者はこの問題の所在自体を受け入れないことによって自己の正しさに閉じこもる一方、修正主義者、社会民主主義者は大衆の選択をそのまま受け入れ、よって資本主義それ自体を拒否することはなくなってしまった。
・西側左翼は労働者を含めた大衆の選択が自発的であることを認めつつ、その選択を導く社会認識自体が歪んでいる、誤っていると考え、人々を誤った社会認識へと導く資本主義社会の文化を批判し、文化のレベルでオルタナティヴを提示することが必要だ、と考えた。かくして20世紀後半の西側左翼においては、政治経済問題よりも文化を重視する、文化のほうが政治や経済を規定しているとする「文化左翼」的潮流が影響力を持つようになった。
・しかし実際には支配的な文化に対する批評も、またオルタナティヴな創作活動も、資本主義社会の中では、支配的な文化同様に、商品として作られ、流通し、消費されることに変わりはない。別にそれ自体が悪いわけではないが、資本主義を批判しそのオルタナティヴを探究するのであれば、政治経済の実態分析と、具体的な制度構想・政策立案こそが必要である。