本書の命題である「明治以降はなぜ神式に変わったのか」が読んでもわからなかった。
王政復古は皇国を創建した神武の原初に戻るというのだが
律令もない神武の時代の国家に戻ることはできなかったはずだ。
神仏分離によって、神道を日本の国教とした。
ところが、神式で行われた葬儀は明治天皇、大正天皇、昭和天皇の3回。
飛鳥・奈良の昔から江戸時代の孝明天皇の葬儀まではずっと仏式で行われ、
天皇家の菩提寺は泉涌寺だった(正確には天武系の位牌はない)。
当時の明治天皇は即位前の16歳。
簡単に改宗できたことが謎だ。
この本を読んでわかったことは、
明治時代には信心というのはあった宗教という概念はなく、
religionの訳語として登場してきた。
仏教も新語だった。仏門、宗門、宗旨といわれてきたが、仏教とは呼んでいなかった。
神道には経文(バイブル)がなかったので、欧米の宗教とは認められなかった。
このような状態で、祖先の信仰を捨てて、神道を選択しちゃったわけだ。
明治維新のいい加減さしか伝わってこない。
一方、仏式だからといって火葬できないわけではないようだ。
歴代天皇で初めて火葬されたのは持統天皇。
以来、天皇の葬法は火葬だったり土葬だったり
後光明天皇からは土葬である。後光明天皇が仏教嫌いで仏教の風習である火葬を嫌ったから。
で、この土葬がただの土葬でないのが問題。
殯(もがり)という白骨化などの物理的変化を確認して、死者の「最終的な」死を確認する儀礼。
退位されると殯は不要になり、火葬してもらえる。