【1】モチベーション
【2】ストレス
【3】クリエイティビティ
【1】モチベーション
1-1. モチベーションの定義
脳の高次機能または学習に関わる行動を直接的に誘因する、体内及び脳内の変化を認識した状態
つまり、
「刺激」(誘因)→ 「変化」(体内および脳内)→ 「認識」した状態
モチベーションは点ではなく、報酬回路として認識するところまでを線としてとらえる
行動という結果に至る過程には直接原因とその脳に作用する間接的原因があり、間接的な原因をモチベータと呼び、ある特定の脳部位にモチベータが届けられたときに起こる神経細胞の反応やそれに伴って放出される化学物質をモチベーション・メディエータと呼んで、メディエータは「仲介者」を意味し、モチベーション・メディエータによる反応を意識下の感じた状態、認知した状態がモチベーションになる。
モチベータ→行動を誘引する始点となる間接的な原因(間接的原因)
モチベーション・メディエータ→行動を誘引する直接的な体内(脳内)の状態(直接原因)
モチベーション→行動を誘引する直接的な体内(脳内)の状態を意識した状態(認知・気づき)
脳の下側、中脳あたりにあるVTA(ventral tegmental area:腹側被蓋野)で作られたドーパミンがモチベーションに影響を与える。
古くからある脳機能、すなわち脳の株の構造がモチベーションとして優先されるため、たとえば、睡眠不足になると、生存のための睡眠が優先され、高次機能を発動させることが難しくなる。
神経科学的欲求五段階説
脳の下から
(1)延髄:呼吸/体温/心拍/血圧
(2)大脳基底核・中脳:快・欲
(3)間脳:自律神経系
(4)大脳辺縁系:学習系
(5)大脳新皮質:高次機能系
上位の欲求は、下位の欲求と違って、もとから強い神経回路を持ち合わせておらず、無意識的に選択されにくいので、エネルギーを要する。
神経科学的観点から見たモチベーションの定義
脳の高次機能または学習に関わる行動を直接的に誘引する、体内および脳内の変化を認識した状態。
トップダウンのモチベーションを誘導しやすくなる方法
・自制心を持つ
モチベーションにはトップダウン型とボトムアップ型の2種類があり、
「お腹が空いた」「眠い」などはボトムアップ型のモチベーションで無意識に誘引され
一方「あれを考えよう」「この勉強をしよう」などはトップダウン型のモチベーションで意識的な誘引が必要となることが多く、ボトムアップ型のモチベーションを制御しつつ、トップダウン型モチベーションに基づく情報処理を実行に導くが「自制心」になる。
・モチベーショントリガー
やる気スイッチのモチベーショントリガーで自分がやる気スイッチを押すために
自分でつくる。
1-2. モチベーションに関わる神経伝達物質
神経伝達物質の観点から見たモチベーションの定義
・神経伝達物質そのものがモチベーションを高めるような内部構造の変化をもたらす
・神経伝達物質の放出によってそのときの状況を脳に記憶として保存させる
・神経伝達物質によって変化した記憶の状態が、次に神経伝達物質を放出するときのありように影響を与える。
ドーパミンとノルアドレナリン
両方とも高い状態がモチベーションが最も高い状態
ドーパミン
「SEEK(探し求める)」するための情動と説明されることが多く、シグナルや情報に向かわせるときに放出される。
ノルアドレナリン
闘争・逃走本能に役割を果たす交換神経と連動して放出される。
ドーパミンが発露すると脳内アヘンと呼ばれる快感物質Bエンドルフィンが作られやすく、戦うときなど出るコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンを導きやすい。
ドーパミンは数多くある情報から意図しない情報を減らすことで認知性を高めている。ノンアドレナリンは意図した情報も意図しない情報も含めて、あらゆる情報に対して認知性を高めている。
「もっと行動したい」という快感を生むBエンドルフィン系と「もうやめたい」という
ストレスを感じるコルチゾール系が拮抗的に働き始めるバランスが行動を起こしたときに長続きするか否かを決める指標の一つとなっている。
モチベーションのパターン
・惰性モチベーション
無気力状態、たいして求めてないけどストレスも感じない。ノルアドレナリンもドーパミンもあまり出ていない。
・好接モチベーション
無知な状態に起こりやすく、強く求めて新しいものに挑戦する。ドーパミンが多くノルアドレナリンが少ない
・嫌避モチベーション
嫌々何かをやっている、求めていない状態で集中しにくい。ノルアドレナリンが多くドーパミンが少ない
・学習モチベーション
あらゆる学びに最高な脳の状態。ノルアドレナリンとドーパミンどちらも出ている
モチベーションが高いと注意力、集中力、記憶定着なども高まる。
人間はある出来事と、そのときに生じる感情を何度も繰り返し体験すると、海馬と扁桃体とは別の脳部位でも情報を保存する働きが始まる。腹内側前頭前野(vmPFC)は、前頭前皮質の底側の中間寄りにあるが、自分の経験から培った価値ある事象の記憶痕跡を留める。
前頭葉の側腹面に位置する前頭眼窩野(OFC)という部分が、記憶化された価値を引き出す。これが「報酬予測」である。OFCが過去に記憶化された価値を参照し、いま目の前にあるものは自分にとって価値があるものか否かを見分け、即座の判断を導く。
しかし、価値として記憶化し、瞬時の意思決定を導くには、何度も繰り返し経験し、記憶が強く強く痕跡化されるまでのステップを踏まなければならない。人間の価値観が簡単に身につかないのは、繰り返しの体験のなかでいくつもの出来事と、それに伴う感情のが何度も染みついて、ようやく形成されるものだからだ。
体験学習とはエビソード記憶と感情記憶の「和分」である。体験学習を繰り返すことで、脳の中での独自のパターン学習により価値記憶へと変遷し、vmPFCに保存され、その状態変化により、ある事象を価価として認識できるようになると、脳はそれに対し「LIKE」という反応を示すようになる。
LIKEとWANTは似ているが、少し異なる。WANTは「飲する情動反応」であるのに対し、LIKEは「学習済みの快の認知的な判断」を含んでいる。
このLIKEは「直感」に近い。
直感に関してGOを腹内側前頭前野(vmPFC)が、NO GOを下前頭回(IFG)という前頭前皮質の他の部分が担っている。
★難しくて失敗しても、失敗の原因を素直に認識し、成長への栄養素ととらえると学習モチベーションへつなげられる
1-3. モチベーションを育むためのヒント
・メタ認知の大切さ
・モチベーションの高まりは人と違っていい
・モチベーションの系(システム)を捉える
・注意のシフトの活用
・モチベーショントリガーのデザイン
・「新」を楽しむ
・失敗を心の中でラッキーにする
・「曖昧」「無知」を受け入れる
・心理的安全が大前提
・直感を観察する。
・ドーパミンを促している状態を知る
seek,want,try,likeを感じる状態を知る
・うきうきワクワクを大切に
ドーパミンが出てわくわくしている状態は、行動を誘発してくれ、注意力、集中力、想像力、記憶力、思考力などを高めてくれる。
・感情と友達に
・ドーパミンを促している状態に気づき味わう
・ポジティブな感情の表面積を増やす
・いいとこ探しセンサーを鍛える
・予想・期待の調整
・苦痛をたしなむ
・苦痛に耐え、たしなむのは成長を加速させる
・お金は感情を揺さぶる
・お金は予想しやすい
・プロセスに快感情をちりばめる
・プロセスなくして結果なし
・やること、やっていることを自分の脳で知る
・自分で決める。
・違和感や葛藤を抱きしめる
・やっていること、やろうとしていることを信じる
・根拠のない自信も大切に
モチベーションを生み出す四つの情動
・SEEK:「自分にとって何かよさそうだ」という会の可能性に近づこうとする
・WANT:快の情動を学習してわかっていることに対し、それをもう一度味わいたいと思う情動
・LIKE:学習済みの快の認知として「これは良いものだ、好きだ」という感覚がある
・期待値、予測値差分:予想や期待の裏切られ方がポジティブでもネガティブでもドーパミンが出るその事象を学習しようとする
頭の中でモチベーションを生み出す六つの内モチベータ
→記憶の味わい】意識的に過去の快の体験を引き出す方法
・報酬予測感
→「なんだか報酬(メリット)がありそうだ」と確信できる前の段階でそのような認識をもたらす
・報酬予測
→過去の記憶のデータベースから未来の報酬を予測する
・希望
→何かいいことがおこるのではないかという「予測想像」「妄想」を持ち、根拠のない自信や漠然とした希望などがある
・価値記憶
→好きなものや大切にしていること、価値として認めているものなどを頭の中で想起している状態
・快の予測
→報酬に限らず自分がしたら気持ちよくなるだろう、すっきりするだろうと快の感情を予想したり想像したりしたとき
【2】ストレス
ストレッサーとストレスメディエータ
ストレスには「間接的原因」と「直接的原因」があり、間接的なストレスの原因となる刺激をストレッサー、外部からの刺激である外刺激由来のストレッサーと、ストレス反応を示したことを思い返すことで再度ストレスを感じる内刺激由来のストレッサーに分類される。
ストレッサーが作用すると、それに伴った反応が身体内、脳内で駆けめぐることをストレスメディエータ。
2-1. ストレスの役割
①受け取った情報がどのような意味や役割があるのかを伝える
②記憶力を高める
③直観力に影響する
適切なストレスは集中力・論理的思考力・記憶力を高めてくれる
脳の三つのモード
・デフォルトモード・ネットワーク
→白昼夢のようなぼーっとしている状態
↓
・サリエンス・ネットワーク
→デフォルトモード・ネットワークとセントラル・エグゼクティブ・ネットワークを
ダイナミックの切り替える
↓
・セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク
→さまざまな指令を出して思考したり注意を向けたりする
ストレス反応を起こしたとしても我々の身体にはある程度自動的に元の状態に
戻そうとする働き恒常性(ホメオスタシス)を意識して活用できる。
rlPFCという脳の部位は、事象を並べて分類する機能を持つ。このrlPFCは、自分のストレス状態を俯瞰的にとらえる。
ストレスは期待値差分、予測差分から生まれ、差分がネガティブに裏切られたとき、あるいは違和感をつかさどるACCが反応したとき、下流の脳部位である扁桃体、LC、VTA、交感神経が騒ぎ始める。
ストレスのメカニズムでもっとも有名なのがHPA ライン
HPA:視床下部(Hypothalamus)、脳下垂体(Pituitary gland)、副腎皮質(Adrenal cortex)
コルチゾール、ノンアドレナリン、ドーパミングが前頭前皮質に作用すると、注意力や州張力が高められる。
2-2. 避けるべきストレス
①過剰なストレス
ストレスが過剰だと「思考停止」に陥る
②慢性的なストレス
ストレスでコレチゾールが出続けている状態は、うつ病を誘発する
脳のrlPFCは、不確かさに直面しても、前を向く力がある。
モヤモヤを受け入れる
神経科学の世界では"Use it or Lose it(使われれば結びつき、使われなければ失う)"という言葉があり、神経細胞の結び目シナプスは使われれば使われるほど結びつきやすくなり、使われないと刈り込み(プルーニング)によって減少していく。
大人はシナプスが少なくなってしまったなかで、神経細胞同士を「つなげていく」作業も必要になってしまうため、学習は大人になるにつれて時間がかかる。
モヤモヤしている感覚は学習している証拠であり、脳内で使われいない神経細胞の電気信号効率化に向けた開通工事のために、エネルギーが必要になって起きている仕組みであり、モヤモヤは学びや成長の証。
副交感神経
交感神経は我々にエネルギーを与えてパフォーマンスを高めてくれて、"Fight or Flight(闘争または逃走)"の神経系といい、過度に作用すれば過剰なストレスに誘われ思考や行動に支障をきたす可能性があり、一方の副交感神経は我々にエネルギーを蓄えさせ、パフォーマンスを出すための準備をしてくれて、"Resut or Digest(休息または消化)"の神経系といわれて、交感神経をONの神経系ならば副交感神経はOFFの神経系でONにする技術だけでなくOFFにする技術も重要になる。
2-3. ストレスと仲良くなるヒント
・ストレスの多様性を受け入れる
・自他のストレス反応を同一視せず、違いを受け入れる
・自分のストレスを知る
・ストレスの意義・役割を理解する
・ストレス反応の声に耳を傾ける
・ストレスの俯瞰視(メタ認知)
・適切なストレス
・過度なストレスは避ける。
・慢性的なストレスは避ける
・「何かおかしい」という脳からのお知らせに気づいてあげる
・ストレッサー(どこからストレスを受けているか)を整理し、想いを乗せる
・高すぎる予測値・期待値を調整する
・「~すべき」「普通は~だ」という無意識バイアスを外す
・超俯瞰視によってストレスを矮小化する
・ネガティブな感情をポジティブに書き換えるすべを身につける
・違和感・葛藤を大切にする
・モヤモヤを受け入れる
・心から抱きしめる
・意識的にポジティブを見て味わう
・不確実性の中で探索を繰り返す
・たくさん笑う
・好きなことに没頭する
・セロトニンを誘導する
・副交感神経を優位にする
モヤモヤするのは脳が学習している証拠
【3】クリエイティビティを育む
3-1. クリエイティビティとは
「創造」とは、周りの評価に関わらず、本人にとって新しく価値のある情報や刺激を脳内で生みだすプロセスをいい、その能力をクリエイティビティという。
「アイデアを出す人」である創造プロセスと「アイデアを評価する人」である
評価プロセスに区別され、二つのプロセスでは処理する脳が異なる。
クリエイティビティにとって重要な三つの脳の仕組み
1.神経可塑性
2.Use it or Lose itの原則
3.Neurons that fire together wire togetherの仕組み
3-2. クリエイティビティを発揮するには
・クリエイティビティは後天的に育まれると信じる
・Use it or Lose it
脳の細胞は筋肉と同じように使えば太くなるが、使わなければ消滅する
・Neuro fire together wire together
神経細胞同士は同時に活性化されることで結ばれる
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デフォルトモード・ネットワーク
クリエイティビティが発揮される始点はデフォルトモード・ネットワークが活動しているときと考えられ、デフォルトモード・ネットワークは「タスクネガティブ」な脳の状態で、自分の内側にある情報を処理して脳の中で何かをつぶやいたり自分の世界には入りこみ、瞑想やマインドフルネスなどで呼吸に集中するのを忘れて「このあと何しようかな」など、無意識に考えてしまうマインドワンダリング状態のときに脳はデフォルトモード・ネットワークになっている。→「意識的な無意識化」
デフォルトモード・ネットワークを起動させる方法
・意識的に脳に空白をもたらす
→たっぷり思考した後にぼーっとする
・単純作業を味方にする。
→情報処理を持て余した脳が勝手に働く
PCCの延長上に海馬があり、海馬の延長上に扁桃体が結びついている。海馬がエピソード記憶を保持すると、それに伴う感情の情報が扁桃体で結びついている。この海馬と扁桃体、つまり、エピソード記憶と感情の記憶をPCCがまさぐる。
Episodic Specificity Induction(エピソディック・スペシフィシティ・インダクション)
過去を詳しく引き出す行為。
過去の話を詳しく聞いたり、未来を思い描いいたりするだけで、クリエイティビティが高まる。
つまり、記憶をアクティブにする働きかけがクリエイティビティを高める。
サイエンス・ネットワーク
自己の内側の情報をキャッチする、気づき(アウェアネス)の中枢。
・島皮質
側頭葉と頭頂葉との境目にあるくぼみの少し奥側にある。
→自己の内側の感覚と感情の状態のモニタリング
・ACC (前部帯状回)
PCC (後部帯状回)の前側にある。
→エラー探知
SG(縁上回)とPG(中心後回)
→身体感覚に関わる脳部位。
→クリエイティビティを発揮する際は身体イメージを脳内でシミュレーションし、そのときの感覚や他者の感情までシミュレーションし、そのときの感覚や他者の感情までシミュレーションしている。
・SG(縁上回)
→触覚情報や空間の把握、四肢の位置情報把握や他人の姿勢やジェスチャーなどの把握。
→他者の動作をモニタリングし、ミラーニューロンと呼ばれる神経細胞によって相手の心や感情を推定したり共感したりする。
・PG(中心後回)
島皮質と連携した全身の感覚神経が集まる場所。
五感に加え、位置感覚、痛覚、振動感覚、温度感覚などの感覚も扱う。
AG(角回)がクリエイティビティにもっとも大きな影響を与える。
AGはメタファーの解釈や、何かをメタファーとしてたとえるときに使われる。
AGの役割
・言語の解釈に重要な役割を担う。
→メタファーなどを理解したり、抽象的なものの理解に重要な役割を担う。
・デフォルトモード・ネットワークのコアシステムの一部。
→無意識に近い状態で様々な脳にある情報を並列的、同時多発的に処理する。
・情報のハブとしての機能が強い。
人間の脳の不確実性がクリエイティビティを生む
どうすれば能力を発揮できるかわからないことを、人は積極的にやることはできない。
非言語的な情報処理が脳の大半を占める。
・外界非言語情報(絵、音、表情など)
・外界言語情報(言葉、文字など)
・脳内言語情報(意味/エピソード記憶→抽象解釈・思考)
・脳内非言語情報(情報記憶・創造→感性・創造性など)
3-3.クリエイティビティを高めるヒント
・想像力は複雑系だと知る
・不確実な脳を愛でる
・本人にとっての創造
・他者評価の危険性
・心理的安全性と創造性
・創造性も育まれる
・意識的無意識化
・単純なことに集中
・具体的な雑談の活用
・未来に対する雑談
・感情・感覚を味わう
・違和感に耳を傾ける
・違和感は宝箱
・新しさを見出す
・感情と感覚にフォーカスする
・認知バイアスに気づきうまく付き合う
・不確かさを楽しむ
・できた部分、できる部分を見る
・身体イメージを伴う想像
・言語バイアスを解く
・解除する脳→外界の情報を断つ