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*[本]世界標準の経営理論

 

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

 

 

経営理論から現実の経営分析・意思決定に至るルートには、フレームワーク(ファイブ・フォース、ジェネリック戦略など)を利用したwhatを重視した「第1ルート」と、理論が思考の軸となるhow、when、whyを重視した「第2ルート」がある。


経営理論そのものは抽象的で、実務で使いやすいとは限らないまで、BAなどの実践向けのために、理論を使いやすいフレームワークに落とし込む。これが「第1ルート」。フレームワークの代表例が、ポーターの『競争の戦略』で紹介される「ファイブ・フォース」「ジェネリック戦略」だ。同書は経営学の「SCP理論」をフレームワークに落とし込んで紹介した。しかしこの第1ルートは、ポーター以降、ほぼまったく発展していない。

本書が目指すのは第2ルートだ。「経営理論」のうち、「標準」といえるものを約30選び抜いて、それを体系的に、基本原理から丁寧にわかりやすく紹介。第2章などの例外を除き、フレームワークは紹介しない。フレームワークはwhyに応えないので、思考の軸にならない。むしろ、whyを考えずに闇雲にフレームワークだけを当てはめることは、ビジネスパーソンの思考を閉じ込めることになりかねない。

 

序章

理論とはHow、When、Whyにこたえること

Howとは因果関係、Whenとは「その理論の通用する範囲」、Whyとは説明性

経営理論は、説明性、汎用性、不変性の観点から必要である。

経営理論を3つの理論ディシプリン、経済学、心理学、社会学で説明する。

理論とフレームワークとの違い→参考文献や引用の羅列、データを記述しただけ、概念の説明、図表、命題や仮説だけでは、理論ではない。

 

第1章 SCP理論
SCP(Structure Conduct Perform) とは  、 その業界が構造的に儲かるかどうかを体系化 したもの
完全競争 となる以下の3つの条件を満たすと全く儲からない
・市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響を与えられない
・参入(撤退)コストがない
・製品・サービスの質が他社と同質で、差別化されていない
逆に3つの条件の真逆を満たすと 完全独占 となる。

 

 ネットワーク効果とは、「ユーザーにとって、他の多くの人が同じ製品・サービスを使うほど、自身もそれを使う効用が高まる」特性のことだ。我々がなぜフェイスブックを使うかといえば、その最大の理由は「他の多くの人が使っているから」にほかならない。いかにフェイスブックのユーザー体験やインターフェイスが優れていても(差別化ができていても)、そこに自分の友人や知り合いが多く参加していなければ、使う意味がない。

 

第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク
https://diamond.jp/articles/-/226329
SCPフレームワーク
・ファイブ・フォース
産業の収益性は以下の5つのフォース(脅威)に規定され、フォースが強ければ完全競争に近づく
-潜在的な新規参入企業
-競合関係
-顧客の交渉力
-売り手の交渉力
-代替製品の存在

ファイブ・フォースの正しい使い方
-ファイブ・フォースは将来の予測に使う
-ファイブ・フォース分析を複数の階層・レベルで行う

・戦略グループ
同業他社をさらにグルーピングし、他社を同一グループの直接ライバルなのか、またはグループごとに優位性があるかなどを見ていく

ジェネリック戦略
戦略は突き詰めると「コスト主導戦略」か「差別化戦略」の2つの包括的な分類で捉えられる
二つの戦略の両立は難しいので「自社の競争環境を完全競争から離し、独占ら近づける戦略」が望ましい。

ファイブ・フォースは産業収益性を規定する構造要因のフレームワークであるが、
産業構造が収益性の主因ではなく、戦略グループ間の収益率もばらばらである。
また、ジェネリック戦略は「持続的な競争優位」ではなく「一時的な競争優位」であった。

SCP理論の限界
市場の安定と予測性を前提としているので、ハイパーコンペティション(著しく競争が激しい)世の中では通用しない。

 

第3章 リソース・ベースド・ビュー (RBV)
・企業は製品やサービスなどの アウトプット を生み出すが、その手前の 人材や技術、知識、ブランドなどのリソース に着目したのが RBV (Resource Based View)
-企業はリソースなしにアウトプットを作れない ので、リソースを独占してしまえ
-リソースを一時的に独占できてもマネされたら長続きしないので、 模倣困難性が大事 という話
・RBV (Resource Based View) の理論を実際にどう生かせばいいか
フレームワーク化があまり進んでない
アクティビティ・システム の図を書いて模倣困難性を実現すると良い

 

RBVの問題

・同義反復

・部分均衡

ブラックボックス

フレームワークが貧弱

・メッセージ性が弱い

 

第4章 SCP対RBV、および競争の型
https://diamond.jp/articles/-/229262

ポーター vs. バーニー論争の決着
https://diamond.jp/articles/-/229250

SCPとRBVとも大事
SCPとRBVとでは競争の型が違う

競争の型は3種類ある
・IO (Industrial Organization) 型の競争
市場構造、競争構造に障壁を作り、新規参入を阻むなどして完全競争から如何にして離れるかを考える
SCP によく合う
チェンバレン型の競争
前提としてすべての企業が差別化されており、どのように勝てる差別化をしていくかを考える
RBV によく合う
シュンペーター型の競争
不確実性の高さを前提にしつつ、試行錯誤やいかにして環境の変化に対応するかを考える
競争の型が違えば戦略も変わってくる ので、どの型の競争に近いのか俯瞰して考えてみるの大事

 

ビジネスパーソンが自社の戦略を考える上では、自社を取り巻く環境がどの型に近づいているのかを比較検討・予測できる鷹の目を持つことだ。

 

第5章 情報の経済学1
・『ある企業の製品・サービスの完全な情報を、顧客・同業他社が持っている』は、 完備情報 と呼ばれ、完全競争に近づく5つ目の条件
完全競争に近づくので、価格競争に陥りやすい

完全競争を崩そうとして先ほどの条件5を崩す、 つまりは『みんなが同じ情報を知っている』から『片方だけが情報を知っている』に持ってきてしまうと、 嘘つきが得をする方にインセンティブが働いてしまい、このような逆淘汰が起きてしまう、 これが アドバース・セレクション。

アドバース・セレクションへの対処法
-スクリーニング(私的情報を持たない方の対処法)
顧客(買い手)に選択肢を与えることで、顧客側が持っている私的情報を元に、勝手に適切な方を選ぶ
特定の情報を持っている人を相手にする側、私的情報を持っていない側に有効なメカニズム

-シグナリング(私的情報を持つ方の対処法)
伝わりにくい自分の情報の代わりに、分かりやすく顕在化したシグナルを外部に送る
材料になる
特定の情報を持った人自体を対象とした、私的情報を持っている側に有効なメカニズム


・情報の非対称性をうまく活用する
https://diamond.jp/articles/-/231796

アドバース・セレクションは情報の非対称性によって逆淘汰が起こってしまう良くない例ですが、 情報の非対称性が必ずしも悪ではなく、むしろチャンスもある。

第6章 情報の経済学2(エージェンシー理論)
・取引成立後に、その取引内容に合わせて基準を下げる、その方向にインセンティブが働いてしまう モラルハザード問題(エージェンシー問題

目的の不一致と情報の非対称性があるとモラルハザードが起きる

・精神論でなんとかするのではなく仕組みで解決する、 モニタリング と インセンティブによる解消法などが有効
-モニタリング
プリンシパルがエージェントを監視する仕組みを組織に取り入れて、 情報の非対称性を解消する ことでエージェンシー問題をなんとかする
-インセンティブ
目的の不一致があったエージェントに、プリンシパルと同じ目的を達成させるデザイン・ルールを与え、 目的の不一致を解消する ことでエージェント問題をなんとかする


・同族企業の方が非同族企業よりも業績が高くなるのも、エージェンシー理論を思考の軸にして説明 できる

 

第7章 取引費用理論(TCE)
・ホールドアップ問題 とは、取引の特殊性などの高まりから、取引時に想定していなかった問題が数多く出てきてしまう問題のこと
ホールドアップ問題が起きる3つの条件(と1つの前提)がある
-不測事態の予見困難性
-取引の複雑性
-資産特殊性
-機会主義的な行動を取ることを前提として考える(経済学的な視点から)

・TCE (Transaction Cost Economics) 、取引費用理論 とは、ホールドアップ問題を解消する方法、取引コスト という概念を導入することで、市場(取引が行われる、いわゆる外注)の対局にいるのが企業(取引が行われない、いわゆる内製化)であると位置付けられていて、 取引コストの大きさが企業の範囲を決める(どこまで内製し、どこから先を外注にするか)、ということ

古典的な経済学のうち情報の非対称性を取り組むのが「情報の経済学」とエージェンシー理論、それに対して「限定された合理性」を取り込むのが「TCE」

 

第8章 ゲーム理論1
『複占』での競争戦略
ゲーム理論→自分と相手、相互の意思決定のメカニズム
・自分と相手の行動の場合分け(表にしたものをペイオフマトリックス、利得表という)を行い、最終的に定まる結果を ナッシュ均衡 と呼ぶ
必ずしもお互いが得をするとは限らない、場合によっては両者が損をするケースもある
・クールノー競争
「生産量」などの数量について意思決定(数量ゲーム) し、その意思決定が同じタイミングで行われる(同時ゲーム)競争関係
最終的に定まる結果をナッシュ均衡という
ベルトラン競争
両社の製品は十分に差別化されておらず、「価格」について意思決定(価格ゲーム) し、その意思決定が同じタイミングで行われる(同時ゲーム)競争関係
・社会の制度・文化などの多くは、お互い空気を読みあった上でナッシュ均衡となっており、 一度決まると安定して動かない

本来利益率が高いはずの寡占状態で、ベルトラン競争の結果として、完全競争と同じような水準まで利益率が下がってしまうことを ベルトラン・パラドックス

ベルトラン・パラドックスを避ける
・十分な差別化
・ビジネスの特性
-初期投資が必要なビジネスではクールノー競争になりやすく、供給過剰になりうる
-供給過剰になると、価格競争(ベルトラン競争)に移らざるを得ない

 

第9章 ゲーム理論2
・非協力ゲームには、同時に意思決定をする同時ゲームと、 交互に意思決定をする逐次ゲーム があり、今回は逐次ゲームの話
先手をリーダーと呼び、後手をフォロワーと呼ぶ
・逐次ゲームだと、同時ゲームのときよりも リーダーが有利な状況を作りうる
・現実にはゲームのルールは変えられる 、同時ゲームを逐次ゲームに変えて、自社に有利な状況生み出すことができる
-自分がリーダーの時、絶対に引かないことを分からせる 戦略的コミットメント
-フォロワーも同じ方向の手を打つと考えられる時、価格維持などの 弱気な戦略 が有効
・無限繰り返し ゲームであれば、「競い合いは不毛であり、向こうもそう考えているはず」という考えが働き、競い合わなくなる(フォーク定理)

戦略が代替的か、補完的か?
2種類の戦略について分類がされています。
・戦略が代替的
代替的、つまりこっちが強気な戦略を(先に)取ったとき、相手が弱気な戦略を取る場合
主に、生産量などの数量を軸に競争するケース
逐次ゲームの状況を作り出したい時は、 強気の戦略 を選ぶべき( 戦略的コミットメント )
・戦略が補完的
補完的、つまりこっちが強気な戦略を(先に)取ったとき、相手も同じ強気な戦略を取る、同じ方向の手を打つ
主に、価格を軸に競争するケース
逐次ゲームの状況を作り出したい時は、 弱気の戦略 を選ぶべき
数量を軸に競争するケースでは、リーダーが強気な戦略に出ることで(あるいは見せることで)、 フォロワーまで強気に出てしまうと供給過剰となってしまうため、それを避けようとする、 つまりは弱気な戦略に落ち着いてしまう。

価格を軸に競争するケースでは、リーダーが強気な戦略に出てしまうと、 フォロワーも強気に出ないと価格競争に破れてしまうので、強気に出ざるを得ない、 両社とも利益を失うことにつながってしまうので、実際にはリーダーは強気な戦略に出られず、 弱気な戦略に落ち着いてしまう。


フォーク定理
非協力ゲームであっても、 繰り返しが続くという想定においては、価格競争を続けていくのは不毛だとお互いが考える 力が働いてしまい、 談合していなくても価格競争をしない状況が続いてしまうこと

逐次ゲームとは?:
そもそも同時ゲームは逐次(じゃんけんとチェスの違い)ゲームに変えられる。(ゲームルールは変えられる)
フォロワーの行動をリーダーの都合の良いように先導できるため、逐次ゲームのリーダーになること(先手が打てること)が大きなメリットを生む。

逐次ゲームのリーダーになるための2つのポイント
下記が成立しない場合はリーダーになっても意味がない。
① 先に宣言をすること
② その宣言が信用に足ること(戦略的コミットメント) 
  フォロワーに先駆けた宣言を信じさせて選択を誘導できないと意味がないということ。

無限繰り返しゲームとは?:
無限繰り返しゲームは前提が異なる。
一度きりではなく、無限繰り返しのゲームが前提になると、合理的な判断の帰結の仕方が変わる。ゲームを繰り返す中で相互に学び、ベルトラン・競争の不毛さに気づき、お互いが結託をしていなくてもお互いが一番メリットを保てる構図に落ち着く。

 

第10章 リアル・オプション理論
・リアル・オプション理論 とは、不確実性の大きい中、 事業を小さく始めて、あとで不確実性が下がることを期待して残りのオプションを検討する。下振れしたら、上振れしたらさらに拡大(コール・オプション)
・リアル・オプションのアプローチのメリット4つ
-ダウンサイドの幅を抑える
-アップサイドのチャンスを逃さない
-不確実性が高いほど、オプション価値は増大
-学習効果
・リアル・オプションの分類
コールオプション
不確実性が高いときは一部のみ投資、不確実性が減った事後に残りの投資
② スイッチングオプション
不確実性の高い市場に複数投資してポートフォリオを組む。アップサイドを逃さない戦略
③ 撤退オプション
不確実性が高いときに撤退をしやすくすること。下振れのリスクを鑑みながら小さいリスクで参入。
・リアル・オプションがいつ有効なのか
-投資の不可逆性が高い
-オプション行使コストが低い
-事業環境の不確実性が高い

・不確実性の種類
-レベル1: 確実に見通せる未来
-レベル2: 他の可能性もある未来
-レベル3: 可能性の範囲が見えている
-レベル4: まったく読めない未来
このうちリアル・オプションが適用できるのはレベル2 or レベル3のケース

 

第11章 カーネギー学派の企業行動理論(BTF

https://live5.jp/wp-content/uploads/2020/06/8ae641e63fa832b5fd9e42dd246c6348.pdf


・意思決定の特性を以下の前提で考えていく
合理的だが 人の認知には限界があり、行動すると認知できる範囲が広がり 、さらに行動の幅が広がる
・企業行動理論(Behavioral Theory of Firm: BTF) とは、 組織意思決定の循環プロセスモデル のこと
-サーチ
自身の認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動
自分の認知は狭く、この世にはもっと自分を満足させてくれる選択肢があるのでは?と探す
-アスピレーション (目線、目標)
自社を評価する基準、目線の高さ
周りにできる人が多かったりすると、自分ももっとやれるはずと考えて目線が高くなるなど
-企業は現状に満足してしまうほど、サーチしない方が合理的と考え停滞してしまう
一見精神論のような『目線の高さ』も、循環プロセスとして説明できちゃう
著名経営者の教訓にも通ずるところがある


サティスファイシングとは?:
人は合理的に意思決定をしているということには間違いない。しかしその認知力・情報処理力には限界がある。結果、「現時点で認知できる選択肢の中から、とりあえず満足できるものを選んでおく」となる。

カーネギーの人・組織の意思決定:
「限られた選択肢」→「現時点でとのとりあえず満足できる選択」→「実際の行動」→「行動することで認知が広がり、新しい選択肢が見える」→「より満足な選択」という一連のプロセスとなる。

認知心理学の視点→経済学への批判
・合理性
-与えられた条件下で自身にとって最適な選択肢を求める
・認知の限界性
-人の認知には限界がある 、選択肢が100あっても10くらいしか認知できないなど
・サティスファイシング(満足すること)
-最大化ではないが、とりあえず認知できる範囲で満足できるものを選ぶ
・プロセスの重視
-行動すると認知できる範囲が広がる
-新しい選択肢が見えてきて、そちらが今より満足できるなら移る

意思決定の循環プロセス
企業行動理論(Behavioral Theory of Firm: BTF) とは、 組織意思決定の循環プロセスモデルのことで、 認知には限界があるので、その中で満足できる選択肢を選んで、認知を広げて、 また同じように満足できる選択肢を選ぶのをサイクル回す。

循環プロセスの2つ概念
・サーチ
自分の認知は限界があり狭いので、 この世にはもっと自分を満足させてくれる選択肢があるのでは?と考えて探しにいく行為です。

これ自体はどうやら掘り下げ甲斐があるようなので、別の章でたっぷり紹介されているようです。 ここでは概念だけ把握しておきます。

・アスピレーション(目線、目標)
目の前の目標、といってもいいかもしれません。

経営学では、アスピレーションは以下から計算されることが多い。
-企業の過去の業績の加重平均
-同業他社の平均業績


循環プロセスから、満足度が高まればサーチしなくなることが言える
満足度が低ければサーチする傾向がある、ということの逆として、 満足度が高まればサーチしなくなる。
・サーチ行動はコストも時間も認知的負担もかかる
・現状に満足してしまうほど、サーチは行わない方が合理的と考えてしまう(限定された合理性から)
・つまりは 成功体験による慢心


人・組織は合理的であるがゆえに、慢心する:
組織は満足度がひくいほどサーチ(外部情報の取入れ)をする傾向がある。逆に言えば満足度が高まれば企業はサーチをしなくなるということでもある。

ルーティーンについて:
認知に限界のある企業がサーチを繰り返すと、その認知的な負担が大きくなる。
認知負担を減らすために、内部で「当然とされるルール・標準的な手続き・習慣」を形成するようになる。社員が企業のルール・習慣に当然のように従えば、それだけ認知負担が減り、認知をサーチ活動に回すことができる。

 

パフォーマンス・フィードバック:「企業のこれまでのパフォーマンス・業績が、心理的なメカニズムを通じて、その後の企業行動に影響する」という命題。

①アスピレーションと現実のギャップ
企業にとって重要なのはアスピレーション(将来に向けた目線の高さ)だけでなく、足元の業績とのギャップである。
②問題解決型サーチ
自社業績がアスピレーション水準に達しないほど、企業は積極的にサーチ活動を行う
③企業の余裕スラック
業績が好調な企業は、資金など経営資源に余裕が出てくるので、サーチ行動を積極的に行うようになる。
④リスク行動
足元の業績がアスピレーション水準に到達しない企業ほど、心理的な焦りから、リスクの高い行動を取りがちになる。

 

アッパーエシュロン理論
認知には限界があるので、経営チームに
多様性があった方が認知の範囲は広がる

 

第12章 知の探索・知の深化の理論1

組織学習とは?:
キーワードは「経験」であり、「組織の知の変化」である。この定義に当てはめれば、「イノベーション」も「知の探索」という経験を通して、新しい知を生み出すと捉えられる。

組織学習の循環プロセス:
「組織・人・ツール」「経験」「知」という三つの要素をつなぐ、3つのサブプロセスに分解できる。


サブプロセス1: 組織や人 が 行動 することで 経験 を得る
サブプロセス2: 得られた 経験 を通じて、新たな 知を獲得 する

  • 知の創造 … 経験で得た知とすでに持っている知を組み合わせて、新しい知を生み出すこと
  • 知の移転 … 技術提携などの外部から知を手に入れること
  • 理経験 … 同業他社など他社の経験を観察すること、人の振り見て我が振り直せ的なもの


サブプロセス3: 生み出された 知 は、 組織・人 に 記憶 される
(サブプロセス1の行動である) 知の探索 、 知の深化 は、新しい知を求めたり、今持っている知を活用すること


組織・人は何らかの意図をもって行動する。行動した結果「経験」する。
組織は経験を通じて、新たな「知」を獲得する。
知の獲得経路は創造と(外部からの)移転と代理経験(他者の経験の観察)。
組織の記憶(知の保存と知の引き出し)、及び組織メンバーの頭脳だけでなく、ITツール・製品・サービスそのもの等から知を獲得することが可能。

 

知の探索と知の深化とは?:
探索は「新しい知の追求」である。深化は「すでに知っていることの活用」である。

・知の探索

-新しい知は、既存の知と別の既存の知の組み合わせ で生まれる
-人の認知には限界があるので、認知の範囲外にある知を探しに行って、既存の知と組み合わせる必要がある

知の深化

-すでに知っていることをそのまま活用する
-新しい商売の種になりうるとなったとき、 徹底的に深掘りし収益化する 必要がある

 

短期的に考えると知の探索はコストがかかるため、知の探索が行われなくなっていく、これを コンピテンシー・トラップ と呼ぶ
知の探索も知の深化も両方必要、バランス大事

 

何故知の探索と知の深化がイノベーションに重要か?:
認知に限界があるから。
目の前の知だけをひたすら組み合わせるから、ある程度時間が経つと組み合わせが尽きてしまい、新しい知が生まれなくなる。
人・組織が新しい知を生み出すためには「自分の現在の認知の範囲外にある知を探索し、それを今自分の持っている知と新しく組み合わせること」である。

そしてとくに重要なのは「知の探索」を怠らないこと。
長期的な(組織の)知性は知の探索を十分なレベルで持続できるかにかかっているので、知の深化を増大して、知の探索を減じさせる傾向は、組織の抵抗プロセスを自己破壊的なものにしかねない。

 

第13章 知の探索・知の深化の理論2
・両利きの経営を目指すには
-オープン・イノベーション戦略(スタートアップ企業などと組んで新しい知を生み出すこと)とコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)による投資(大企業がVC的に動いてスタートアップ企業に投資すること)
 大企業にとって、スタートアップ企業の技術・ビジネスモデルは魅力的
 スタートアップ企業にとって、大企業の経営ノウハウや坂路・人的ネットワークは魅力的

-日本型の CVC 投資
知は外に探すものではなく、大企業の内部に埋もれている状態にある 、と仮説を立てて、 逆に大企業の中にいる人材を外のスタートアップ企業に送り出して、 知の探索を加速させる

-知の深化部門と知の探索部門に部門を分ける
新しい部署に必要な機能をすべて持たせて、独立性を保たせる
トップレベルでは両者が違いに知見や資源を活用し会えるよう交流を促す

-個人で転職しちゃうなどの個人内多様性を持つ、 イントラパーソナル・ダイバーシティ
・どこまで探索すればいいかについて、 経営者は知の探索に振り切る

 

第14章 組織の記憶の理論
組織の記憶プロセスは大きく2つある
・知の保存
-個々の脳内で記憶
-モノ・ツールに保存(文書やコンピュータなど)
-習慣に落とし込み、ルーティン→16章

・知の引き出し
知を引き出すための知なので、メタ知と呼ばれる。
効果的に引き出すための理論
-シェアード・メンタル・モデル(SMM)
仕事に関するいろんな情報がをメンバー間で揃えるためのメタ知
さらに タスク SMM と チーム SMM に分かれ、前者が メンバー間の共通認識 、後者が メンバー同士の役割分担・強み弱みをお互い分かる的な認識

IDEO社の7つのルール
トピックに忠実であれ
ぶっ飛んでよし
すぐに判断・否定するなかれ
会話は一人ずつ
質より量を
描け、視覚的であれ
他者のアイデアに乗っかれ

-トランザクティブ・メモリー・システム(TMS)
組織内で『誰が何を知っているか?』を知っている、組織内の知の分布に関するメタ知。
誰が何を知っている的な情報は、少数個人で独占した方が効率的。
TMSを高めるためには「顔を突き合わせての交流」である。
ブレストはアイディアを出すためにやるのではなく、TMSを高めるためにやる

 

第15章 組織の知識創造理論(SECIモデル)
知には 暗黙知形式知 がそれぞれある
-形式知 … 言葉、文書、図表やプログラミング言語など
-暗黙知 … スポーツやアート分野、直感・ひらめきなど

SECI モデル とは、暗黙知形式知のダイナミックな相互作用を表すもの
-Socialization 共同化 、暗黙知を他人と共有すること、共感
身体を使っての共同体験
見よう見まね
例: バッティングの素振り
共感・対話
相手に共感してもらう
徹底的に対話する、知的コンバット(後述)

-Externalization 表出化 、共有した暗黙知形式知にする、言語化
比喩(メタファー)・たとえ(アナロジー
例: 千切り経営、包丁で千切りにするように事象を細かく刻んで分析、的なことを比喩で表現
アブダクション(仮説化)
いわゆるハッとした気付き、閃き
事象を超観察する、徹底的な事実の察知
デザイン思考
そもそもデザインとは、暗黙知形式知化すること
経営理念などは暗黙知的な側面が強いので、デザイン思考の手段などを用いて形式知化していく

-Combination 連結化 、集団としての形式知を組み合わせて体系化する、
いわゆるマニュアル化。 異なる方法として ナラティブ(物語る)

-Internalization 内面化 、実際に活用し、各々新たな暗黙知を獲得する、アクション

共同化を進めるためには、 一対一の徹底的な対話、知的コンバットが必要

ナレッジ・ベースト・ビュー
 企業の生産活動の最も重要なインプットは知識であり、ここに着目して企業
行動を解明しようとする視点

 

第16章 認知心理学ベースの進化理論
・人の認知には限界がある、という前提にしつつも、組織の進化( 進化理論 )に焦点を当てる
・ルーティンとは、 組織のメンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する、暗黙知形式知を土台にした行動プロセスのパターン のこと
組織・集団によって繰り返される行動パターン である点と、 状況の変化によって変わることもある行動パターン でもある
・ルーティンの特性3つ
-ルーティンは徐々に変化する、 漸進的 な変化に縛られる
-ルーティンの方向性をいきなり大きく変えることはできない、 経路依存性 を持つ
-放っておくと 硬直化 する
・ルーティンのメリット
-安定化:業務・行動プロセスが平準化される、目線が揃う
-記憶:組織に暗黙知を記憶、保存できる(以前出てきた TMS や SMM は形式知の保存が主)
-進化:認知に余裕が生まれて、新しい知を探しにいける
・ルーティンのデメリット
大きく環境変化があったとき、リソースを割り振り直してもルーティンが硬直してしまう
そういった場合、 ルーティンをゼロから作り直す 必要あり


ルーティーンの進化は、漸進的になる
①漸進的な変化
②経路依存性
③硬直化

ルーティーンが進化を止める危険性
①繰り返し行動の頻度が高いといき
 頻度を高めすぎればルーティーンは硬直化する。
②行動パターンの一定性
 行動パターンが一定のペースであまりにも長く繰り返されることもルーティーンの硬直化につながる
③時間プレッシャーなどの外部ストレス

 

第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論
・ダイナミック・ケイパビリティ とは、ビジネス環境の変化のスピードが早くなってきている(ハイパーコンペティション)中で、 様々なリソースをたえず組み合わせ直すプロセス のこと
-ケイパビリティとはリソースの組み合わせ方のこと、リソースの上位概念
-組み合わせ直し続けることが大事、ルーティンの発展系
-経営理論としては未完成
ティース型のダイナミック・ケイパビリティ
センシング( sensing )とサイジング( seizing ) によって、サーチを促し投資する
センシング、事業機会や脅威を感知する力のこと
サイジング、感知した事業機会を実際にとらえること
・アイゼンハート型のダイナミック・ケイパビリティ
シンプル・ルール によって、本質的なところだけルーティン化
シンプル・ルール 、数を絞ったシンプルなルールだけを組織に徹底させる
-後は状況に合わせて柔軟に意思決定すべき
-ハイパーコンペティション時に、細かなルーティンはむしろ硬直化を招く

第18章 リーダーシップの理論
・リーダーシップの定義は人それぞれ、時代によっても異なるが、一つ挙げるとすれば 他者に変化をもたらす ことを指す
経営学のリーダーシップ研究、大まかに 3つの古典的なもの、2つの現在の研究の中心になっているもの がある
1940年:リーダーの個性の理論
リーダーを務める人はユニークな資質・人格がある
1960年代:リーダーの行動の理論
部下に対する行動スタイルの違いが組織に影響する
1970年代:コンティンジェンシー理論
個性と行動が特定の条件によって有効となるもの
1980年代:リーダー・メンバー・エクスチェンジ
リーダーが部下をえこひいき、全員をひいき出来るリーダーこそが最強
1990年:トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)とトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)
-管理型(アメとムチ)で部下に向き合うリーダーシップと、ビジョンと啓蒙によって部下に向き合うリーダーシップに区分する
前者を トランザクショナル・リーダーシップ(TSL) 、後者を トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL) と呼ぶ
トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)
アメとムチ。
-状況に応じた報酬
-例外的な管理
トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)
ビジョンと啓蒙。3つ資質がある。

-カリスマ
 ビジョンなどを部下に伝えることで、その組織で働くプライド、忠誠心、経緯を植え付ける
-知的刺激
 知的好奇心を刺激する、新しい視点で考えることを推奨する
-個人重視
 コーチングや教育を行い、学習による成長を重視する

・全く別視点からのリーダーシップ、グループの複数の人間、あるいは全員がリーダーシップを執る考え方、 シェアード・リーダーシップ(SL)
-全員がリーダーとして動くことで、当事者意識を持てる
-これは自分のグループであるというアイデンティティを持ちやすくなり、知の交換が積極的に行われる
・リーダーシップの最強のパターンは トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)とシェアード・リーダーシップ(SL)の掛け合わせ

・その他のリーダーシップ視点
-サーバント・リーダーシップ
-ハンブル・リーダーシップ
-オーセンティック・リーダーシップ
-フォロワーシップ

 

第19章 モチベーションの理論
・モチベーションとは 人を特定の行動に向かわせ、そこに熱意を持たせ、持続させること で、 外発的動機 のものと 内発的動機 のものがある
-外発的動機
報酬、昇進など、外部から与えられる影響で高まるモチベーション
-内発的動機
楽しみたい、やりたいといった、内面から湧き上がるモチベーション

外発的動機よりも内発的動機の方が、 個人の行動へのコミットメントや持続性を高める

・モチベーションに関する理論
-ニーズ理論
-職務特性理論
職務特性理論の内発的動機を高める5つ
 -多様性(variety) 、従事者の多様な能力を必要とする
 -アイデンティティ(identity) 、最初から最後まで業務に携われる
 -有用性(significance) 、他者の生活・人生に影響を与えられる
 -自律性(autonomy) 、自律性を持ってできる
 -フィードバック(feedback) 、成果を認識できる

-期待理論
外発性動機のような報酬制度と動機の関係を説明したもの
人の動機は、その人が事前に認知・予測する「期待」「誘意性」「手段性」の3つに影響をうける。
※誘意性とは:目標とする対象の魅力の度合い。
「誘意性×期待(確率)」が高い程、その人は行動へのコミットメントを高める

-ゴール設定理論
期待理論を前提にしながら、「ゴール・目標の設定」をモチベーションの基礎として加えたもの。
「人は自身の目的を実現するために働く意思を持つ」という仮定を置く。
そして人は目的(アスピレーション)が高いほど、それが実現した時の満足度は高くなる。と期待する。だから行動にコミットする。

-社会認知理論
自身の能力への自信があればあるほどモチベ高まる
 自己効力感の高い人は、実際の行動・努力の自己管理も徹底して行う
 逆境でも努力を持続できる
 (したがって)優れた効果を上げやすい
 フィードバック効果でさらに自己効力感が増す
自己効力感の高め方
-過去の自分の行動成果の認知
 要はフィードバック
-代理経
 自分と似た人物が業務を成功させると、自分もできるはずだと考える
 競争による相乗効果もこれ
-社会的説得
 君ならできる、といったポジティブな言葉を周囲からもらう
-生理的状態
 精神・生理的不安に陥ると、出来ないかもと思いがち
 経営学では、この視点をもとにストレスマネジメントの研究も進んでいるそうな


-プロソーシャル・モチベーション(PSM)
 -他人の視点に経ったときのモチベーション、他人に役立つことを面白い・楽しいと感じること
 -これからは 内発的動機 x PSM を高めることが大事

第20章 認知バイアスの理論
・人には認知の限界があり、情報すべてを収集できないし、留めた情報でもすべてを引き出せないという 認知バイアス が存在する
・個人の認知バイアス、特に認知的な評価プロセス( パフォーマンス・アプレイザル )
 -ハロー効果( halo effect ) 、何かに優れていると、他もすごいに違いないと思ってしまう
 -利用可能性バイアス( availability heuristics ) 、簡単に思いつきやすい情報を優先的に引き出して頼ってしまう。想起容易性、検索容易性、具体性
 -対応バイアス( correspondence bias ) 、当事者の人柄、資質のせいにしてしまう
 -代表性バイアス( representativeness heuristics ) 、確率を過大評価してしまう
・組織の認知バイアス
-社会アイデンティティ理論 、出身や所属についての認知バイアス
-社会分類理論 、組織の中で無意識に他者をグルーピングしてしまう、同じグループに好意的な印象を抱いてしまう( イングループ・バイアス )
認知バイアスの乗り越え方
-アテンション・ベースト・ビュー( Attension-Based View, ABV ) 、個人の認知バイアスを組織でカバーする
 人の認知的な注意・関心の理論。企業は「人の認知の集合体」という前提に立つ。
人は認知に限界がある。その前提を元に、「企業の意思決定・行動はその意思決定者の限りある認知アテンションを、企業内外のどの諸問題にどのくらい分配するか、そしてそれをどのくらい十分に解釈できるかに大きく影響される」という理論。
-マインドフルネスを高めることで、バイアスなく周囲を見通せるようになる

 

第21章 意思決定の理論
・期待効用理論
-期待値 を使って数学的にどっちがいいか計算する話
-リスクの取り方は主観による、 資産が増えればリスクは取らなくなる傾向
-投資家は分散投資、経営者は1社のみなのでリスク性向が異なる、エージェンシー問題にも関係してくる
認知バイアスのある範囲の話、 プロスペクト理論
-人はそれぞれ 主観的なリファレンス・ポイント を持つ、上回ったら利得、下回ったら損失
-人は 損失をより避けたがる 傾向にある
-人は大きな利得を得るほど効用の追加的な伸び幅が減少 し(上の資産が増えればリスク取らないと同じ)、 損をするほど追加的な損失に対して鈍感になる
-フレーミング効果 によって主観的なリファレンス・ポイントを変える
 利得を強調したフレーミング で選択肢を与えられた人は、 リスク回避的な意思決定 をしがち
 損失を強調したフレーミング で選択肢を与えられた人は、 リスク志向的な意思決定 をしがち

・近年の経営学では 直感 が重要視されている、時に直感で意思決定した方が望ましい結果が得られる
-不確実性が高まると、経験に裏打ちされた場合に限れば直感の方が望ましいケースもある
-素人のうちは論理的・客観的な思考が重要

直感の理論:二重過程理論
意思決定の過程は直観と、論理的思考で異なるスピード・メカニズムで起きている。
直感(早く、とっさに、自動的に。思考に負担をかけずに)
ヒューリスティック(直感と似た概念で「周囲の情報を多く精査せず数少ない情報のよりどころに頼って即座に意思決定する」こと)
論理的思考(時間をかけて、段階的に、思考を巡らせながら、意識的に)

 

第22章 感情の理論
・感情と認知は依存しあっている 、感情をマネジメントすることで認知に影響を及ぼせるし、その逆もある
経営学における感情の種類
-分離感情 、一般に感情と呼ばれ、一過性がある。短時間で収まりやすい。
 感情イベント理論
 *ポジティブな外部刺激からは嬉しいなどのポジティブな分離感情を抱きがち(ネガティブからはネガティブ)
 *ポジティブな外部刺激よりも、ネガティブな外部刺激の方が、心理的な影響度が強い( 感情の非対称性 )

-帰属感情 、心配性だとか怒りっぽいだとか、そういった個人に紐づいている比較的安定した感情のこと
 認知評価理論
 *認知評価は人の帰属感情に影響される、NA(ネガティブ感情)が強い人はネガティブな外部刺激に反応しやすく、PA(ポジティブ感情)が高い人はポジティブな外部刺激に反応しやすい
 *分離感情を何度も経験すると、その蓄積が帰属感情に反映される
 *(感情イベント理論より)ネガティブな刺激は影響度が強いので、結果的にNAが高まってしまう


-ムード 、チーム・職場に定着するもの、雰囲気に相当
 個人だけに属するものと異なるので、チーム・職場などに漂いがち
 帰属感情と同様に安定して定着する
 職場・チームで限定的になりがち
 感情伝播
  分離感情の体験は人の内面で起こるものの、外に向けて表現もする
  人の感情は周囲に伝達され、他の人の外部刺激となる
  ただし非言語表現である感情表現は、遠くまで伝播しない

・感情が人や組織に与える影響
-ポジティブ感情は、仕事への満足度を高めやすい
-ポジティブ感情は、モチベーションを高めやすい
-ポジティブ感情は、他者に協力的な態度をとることを促す
-ネガティブ感情は、満足度を下げるのでサーチを促す
-ポジティブ感情は知の探索を促す
-ネガティブ感情は知の深化を促す

・ポジティブ感情・ムードは知の探索を促す。多少の精緻さ、厳密さを欠いても、より大胆で新規性の高いアイデアを求めることを促す。
・ネガティブな感情・ムードは知の深化を促す。現状を正確にミスなく、修正・改善する意識を高めるため。

組織の成長ステージと感情の理論:
組織に求められる感情は成長ステージや組織が置かれた状況で大きく異なる可能性がある。
スタートアップはチャレンジし続けないと、淘汰される。知の探索が重要である。ネガティブ感情で満足度を引き下げる必要がない。
既に成熟した大企業は従業員が現状に満足してしまっており、そもそも「知の探索」が促されない。気持ちが緩んだ状態。

・感情をコントロールする理論
-感情ディスプレーは、感情の表現者が笑顔を作るなどのポジティブ表現をすることで、顧客の笑顔も増える。意図的な感情作りは心理的な負担を生じさせたり、鬱状態になったり、あるいは上辺だけの表現は見抜けちゃったりと懐疑的な主張もある
-感情労働理論は、ディープアクティング で 感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから、それに合わせて自然に感情表現することで心理負担を下げる

組織の成長ステージと感情の理論:
組織に求められる感情は成長ステージや組織が置かれた状況で大きく異なる可能性がある。
スタートアップはチャレンジし続けないと、淘汰される。知の探索が重要である。ネガティブ感情で満足度を引き下げる必要がない。
既に成熟した大企業は従業員が現状に満足してしまっており、そもそも「知の探索」が促されない。気持ちが緩んだ状態。

感情が組織に与える影響経路は複雑。逆に言えば、だからこそ、そのメカニズムを思考の軸として、理解しておく必要がある。
それは従業員・組織の行動に決定的な影響を与えうる。経営者・リーダーには組織の現状に合った、適切なバランスの感情マネジメントが求められる。

エモーショナル・インテリジェンス(EI)とは?:
感情をうまく取り扱える個人の総合能力のこと。
構成要素:
① 自身や他者の感情にきちんと注意を払えているか
② 特定の感情が認知にどのような影響を与えるかを把握できているか
③ 感情が時間とともに変化するなどの仕組みを理解できているか
④ 感情をうまく制御できるか

EIスコアの高い従業員が様々な側面でパフォーマンスが高いという結果は出ている。

感情労働の理論:
サーフェス・アクティングとは、自分の本心にギャップを持ったまま感情表現をすることを指す

ディープ・アクティングとは、人が何かの外部刺激に直面した時に、「まず自分の意識・注意・視点の方向を変化させることで、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから、それに合わせて自然に感情表現する」ことを指す。いわゆる「顧客の態度をどうとらえるかお認知的な視点をずらす」こと。

「感情マネジメントがビジネスの勝敗を決める時代」

 

第23章 センスメイキング理論
・センスメイキングは納得、腹落ち のこと、不確実性の高い世界において、 解釈の多義性を減らして足並みを揃える ためのもの

・求められることは「ストーリーテリング
「現状はどうなっているのか」「我々は何をすべきか」についておおまかな方向性だけを示し、それに意味を与え、説得性のある言葉で周囲に語りかけて納得してもらい、足並みをそろえる。

・センスメイキングの効果
「思い込み」による妄信の実現。
大まかな意思・方向性を持ち、それを信じて進むことで客観的に見れば、起きえないはずのことを起こす力が人にはある(セルフフルフィリングという)

・センスメイキングの循環プロセス3つ
-環境の感知( scanning )
 センスメイキングは、新しかったり、予期しなかったり、混乱的だったり、先行きが見通しにくい環境下で重要となる

-解釈・意味付け( interpretation )
 人の解釈によって、この世界は意味合いが多様になる、多義的になる
 大まかな方向性だけ示して、意味付けして、ストーリーとして語るの大事

 *リーダーは、多様な解釈の中から特定のものを選別する、方向性を示す
 *リーダーは、意味づけしてストーリーとして語る、ストーリー性を持たせる
 *正確性は重要じゃなく、納得性の方が大事

-行動・行為( enactment )
 環境に行動をもって働きかけることを イナクトメント( enactment )
 むしろ行動から始まる、行動して新しい情報を感知し、足並みを揃えていく
 

・センスメイキング理論で、冷静に考えたら不可能なことを、思い込みにより実現してしまうことを セルフ・フルフィリング という

・センスメイキングの7大要素
アイデンティティー(自身、あるいは組織が「何であるか」のアイデンティティに基づいてい)
② 回想・振り返り(人は物事を経験しているその瞬間にそれをセンスメイキングできず、事後的に振り返ることでのみセンスメイクできる)
③ 行為(人は行動することで環境に働きかけることができる)
④ 社会性(主体と周囲の人々を含む「客体」は常に切り離せないのでセンスメイキングは常に他者との関連性の中で起きる)
⑤ 継続性(センスメイキングは、繰り返される循環プロセスである)
⑥ 環境情報の部分的感知(人は認識のフィルターを通してしか事象が認識できないので、認識・解釈されたものは常に全体の一部でしかない)
⑦ 説得性・能率性(人は「正確性」ではなく、「説得性」を持って自身や他者をセンスメイクできる)

第24章 エンベッドネス理論
エンベデッドネスとは、「埋め込み・根付き」という意味。
「人は他者とのつながりのネットワークに埋め込まれており、その範囲内でビジネスを行い、したがってその関係性に影響を受ける」ということ。

実際のビジネスは『人と人の関係性のネットワーク』の範囲内でのみ成立する
埋め込まれたつながり(一定仲良くなった人)で、人は合理性よりもヒューリスティック
・直感の意思決定に頼る

・エコノミック・ソシオロジーによる「つながり」の3つのルール:
完全合理主義と、ヒエラルキーによる一方通行なつながりの対局を示す。

-アームス・レングス(よそよそしい)なつながり。一番浅い関係
-埋め込まれたつながり。そこそこつながった関係、 、合理性よりもヒューリスティックな部分
-ヒエラルキー上のつながり。一番強い関係、一方通行な関係

・エンベッドネス理論における埋め込まれたつながりの法則
-関係性の埋め込み 、一度つながった相手と繰り返しつながり、安定していく
-構造的な埋め込み 、その先でさらにつながっている他者とつながりやすい
-位置的な埋め込み 、より多くの人とつながっている人ほど情報面で有利
-埋め込まれたつながりでは、人は意思決定のスピードが早くなる
-埋め込まれたつながりは、アームス・レングスのつながりより『私的情報』を交換しやすい
・これからの時代は、企業の境界があいまいになってきている、企業の存在意義が薄れていく

エンベデッドネス理論において「埋め込まれたつながり」は、互いに心理的に近い状態にあるので、利己性が弱まっていく。
結果、ときに自身より相手の利得を優先したり、逆に相手にもそのような利他性を期待したりするようになる。
このような上記依存関係を「レシプロシティ」と呼ぶ。
また埋め込まれたつながりでは「合理性を得る精査」にかける時間が減るため人は意思決定のスピードが速くなる

 

新しい時代のつながり
・インターネット上のつながり
・超国家コミュニティ→シリコンバレーのような。アナリー サクセニアン「現代の二都物語

 

第25章 「弱いつながりの強さ」理論
・「弱いつながりの強さ」理論( Strength of Weak Ties, SWT
多様な幅広い情報を素早く効率的に遠くまで伝播させるのに、弱いつながりで形成されるソーシャルネットワークのが向いている
SWT 理論におけるブリッジ
2つの点をつなぐ唯一のルートがあるとき、それをブリッジと呼ぶ。それぞれが直接つながっている場合にブリッジとは呼ばず、間接的に他人を介してつながっているときに、それをブリッジと呼ぶ。
-交流の頻度、強いつながりにあれば、ともにいる時間も多くなる、結局つながってしまう
-心理的効果、親近感を持ちやすい
-類似性、両者は似たことに関心をがある可能性が高い

・希薄なネットワークほど、情報伝播の効率が良い

・弱いつながりがイノベーションを引き起こす
-イノベーションは既存の知と既存の知の新しい組み合わせで生まれる
-弱いつながりをたくさん持っているのが、いわゆるチャラチャラしてそうなフットワークの軽い人
-多くのイノベーターは、チャラ男・チャラ女である。

・大きな組織でイノベーションを実現まで持っていくためには、弱いつながりと強いつながりの両方が必要
-弱いつながりが知の探索であれば、強いつながりは知の深化に相当する

・スモールワールド現象、知り合いをつないでいくと6人くらいで誰とでもつながれる 、というのは、 SWT 理論で説明できる
-SNSによって弱いつながりを維持しやすくなった、世界はどんどん狭くなってきてる

第26章 ストラクチャル・ホール理論
・ストラクチャル・ホール
-ブリッジが複数つながりより多くのブリッジを生む結節点をストラクチャル・ホールという。
-そしてブリッジの橋渡し人をブローカーと呼ぶ。このブローカーは情報コントロールの優位性を持つ。
・ブローカレッジ
A <-> C と C <-> B がそれぞれつながっているとき、Cの立ち位置にいる人の方が、有利になる理由
-情報の優位性
 CはAとBの両者にアクセスできる、Cだけが最も効率的に情報を手に入れられる
-コントロールの優位性
 Cは仲介に立って何らか利益を得られる
 仲介として利益を得ることをブローカレッジ( brokerage )という
これを多人数に拡張したうえで、 高密度なネットワーク同士をつなぐような立ち位置にいる人、 クラスター同士のすき間がある状態のことを、ストラクチャル・ホール(SH)といい、SHが豊かな人ほどブローカレッジの効果により得をする 、とされています。

ソーシャルネットワークを自分視点で見たときの話、 ストラクチャル・ホール(SH)が豊かな人ほど得をする
人とのつながりにおいては単純に多くつながっていればいいというものではなく、その「つながり方の構造」が重要。より望ましいつながり方とは、ストラクチャル・ホールが豊かなつながり方。

-SH はある意味商売の基本、メーカーと小売りのクラスターを問屋が結節点としてつなぐ
・SH の重要なポイント2点
-どのようなプレーヤーとつながるかが大事 、クラスターの特性が異なっていた方が良い
-SH を維持するか or 埋めるかの選択も大事 (どちらが良いまでのコンセンサスはまだない)
バウンダリー・スパナー
企業と企業の境界を超えて、離れた別のクラスターの人々とつながること
① 同質内の知では創造性が生まれにくい
② 同質なプレーヤー間でブローカレッジを行うと、ネットワーク上の他プレーヤーとの関係が損なわれる可能性がある。

 

第27章 ソーシャルキャピタル理論
・人と人とのつながりで得られる便益すべてを総称してソーシャルキャピタル といい、金融資本、人的資本に続く第3の資本

ソーシャルキャピタル
-ブリッジング(bridging)型、これまで出てきた 弱いつながりの強さ、ストラクチャル・ホール理論 で出てきたようなネットワークで、 つながっていないプレーヤーを媒介することで得られる便益
-ボンディング(bonding)型、ブリッジング型とは真逆の 高密度に閉じたネットワーク で、 通常のビジネスでは取引できないようなモノがやりとりされ、参加者全員のメリットになる便益

・ボンディング(bonding)型のメリット
-信頼
信頼関係を醸成しやすい
自分の便益を相手に与えたら、相手もそのうち何か返してくれるだろうといった暗黙の期待
-ノーム (暗黙の行動規範)
我々はこのように振舞うべき、といった暗黙の規範
ルールがノームとして暗黙的にシェアされ、円滑に取引され、情報、知識、金などが蓄積していく
-相互監視と制裁
ボンディング型のソーシャルキャピタルは公共財の側面がある
ただ乗りを防ぐために相互監視し、行動がノームから外れているものを制裁する

・ブリッジング型とボンディング型の違い
-つながりの強さ
 ブリッジング型: 弱い
 ボンディング型: 強い
-ネットワーク構造
 ブリッジング型: Sparse (希薄) , Open
 ボンディング型: Dense (密な) , Closure
-メカニズム
 ブリッジング型: ブリッジ、ブローカレッジ
 ボンディング型: 信用、ノーム、相互監視と制裁
-便益
 ブリッジング型: 多様な情報・知が手に入る、など
 ボンディング型: 通常のビジネス取引ではできない取引が可能

・リアルな人々のつながりでは、ブリッジング型を目指す 動き、最初からブリッジング型が強い デジタルでは、ボンディング型を取り込む 動きがあり、 適切なバランスを見抜くことが重要

第28章 社会学ベースの制度理論
人は「合理性」よりも、「正当性」で行動する。
人・企業は「他社がやっているから」「社会的風潮だから」といった何となくの理由で行動することが実に多い。
※そしてマクロ視点で、人・組織・企業は同質化する

・制度理論
組織制度、社会制度、ビジネス慣習などのメカニズムの話 で、社会学ベースと経済学ベースがあるが、経営学で用いられるのは前者の社会学ベースの方

・人は埋め込まれたつながり(from エンベッドネス理論)において 合理性よりも正当性で行動する ことがある
-何が社会的に正当( レジティマシー )かは国、地域、業界で異なる
-レジティマシーが通用する範囲、常識の範囲のことを フィールド という

・アイソモーフィズムはフィールド内の企業が同質化していくプロセス のこと、ステージ1から3で同質化し、常識が形成される

・アイソモーフィズムを促す3種類の同質化プレッシャー、圧力
-強制的圧力 、政策や法律による圧力のこと
-模倣的圧力 、みんながやっているから自分も、という圧力
-規範的圧力 、先行事例があるとこうすべきという規範になってしまう圧力

・異なるフィールド同士では常識が異なるため、レディマシーの衝突が起きる、これを 制度の重複 と呼ぶ
-レディマシーの衝突にはどう対処すればいいか
 非市場戦略 で強制的圧力に働きかける、いわゆるロビー活動とか
 既存のフィールド上の制度を破壊する、 インスティチューショナル・アントレプレナー (変革プレーヤー)になる

第29章 資源依存理論
・資源依存理論( Resource Dependence Theory, RDT ) とは、 モノ、カネなどの資源(リソース)の依存関係が、相対的な力関係を生む 、企業・組織が持つパワーの話
パワーが弱い企業は思うような交渉ができない、これを 外部抑圧 と呼ぶ

・企業パワーの源泉
-材料・部品・技術などのリソース 、材料など外部から調達する類のもの、依存度が高くなれば依存先のパワーが増す
-金銭的リソース 、対価として金銭報酬をもらっていて、売り先が特定の顧客に限定される場合、その顧客のパワーが増す
-情報リソース 、情報を特定プレーヤーに依存すれば、依存先の相手のパワーは強まり、相対的に依存する側は弱くなる
-正当性リソース 、制度理論(第28章)における正当性もリソースとなりうる、スタートアップ企業などが大企業と取引すると、その名前を通じて社会的な正当性が得られるなど

・資源依存は双方向性がある
-B社は、A社からのみリチウムイオン電池を購入していれば、B社はA社への依存度が高い
-A社は、B社へのみリチウムイオン電池を供給していれば、A社はB社への依存度が高い
-両方向に依存度が高ければ(ミューチュアル・ディペンデンス、MD) M&A が多くなり、単方向にのみ依存度が高ければ(パワー・インバランス、PI)むしろ M&A がは少なくなる

・外部抑圧に対抗する戦術
-抑圧の低減
一番単純な手段、特定企業からの依存度を下げる
-抑圧の取り込み
外部抑圧となる相手を自分側に引き入れる
-抑圧の吸収
企業を買収

 

第30章 組織エコロジー理論
組織エコロジー理論とは、業界全体を社会システムとみなし、極めてマクロ的な視点をとる。個別企業内の細かな変化をそれほど重視しない。すなわち「一度生まれた企業はある程度その形が形成されると生涯その本質は大きく変化しない」と考える。
ビジネスにおいては、業界に多様な企業が生まれ、環境に適応できる個性を持った企業だけが生き残り、適応できない企業は淘汰されると考える。

・企業が変化できない理由
① 限定された合理性に基づくことで、人・組織は認知に限界があるので、環境が変化しても自身はそれに対応する大きな変化ができないから。
② 特定の商習慣・ビジネス手法・商品サービスなどを多くの人が使い始めると、根拠が弱くてもそれが社会で「正当・常識」とされ、全員がそれを使うようになる傾向のこと。一度社会になじんでしまった企業は、その仕事のやり方、組織体制、事業内容などが取引先投資先から正当とされてしまうので、なかなか変更できない。

組織エコロジーは総称で、大きく8つの派生分野に分かれている。
-企業の本質は変化しない、認知に限界があるし、制度理論の話から常識として広まってからなかなか変わるのは難しい
-自然選択、企業が変化するよりは、多様な企業があり、淘汰されることで生き残っていく
-超長期視点、長い目でその業界を見ていく

・派生分野
①密度依存理論 、業界全体の企業密度が企業の生き死にを決める
-業界の生態系ゾーン
 業界が生まれて(ゾーンA)
 レジティマシー(市民権)を得て成長(ゾーンB)
 業界の個体数が最大になり(ゾーンC)
 資源競争になり死亡率が急激に上がる(ゾーンD)
-レジティマシー効果 、ゾーンBで市民権を獲得し始めると、その業界内への参入が増えて企業の誕生率が上がり、市民権を得るがゆえに死亡率が下がる。レジティマシー獲得に必要なことは、再生産可能性と説明責任・透明性である。

-密度効果 、生態学で個体数が多くなればエサなどの資源が減るので、死亡率が増える、密度によって誕生率・死亡率が変わる

②年齢依存仮説 、若い企業ほど死にやすい、年を取るほどレジティマシー(社会的正当性、市民権)を得やすく生き残りやすい(という仮説)
一方で年老いた企業の方が環境変化に対応できず死ぬ、という長寿の重荷仮説もある、環境変化のスピード次第かも

③捕食範囲の理論 、ゼネラリスト、スペシャリストで分けたときに、ゼネラリストの競合度が高まるほどスペシャリスト企業の死亡率が下がる

④資源分割
⑤社会ムーブメント
⑥構造的イナーシアと組織変化
⑦組織の形状と個体群
⑧組織の多様性

・メガトレンドを持つの大事 、生態系の変化と同様に数十年単位で先を見据えて、これからレジティマシーが高まる事業領域に投資していく

 

第31章 エコロジーベースの進化理論
生態学から見た 進化理論 の話
-VSRS メカニズム
多様化( Variation )
生態学のベースとして、生まれたらもう基本的には変化はしないよ、という考え方がベースにある
選択( Selection )
自然環境にフィットするかどうかで生き死にが決まる、フィットしない種は淘汰されて、フィットしたものだけが生き残る
維持( Retention )
生存競争を勝ち抜き、子孫を残す
苦闘( Struggle )
やがて環境が変化し、以前からフィットしていた生物も対応できずに淘汰される
一方で突然変異により新しくフィットできる種が生き残り、代わって繁栄する


-企業の生き死にのマクロ視点だけではなく、ミクロ視点で 企業内の人材や情報などの様々なリソースが進化理論の対象 となる


・企業内の人材における進化の流れ、 VSRS のメカニズム
-創業当初
人材確保が容易でないため、様々な経験、知見、価値観を持った人材が寄せ集め状態
多様化( Variation )に相当
-人材選択
周辺社会からの正当性を得るために人材が選抜されていく
あるいは同じ特性を持った人で群れる、 ホモフィリー効果
選択( Selection )に相当


・企業の人材採用とホモフィリー効果について
-ホモフィリー効果とは 人はそもそも本質的に同じタイプの人を好み、同じ人とつながりやすい傾向にある ことをいう
-企業の初期段階では足並みを揃えるのに有効で、社会的正当性を獲得するには不可欠
-一方でそのまま放置すると、 同質な人が同質な人を選ぶというプロセスが繰り返され、極度に組織の同質化が進む 、 VRSR における苦闘の段階となる


・共進化とは
企業がほかの生態系のダイナミズムを取り込むことで、企業の生態系も進化しうる。

・企業は生まれた瞬間から硬直化が進むが、 共進化 を取り込むことで進化することが可能
企業に限らず業界と学界、国や都市レベルの交流でダイナミックな共進化が起きている

 

第32章 レッドクイーン理論
・レッドクイーン理論 とは、生存競争による共進化。
自身の進化は生き残りをかけ競争相手の進化も促す。互いに生き残りをかけて競っている限り、共進化の循環は永久に止まらないという理論。
そして企業はライバルとの競争が厳しいほど、自身を進化させること(経営で言うとサーチ)を怠らないので結果として生き延びやすくなる。

-鏡の国のアリスに出てきた赤の女王のせりふからきたもの、お互い相手より速く走ることで共進化を促す
-相手の業績が高まればこちらの業績が低くなり、結果としてこちらのサーチが促進され、相手の業績が低くなりこちらの業績が上がる、さらに結果として相手のサーチが促進される、の繰り返し

・競争を避けて独占の方に持っていくべきか、競争を促して共に進化すべきかは、周りの環境が進化を必要とするか?競合他社がいるかどうか?による
-進化しなくても問題ないケース(競合他社がいない)では、 SCP理論に基づいて、競争は避ければ避けるほど望ましい
-進化が必要なケース(競合他社がいる)では、 レッドクイーン理論に基づいて、サーチしながら競い合い、共に進化するのが望ましい

・レッドクイーン理論の落とし穴
切磋琢磨はガラパゴス化を生む。
激しい競争にさらされすぎると、やがて競争そのものが自己目的化してしまい、競合相手だけをベンチマークするようになる。結果として別の競争環境で生存できる力を失う。
当該領域で生き残れても、他領域に進出した時、あるいは大きな環境変化に見舞われた時、そこで生き残れなくなる。知の深化だけを進めてきた企業は認知の範囲が狭く、対応力が失われている。

・真の競合相手は自身のビジョン
あえて競合相手を見ないことこそ、いわゆるシュンペーター型の変化を目指すことこそ経営者に求められている。
※ただし、「競争環境」の変化しづらい産業・業界であれば切磋琢磨は重要となる。陥ってはいけないことは企業の目的が「競争」になってはならないこと。

 

第5部ビジネス事象と理論のマトリックス
ハーバード・ビジネススクールのアカデミック・ユニットのうち
本書の対象領域を以下に示す。
対称
 戦略( Strategy )
 組織構造(a Organizational Behavior )
 総合経営( General Management )
 アントレプレナーシップ( Entrepreneurial Management )
 交渉、組織、市場( Negotiation, Organizations & Markets )
 技術経営とオペレーション( Technology and Operations Management )
非対称
 会計学とマネジメント( Accounting and Management )
 ファイナンス( Finance )
 ビジネス、政治、世界経済( Business, Government and the International Economy )
 マーケティング( Marketing )

 

第33章 戦略とイノベーションと経営理論
・戦略(経営戦略) とは、外部環境の中で業績を向上させるための経営資源を使った、企業の行動・アクションのこと
-競争戦略 とは、 特定の事業ドメインで企業がライバルに勝つための行動を分析する分野 のこと
-企業戦略 とは、より高次な視点から、 そもそもどの事業ドメインで戦うか、複数市場で戦うかなどを探究する分野 のこと

・経営戦略のカテゴライズ
-戦略コンテンツ … 中身を考える
 市場戦略 … 市場戦略自体を考える
  競争戦略 … ライバルに勝ための行動
  企業戦略 … どの事業ドメインで戦うかなど
 非市場戦略 … 市場戦略の外側を考える、ロビー活動など
-戦略プランニング … プロセス自体を考える

・経営は3つのディシプリンがあってカオスなので、マトリックス(P.616)にまとめて、戦略の何を考えたいときにどの分野を見るべきかを整理して見ると便利

 

経済学ディシプリン

 

 

マクロ心理学ディシプリン

 

ミクロ心理学ディシプリン

社会学ディシプリン

 

・戦略とイノベーションは別ものと捉えられてきたが、 戦略とイノベーションが不可分 になってきている
-不確実性の高い世の中において、利益など過去の実績ベースの業績以上に、 どのような将来・未来を世界に対して生み出せるかという期待感ベース の考え方の方が大事
-つまりは認知心理学からの理論が大事になってくる、イノベーション理論(第12,13章など)やリーダーシップ理論(第18章)、センスメイキング理論(第23章)など

・相反する理論(経済学、認知心理学)を高次に内包
独占し利益を出すのも大事、 経済学ディシプリンと心理学ディシプリンのサイクルを内部で循環させる企業 が、今グローバルで強い。
-IO (Industrial Organization) 型
*独占に近づければ超過利潤が得られる環境
*SCP理論に基づく戦略が向いている
-シュンペーター
*見通しが難しい、不確実性が高い環境
*イノベーションに基づく戦略が向いている

第34章 組織行動・人事と経営理論
・組織行動( Organizational Behavior, OB ) と 人的資源管理(Human Resource Management, HRM

・階層1:個人レベルの経営戦略
企業を構成する最小単位は「人」である
① 評価
② 仕事への満足度
③ 採用
④ 研修
⑤ 仕事へのストレス

・ビッグ・ファイブ
人の性格を大くくりに分ける信頼性が高い基準として、学者のコンセンサスとなっている。
ビッグ・ファイブの個人の正確・個性が行動に及ぼす影響:
外向性(積極的、行動的、話し好き、陽気、活動的、楽観的)
神経症(物事をネガティブに捉えやすい特性の総称。恐れ、悲しみ、積みの意識、怒り)
開放性(様々な視点、知見、経験などを受け入れやすい人の特性の総称。好奇心と感受性が強い)
同調性(協力的で信頼性が高く、紳士的で他者にやさしい)
誠実性(自分の行動に対してきちんとした方向性を持ち、それに向けて懸命に働く特性の総称。伸長で、思慮深く、自己抑制が効いている)

・階層2:チームレベルの経営戦略
① チームワークの醸成
② パワーとポリティックス(社内政治)
③ 交渉と摩擦(感情の理論、認知バイアスの理論、意思決定の理論)

・階層3:組織レベル
組織文化
組織変化


・今後の OB&HRM の分野、特に HRM の分野は、ミクロ心理学だけに留まらない話が増えていくはず
HRM と戦略の融合が進む 、また前章で戦略とイノベーションの融合が進むがゆえに、 HRMイノベーションが融合する ことにもつながる

第35章 企業ガバナンスと経営理論
・企業ガバナンス は国、地域などによって異なるし、時代によっても変化する、 ステークホルダー(関係者)に対してその権利とリターンを保証するための仕組み と定義されている
これを本章では 従来型の企業ガバナンス理論 としたうえで、それに対しては エージェンシー理論 が活用できる

ステークホルダーが多様化 していて、極度な株主中心主義ではなく、株主以外のステークホルダーが考慮されてきている
-これを本章では 新しい企業ガバナンス理論 として、社会学の視点での理論が活用できる

・企業ガバナンスを考えることは、 人はそもそもどういう動機で仕事をするのか? を掘り下げることにもつながる
-スチュワードシップ理論 、人は責任感によって行動するという、エージェンシー理論とはある意味対極に当たる理論
-エージェンシー理論 における取締役会のあり方
独立した社外取締役を招いてしまうという方法
社外取締役は、経営陣ではなく株主を代表するので、目的の不一致を解消し、情報の非対称性を解消するかも
-スチュワードシップ理論 における取締役会のあり方
内部の人材を取締役に多く抜擢する方法
独立社外取締役は外部の人間なので、会社をよくしようとする『責任感』が弱い
スタートアップ企業の方が、一般的に一体感、達成感、情熱、責任感などに満ちているはず

-人は多様な考えを同時に持つ生き物なので、合理性と責任感が常に入り交じる、状況に応じて 最適なガバナンスを自分で考える

・スチュワードシップ理論
経済学が前提とする「人は自己利益のために合理的に意思決定する」という前提とは異なる「人についての前提」として、金銭目的ではない「達成感」「承認欲求」「優れた実績を上げることへの本能的な満足感」「目上の者への敬意」「職業倫理」のモチベーションを強く前提とする。
エージェンシー理論と全く異なる示唆が得られる。
なぜならこの前提に立てば、「人は自分の所属する企業のために、与えられた職責を全うする」という帰結になる。
特にスタートアップ企業や同族企業ではスチュワードシップ理論が当てはまりやすい。

 

第36章 グローバル経営と経営理論
・グローバル経営と国内経営に本質的なメカニズムの差はない 、既存の理論(の組み合わせ)で説明可能
・一方で進出のタイミング、進出する国・地域、進出形態については理論的な視点が2つある
-OLI (Ownership, Location, Internalization) パラダイム
企業が海外に進出して法人を設立するには、強みの所有(技術力、ブランド、ノウハウ、経営手法等、企業が持つ固有の強み)、進出国(その強みを活かせる進出国を選ぶべき)、内部化(輸出やライセンシングなど市場ベースの取引ではなく、あえて法人設立するための理由が必要)の三つの優位性を基準に判断すべき。
BTF理論が基盤になっている。
-ウプサラ・モデル
海外進出企業の学習の方向性は2つある。
① 自国と文化・制度・距離等が近い国から進出
② リスクの小さい形態での進出
認知に限界がある企業が、自国から文化的・制度的に離れた企業に進出するのはリスクが大きい。
自国と文化・制度・距離等が近い国から進出し、そこで経験を積んで学習し、徐々にサーチの範囲を広げ、「遠い」国への進出を進めるというもの。
そして認知に限界のある企業が、慣れない外国でのビジネスに最初から多額の資金を投下するのはリスクが大きい。そこで企業はまず輸出・フランチャイズなどリスクの小さい形態で海外ビジネスを始め市場の状況や商習慣を学習したうえで、徐々にサーチの範囲を広げ、やがて学習が進んだら現地法人による現地拠点・製造拠点の設立などを行うという考え方。

・リバースイノベーション
先進国に本拠を置く多国籍企業が、(技術的に劣るとみなされていた)新興国イノベーションを本国に持ち込むこと。

・ビジネスにとって本質的に重要なのは、 国境を越える越えないではなく、ビジネス環境に違いがあるかどうか に尽きる
-国境を越える x ビジネス環境の違いが大きい(第1象限)
グローバル経営が暗黙的に仮定していた範囲
-国境を越える x ビジネス環境の違いが小さい(第2象限)
(あんまり重視されなかったところ)
-国境を越えない x ビジネス環境の違いが大きい(第3象限)
(あんまり重視されなかったところ)
-国境を越えない x ビジネス環境の違いが小さい(第4象限)
国内経営の範囲の話

・今後
国境に縛られないスタートアップ企業の台頭
制度の違いのさらなる顕在化
多国籍企業の立地戦略の見直し
国境の越える人的ネットワーク・コミュニティの台頭
スパイキー・グローバリゼーションの顕在化

スパイキー・グローバリゼーションの顕在化とは、
インターネットが普及した時代だからこそ、ビジネスで勝負を決めるのは都市の企業家コミュニティに入り込んで得られる暗黙知だったり、インフォーマル情報だったりする。

例えばシリコンバレーと中国のシンセンのように、都市と都市の間で集中して起きるグローバル化を、 スパイキー・グローバリゼーション と呼ぶ。

 

第37章 アントレプレナーシップと経営理論
アントレプレナーとは、新結合(既存知と既存知の新しい組み合わせ)を実行する人 、つまりはイノベーションを起こす人のこと

・未来のアントレプレナーシップの領域
-インターナショナル・アントレプレナーシップ(国際アントレ)
急速に多国籍化する企業が増えている、取引のコストが下がっている
英語が話せてコードが書けるグローバルタレントは、世界中で採用できる(わかる)
-ソーシャル・アントレプレナーシップ(社会アントレ)
社会的・公共的な目的を優先して設立されたスタートアップ企業
元々は NPO が占有していた領域
-インスティチューショナル・アントレプレナーシップ(制度アントレ)
制度改革を、国ではなく企業が率先して行う
社会学ベースの制度理論(第28章)で出てきたように、常識を破壊し、塗り替える
-イントラプレナーシップ(大企業アントレ)
大企業内で起業家のように振舞う人材を増やしたりする
大企業にイノベーションと創造的破壊が求められているため

・事業機会
-事業発見型 、起業家と事業機会は独立した存在なので、事業機会が生まれた後、起業家はそれを発見する
-事業創造型 、起業家が行動を起こすことで事業機会がつくられ、後になって認知される
発見型は伝えることが容易だが、創造型は暗黙知が多く感じてもらうことが重要 、これからは 発見型に加えて創造型が求められる

・どちらの立場をとるかによって、起業家をどう育てられるのかの示唆が全く異なる。
発見型:大事なのは周囲のビジネス環境を精緻に分析すること。
創造型:様々な試行錯誤・行動を繰り返し、事業機会が事後的に、徐々に浮かび上がってくるという立場。

第38章 企業組織のあり方と経営理論
・企業のあり方を規定する5(4+1)つのドライビングフォース
-効率性(取引費用論が中心) 、取引費用理論(第7章)における内製か外注かの議論、効率性を求める
-コンピタンス(RBV、ダイナミックケイパビリティ、リアル・オプション) 、企業が持つ固有の強みのこと
-パワーSCP理論、資源依存理論) 、独占に近づけたり、相手の自社への依存度を高めたりすること
-アイデンティティ認知心理学ディシプリンの理論、制度理論) 、アイデンティティを確立して求心力を高める
-ネットワーク (ソーシャルネットワークの理論が中心)、企業は人のネットワークの集合体で、企業の境界線がぼやけていく

・時代とともに変化するあるべき組織の姿は、 未来の組織の理念型であるティール組織の話と一致する

ティール組織の理解:時代とともに変化する「あるべき組織の姿」
① 衝動型組織(レッド)
② 達成型組織(オレンジ)
③ 多元型組織(グリーン)
④ 進化型組織(ティール)

-中世: パワーの時代、レッド組織
中世などで税を取り軍役を課す代わりに、そのパワーで市民の安全を守る
-産業革命以後: 効率性の時代、オレンジ組織
株式会社の制度が普及し、有限責任でダウンサイド(下振れ)しても責任が限られる反面、 アップサイド(上振れ)で企業が成功すれば利益がたくさん得られる、みたいなところで、 効率性を重視して経済的な飛躍をしていった
-21世紀: 認知・アイデンティティとネットワーク中心性の時代、グリーン組織
不確実性が高まっていて、どの企業もイノベーティブになって新しいものを生み出さないと生き残れないので、 「認知・アイデンティティ」と「ネットワーク」が大事になってきてる
-これからの未来: 中心のないネットワークの時代、ティール組織
いまよりもさらに組織を超えた人の流動が進み、ネットワークから中心がなくなっていく よ、 人が自律分散的に動く組織になる

これからは企業の永続性を前提としない組織、プロジェクトもありうる

第39章 ビジネスと経営理論
・「現代の経営理論はビジネスを説明できない」
当章以前のビジネスプランニングにおいて、計画派(PDCA)と、行動派の説明をしきれる経営理論が存在していない。
現代経営学における大前提として、「世界の経営学において、ビジネスモデルの研究はほぼ確立されていない」という事実。
理由としてはビジネスモデルという定義が曖昧であり、ビジネスモデルを定義するための4つの要素が、それぞれ、異なるディプリンからの経営理論を用いられている。そもそも理論が重なり合って複雑になることは「完結に本質のメカニズムだけを切り取る」ということができない。
それぞれの細かいメカニズムは既存の理論で多くが説明可能だが、「ビジネスモデルの全体像」を説明する理論は、現時点でこの世に存在しない。
① 効率性(取引費用理論:情報の経済学)
② 補完性(RBVが該当)
③ 囲い込み(SCP理論)
④ 新奇性(ソーシャルネットワーク諸理論)

・世界共通のビジネスの目的のコンセンサスはない:
現代社会におけるビジネスの目的は何?この根限定な問いに、我々は世界共通のコンセンサスを持っていない。一方でポイントは現代のビジネスにでは必ずしも我々が経済的な収益を上げるだけが目的ではない。

ビジネスで生み出すべき「価値(コレクティブバリュー)」は何か?:

直近の潮流はウェル・ビーイング
精神的・社会的に良好な状態。「我々一人ひとりがよりよく生きる」こと、そしてそれが「幸せである」こと。2016年の世界最大の経営学会であるアカデミー・オブ・マネジメントでのテーマがまさにウェル・ビーイング
近年多くの経営者が、「ビジネスの目的は社会の様々な人々は従業員、ステークホルダーの幸せを追求すること」だと主張し始めている。

 

第40章 経営理論の組み立て方
「ロジックの賢人ほど「人とは何か」を突き詰める」とは、どういうことか?
WHYを突き詰めていくと、最終的には、「人はそもそも、どう物事を考えるものなのか?」という問いに必ず行き当たる。これは社会科学の「心理法則のようなもの」全てにいえること。
複雑で怪奇な人間の思考を、「そもそもこういうものだ」と一元化することは、極度に難しい。
だからこそ、世界の経営学では「そもそも人間とはこういうものだ」ということについて確立された前提を持つ、他分野の理論を借りている。
経済学、人は合理的である
心理学、人の認知には限界がある
社会学、人は限られた条件(埋め込まれたつながり)において合理的ではない

第41章 世界標準の実証分析
経営学のメジャーな実証分析手法
統計分析: アーカイバルデータを分析
統計分析: 質問表調査(アンケート調査)のデータを分析
統計分析: 心理実験のデータを分析
統計分析: メタ・アナリシス
シミュレーション
事例分析(ケーススタディ
・実証分析の未来
機械学習
デジタル・フットプリント
身体データ
フィールド実験
神経科

■各ディシプリンの推薦図書の例:
経済学:
・マンキュー経済学
ミクロ経済学の力
・組織の経済学
心理学:
・ファスト&スロー
・知ってるつもりー無知の科学
・予想通りに不合理
社会学
・信頼の構造
・つながり、社会的ネットワークの驚くべき力
・新ネットワークの思考

一流の経営者に唯一共通していること:
「常に考え続けている」ことだ。考え続けるには、何か思考のよりどころ(=軸)が必要だ。軸が無い中でやみくもに考えてもそれは羅針盤の無い中で航海する船のようなもので、思考はクリアにならない。

フレームワークではなく経営理論を:
この複雑で変化が激しく、答えが無いかもしれない世界で、意思決定だけはしなくてはならないことだ。何が正解かはわからなくても、ビジネスパーソンは意思決定をして前進しなければならない。
正解のないビジネスにおいて、無理やり当てはめてしまう経営のフレームワークは思考を停止させがちだ。
経営理論はWHY一つの道筋を与えるもの。理論は決して正解ではない。
なぜ企業はそのような行動をとるのか、なぜ組織はそのようになるのかのWHYに、一つの道筋を与え、思考をクリアにする。クリアになった思考はその軸を端緒にしてさらに飛躍する。軸があるからこそ、そこを出発点として新たな考えも生み出せる。
新たな考えはビジネスの未来を切り開く一助になる。

 

 

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ビジネス現象と理論のマトリックス

https://aty800.com/highest-goal/books/management-theories.html

 

世界標準の経営理論を読んだ感想&自分用のインデックスメモ - ばうあーろぐ

https://girigiribauer.com/biz/20200330/

 

note.com

 

経営理論とフレームワークは5つのタイプに分けられる

https://diamond.jp/articles/-/223383


経営理論とフレームワークの5類型
タイプ①

まず、「経営理論とは関連のないフレームワーク」がある。SWOTやBCGマトリックスが代表例だ。これらはコンサルタント等が、その実務経験を通じて生み出したものが大部分だ。これらの多くは分類・整理をしているだけなので、whyには応えない。

タイプ②

「経営理論から落とし込まれたフレームワーク」である。SCP理論から落とし込まれたファイブ・フォースやジェネリック戦略がその代表例だ。このタイプの問題は、フレームワークだけ提示されても、背景の理論がないと「なぜそう言えるのか」のwhyの納得感が弱いことだ。

タイプ③

タイプ2との対応で、「フレームワークのもとになっている経営理論」がある。SCPがその代表であり、RBVやリアル・オプション理論なども一部フレームワーク化が試みられている。これらを知ればwhyがわかるので、タイプ2のフレームワークの意義も理解できる。しかし問題は、必ずしもMBAの教科書ではタイプ3に説明が割かれないことだ。加えて、先にも述べたように、そもそもフレームワークまで落とし込まれた理論の数は著しく少ない。

タイプ④

実は、フレームワークに落とし込まれていないが、MBAの教科書で断片的に、一部の経営理論が紹介されることもある。例えば「取引費用理論」は垂直統合戦略を説明する時に重要な理論であり、MBAの教科書で紹介されることもある。これらはwhyに応えるものだ。ただし問題は、本文で述べたように多くの教科書は「現象ドリブン」なので、理論の説明は非常に浅くなりがちなことだ。したがって理論への納得感がないままになる。

タイプ⑤

そして実は、経営学者の間では「学術的に確立された理論」とされているにもかかわらず、フレームワークに落とし込まれず、MBAの教科書やビジネス本で紹介されることのないままの理論が、この世にとても多く存在するのだ。これらはwhyに応えるが、ビジネスパーソンの目に触れることがこれまでほぼなかった(本書では、その主要なものをほぼすべて紹介する)。

このうち一般のビジネス本で紹介されるのは、タイプ1がほとんどだろう。しかし、これは経営学の対象範囲ではない。加えて厄介なのは、MBAで使われる経営学(例えば経営戦略論)の教科書では、タイプ2とタイプ4だけを中心に、しかも両方を混在して紹介していることだ。

 

第1部 経済学ディシプリンの経営理論

第1章 SCP理論

 「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か
第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク

 ポーターのフレームワークを覚えるよりも大切なこと
第3章 リソース・ベースト・ビュー(RBV)

 バーニーの理論をようやく使えるものにしたのは誰か
第4章 SCP対RBV、および競争の型

 ポーター vs. バーニー論争に決着はついている
第5章 情報の経済学①

 「悪貨が良貨を駆逐する」のはビジネスの本質である
第6章 情報の経済学②(エージェンシー理論)

 人が合理的だからこそ、組織の問題は起きる
第7章 取引費用理論(TCE)

 100年前も現在も、企業のあり方は「取引コスト」で決まる
第8章 ゲーム理論 ①

 この世のかなりの部分はゲーム理論で説明できる
第9章 ゲーム理論 ②

 我々は人を「無償」で信じるか、それとも「合理的な計算」で信じるか
第10章 リアル・オプション理論

 不確実性を恐れない状況は、みずからの手でつくり出せる

第2部 マクロ心理学ディシプリンの経営理論

第11章 カーネギー学派の企業行動理論(BTF

 経営理論は名経営者の教訓を裏付ける
  column アッパーエシュロン理論
第12章 知の探索・知の深化の理論①

 「両利き」を目指すことこそ、経営の本質である
第13章 知の探索・知の深化の理論②

 「両利き」は戦略、組織、人材、経営者のすべてにおいて求められる
  column その他のレベルの「両利き」の研究
第14章 組織の記憶の理論

 日本企業が「組織の記憶力」を取り戻す術は何か
第15章 組織の知識創造理論(SECIモデル)

 これからの時代こそ、「野中理論」が圧倒的に必要になる
  column ナレッジ・ベースト・ビュー
第16章 認知心理学ベースの進化理論

 組織の成長は「進化するルーティン」で決まる
第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論

 企業が変わる力は組織に宿るのか、個人に宿るのか

第3部 ミクロ心理学ディシプリンの経営理論

第18章 リーダーシップの理論

 半世紀を超える研究が行き着いた「リーダーシップの境地」
  column その他のリーダーシップ視点
第19章 モチベーションの理論

 半世紀を超えてたどり着いた新時代のモチベーションとは
第20章 認知バイアスの理論

 認知の歪みは、組織で乗り越える
  column マインドフルネス
第21章 意思決定の理論

 意思決定の未来は、「直感」にある
第22章 感情の理論

 感情のメカニズムを理解してこそ、組織は動き出す
第23章 センスメイキング理論

 「未来はつくり出せる」は、けっして妄信ではない

第4部 社会学ディシプリンの経営理論

第24章 エンベデッドネス理論

 ソーシャルネットワークの本質はいまも昔も変わらない
第25章 「弱いつながりの強さ」理論

 弱いつながりこそが、革新を引き起こす
第26章 ストラクチャル・ホール理論

 「越境人材」が世界を変える、そのメカニズムとは
第27章 ソーシャルキャピタル理論

 リアルとデジタルのネットワークで働く、真逆の力
第28章 社会学ベースの制度理論

 「常識という幻想」に従うか、活用するか、それとも塗り替えるか
第29章 資源依存理論

 小企業が大企業を抑え、飛躍する「パワー」のメカニズム
  column 産業連関表
第30章 組織エコロジー理論

 変化の時代にこそ不可欠な「超長期」の時間軸
第31章 エコロジーベースの進化理論

 生態系の相互作用が、企業進化を加速する
第32章 レッドクイーン理論

 競争が激化する世界で、競争すべきは競争相手ではない

第5部 ビジネス現象と理論のマトリックス

第33章 戦略とイノベーションと経営理論

 近未来に戦略とイノベーションは融合し、理論も重層化する
第34章 組織行動・人事と経営理論

 これから人事がさらに面白くなる、5つの背景
第35章 企業ガバナンスと経営理論

 あるべきガバナンスを考え抜く時代に、必要な理論は何か
  column 企業倫理と経営理論
第36章 グローバル経営と経営理論

 「国境」の本質を見直すことが、グローバル経営の未来を映し出す
第37章 アントレプレナーシップと経営理論

 アントレ領域が拡張する未来に、起業家をどう育てるべきか
  column 起業家の個性・特性に関する実証研究
第38章 企業組織のあり方と経営理論

 「5つのドライビングフォース」が示す、未来の企業組織の姿
第39章 ビジネスと経営理論

 現代の経営理論はビジネスを説明できない

第6部 経営理論の組み立て方・実証の仕方

第40章 経営理論の組み立て方

 ロジックの賢人ほど、「人とは何か」を突き詰める
  column さらに知っておくべき理論構築のチェックポイント
第41章 世界標準の実証分析

ビジネスの実証分析は想像以上に身近で、とてつもなく深い
終章 経営理論のさらなる視座

 経営理論こそが、あなたの思考を解放する