以前、facebookに"Slow Food, Slow Living, and Slow Architecture."と書いたように、ロールスロイスのような低速トルクもありだと思っている。
反アジャイル(加速文化)、反ポジティブシンキング。
自己啓発書に飽きた人は、『「発言よりも行動」のストア主義を』という「自己啓発書」。つまり、逆張りマーケティング。
「すべての答えは自分の中にあるので、人生の方向性を見つけ、その努力の成功を自分流に数値化できる人」はいないから現実を見ようストアストア派哲学の入門書
→自制心、心の平穏、尊厳、義務感、人生の有限性
・現代ではポジティブ思考が推奨されるが、ストア派ではネガティブ思考(自分が所有しているものを失ったらどうなるか)を推奨する。
・現代では常にチャンスのことを考えろと言われるが、ストア派では自分の限界を知って祝福しろと言われる。
・現代では感じるままに生きることを期待されるが、ストア派は自制心と感情の抑圧を教える。
・現代では死がタブー視されているが、ストア派では日々己の死を想い、今生きている命に感謝する気持ちを育むことを推奨する。
現代人はウェルネス症候群
内省の時間を減らし、コーチや自己啓発の達人を解雇し、自己啓発書を捨てて代わりに小説を読み、未来ではなく過去に思いをはせる。
地に足をつけて生きるための7つのステップ
(七つのステップを信用するなかれ)
①己の内面を見つめたりするな→自分探しをやめる、直観に頼らない。
加速文化では安定性より機動性
自分らしくあること自体には価値もない。それよりも、自分が関わる人々に対する義務を果たすことの中にこそ価値が内在する。義務を果たす上で自分らしくあるかどうかには意味がない。
自分の内面ばかり見つめないためには、「やりたくないことをやる」。
自分の気持ちや感覚とは関係なく、やるべきだという理由のあることを実行に移す。これには以下の優れた効果がある。
・将来訪れるかもしれない試練に立ち向かう力を養うことができる
・不愉快なことを小規模で体験しておけば、将来の不安への恐れを減らすことができる
・所有しているもののありがたみを知ることができる
②人生のネガティブにフォーカスしろ
誰もが死を思うべきであり、それはひとえに人生をよく生きるがため。
・自由に考え、自由に語ることができるようになる。
・問題に向き合うようになる。
・今まさに生きている自分の命をもっとありがたく感じることができる。
人は弱く、病に倒れ、やがて死ぬ。死を「なんとかする」ことなどできない。しかし人生は死ぬまで続いていく。つまり問題があったら受け入れて生きていくのだ。ネガティブ面に向き合う勇気を持つことだ。
人生のネガティブ面をもっと認められるようになるためのネガティブ・ビジュアリゼーション→常に愚痴を言う(愚痴れ:クベッチ)。
・大切な何かや誰かを失うことを考え、それがいかに今の喜びを増すかに気づく
・自分がいずれ死ぬという事実を考える。この事実を毎日考えることで、生きることのありがたみが増す
③きっぱりと断れ
その価値が脅かされるなら、きっぱりノーと断れる人間は、個人の人格(誠実さ)を持っている。誠実さとは、世間の流行などに流されず、自分自身にとって何よりも大切な考えに忠実に生きることを意味している。ノーという習慣をもっと身につけることが、自分の足で立ち、人生に忠実であることにつながる。
疑念自体に立脚すること、つまり、ためらう権利、考え直す権利を肯定することである。
ストア派の推奨は、自分自身の理性に訴えることである。
「考えさせてください」という。
④感情は押し殺せ
加速文化は感情文化。
ストア派の目標は、ネガティブなことに目を向けながら怒らず、それを人生の一面として受け入れるか、実際にできることがあればポジティブな変化をもたらそうとする能力。
投影的ビジュアリゼーション
心の平静を乱し、地に足をつけた行動を妨げる感情は、抑制することを学ばなくてはならない。地に足をつけるためには簡単に歩調を乱されないことが肝要だ。
⑤コーチ(セラピー化)をクビにしろ→コーチと友達になれ
コーチングは「自分の中に答えがある」というが、それは幻想だ。
コーチングのコンセプトは、方向性や内容にかかわらず、常に成長と変化を続けることにある。コーチは発展性・積極性・成功を(高僧のように)説教する。これはストア派が「地に足をつけることで得られる心の平穏」を礼賛するのと対照的だ。コーチングの危険性は、立ち止まっていることが許されないということである。
⑥小説を読め→自己啓発書や伝記を読むな
小説を読むことで、逆境を受け入れる力を身に着けることができる。
自己啓発書や自叙伝は、人生における最も重要なものとして自己を賛美するものだが、それが誠実さや道徳価値の点からバランスのとれた自己であることは滅多にない。こうした自己を知り、自己を育みさえすれば、人生は自分でコントロールできるという考えを強化する自己中心文献への依存を断ち切ることだ。
⑦過去にこだわれ
加速文化は現在と未来に夢中になって、過去については見向きしない。
自分の過去を知り、それに思いを馳せることは、比較的安定したアイデンティティを維持するための必須条件であり、それは他者との道徳的な関係にもつながる。自分を文化的・歴史的な存在として理解するには過去にこだわらなければならない。そうすることで初めて自分のよって立つところを見つけることができる。
U理論のプレゼンシング
今起きていることに注意を向ける。
マインドフルネスの概念を組織の革新に当てはめたもの
加速文化の理想は、すべての答えは自分の中にあるので、人生の方向性を見つけ、その努力の成功を自分流に数値化できる人
目次
日本の読者の皆さんへ
イントロダクション 生き急ぐ人々
第1章 己の内面を見つめたりするな
第2章 人生のネガティブにフォーカスしろ
第3章 きっぱりと断れ
第4章 感情は押し殺せ
第5章 コーチをクビにしろ
第6章 小説を読め ―― 自己啓発書や伝記を読むな
第7章 過去にこだわれ
結論 加速文化におけるストア主義
付録 ストア派思想
訳者あとがき