近代社会では経済、社会構造、文化という三つの領域から加速推進力が生成し、それらが相互に強化し合いながら、自己駆動的な加速プロセスが発生する。この加速プロセスは、やがて臨界点を超え、近代社会の基本構造(個人主義や民主主義)自体を掘り崩していく。そして「超高速静止」、すなわち「本質的なものは何も変わらないにもかかわらず、そのままの状態に止まるものは何もない」というパラドクスが出現する。
近代社会は自らの「制度の現状が維持されている状態」を保つために、経済成長、技術および社会の加速、文化的革新、政治の活性化を、システムとして絶え間なく実現していかねばならない。
近代社会は、自己を再生産しその構造も維持するために、絶え間ない上昇・増大を必要としている。
共鳴
①触発
②自己効力感
③変容
④意のままにならないもの(unverfugbar)
加速循環
①技術的加速
②社会変動の加速
③生活店舗の加速
④①に戻る
加速推進力
①経済の領域から生じる「時間エコノミー」
②加速の文化的約束
③マクロ=メゾレベルで起こる「機能分化」とそれに伴う「複雑性の時間化」
「時間診断」としての社会学
「後期近代」という同時代認識
「批判理論」としての加速理論
目次
日本語版への序文――動的安定化、そして加速社会という危機
序言に代えて
第1章 序 論
1 社会の時間構造
2 現代に関する二つの時代=時間診断
3 社会的加速の理論のための予備的考察
第Ⅰ部 社会的加速に関する体系的理論における概念的基本構想
第2章 運動への愛から加速の法則へ――近代の観察
1 加速と近代の文化
2 近代化、加速、社会理論
第3章 社会的加速とは何か?
1 予備的考察――加速と生活テンポの上昇
2 社会的加速の三つの次元
3 慣性の五つのカテゴリー
4 近代における運動と慣性の間の関係について
第Ⅱ部 作動様式と現象形態――社会的加速の現象学
第4章 技術的加速と空間・時間秩序の革命
第5章 地滑りを起こしている急斜面――社会変動の加速と偶発性の増大
第6章 「生活のテンポ」の加速と時間経験のパラドクス
1 客観的変数――行為の速度の上昇
2 主観的変数――時間の逼迫と疾走する時間の経験
3 時間構造および自己関係
第Ⅲ部 さまざまな原因
第7章 自己駆動プロセスとしての社会的加速――加速循環
第8章 加速と成長――社会的加速の外的な駆動力
1 時は金なり――経済的推進力
2 加速の約束――文化的推進力
3 複雑性の時間化――社会構造的推進力
第9章 権力、戦争、速度――加速装置の制度的鍵としての国家と軍隊
第Ⅳ部 さまざまな結果
第10章 加速、グローバル化、ポストモダン
第11章 状況的アイデンティティ、あるいは漂流者とゲームプレイヤーについて
1 近代における自己の動態化
2 人生の時間化について――アプリオリに実質を与えられたアイデンティティからアポステリオリだが安定したアイデンティティへ
3 時間の時間化、すなわち時間的に安定的なアイデンティティから状況的アイデンティティへ
第12章 状況的政治――脱同期と脱統合の間のパラドキシカルな時間地平
1 政治のなかの時間と時間のなかの政治
2 近代における歴史の時間化
3 時間地平のパラドクス――後期近代における歴史の脱時間化
第13章 加速と硬直――近代を新しく規定する試み
第14章 むすび――超高速静止? 歴史の終焉
訳者解説
[原題]Beschleunigung: Die Veränderung der Zeitstrukturen in der Moderne