学生の時に読みたかった。こんな講義があったなら聞きたかった。
「プロテスタンティズムの倫理が資本主義の精神を生み出したと言っているけれども、その説明は、うまくいっているのかどうか。私の考えでは、『プロ倫』理解の通説は誤りである。プロテスタンティズムの「倫理」とプロテスタンティズムの「天職倫理」のあいだには、断絶がある。」
あれだけのページ数をたったこれだけにまとめてくれた。
「フランクリンの十三徳」が資本主義の精神を体現している。
節制 頭や体が鈍くなるほど食べないこと。はめをはずすほどお酒を飲まないこと。
沈黙 他人あるいは自分に利益にならないことは話さないこと。よけいな無駄話はしないこと。
規律 自分の持ち物はすべて置き場所を決めておくこと。仕事は、それぞれ時間を決めて行うこと。
決断 なすべきことをやろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること。
節約 他人や自分に役立つことにのみお金を使うこと。すなわち無駄遣いはしないこと。
勤勉 時間を無駄にしないこと。いつも有益なことに時間を使うこと。無益な行動をすべてやめること。
誠実 だまして人に害を与えないこと。清く正しく思考すること。口にする言葉も、また同じ。
正義 不正なことを行い、あるいは、自分の義務であることをやらないで、他人に損害を与えないこと。
中庸 何事も極端でないこと。たとえ相手に不正を受け激怒するに値すると思っても、がまんしたほうがよいときはがまんすること。
清潔 身体、衣服、住居を不潔にしないこと。
冷静 つまらないこと、ありがちな事故、避けられない事故などに心を取り乱さないこと。
純潔 性的営みは、健康のためか、子供を作るためにのみすること。性におぼれ、なまけものになったり、自分や他人の平和な生活を乱したり、信用をなくしたりしないこと。
資本主義システムは「鉄の檻(ゲホイゼ)」である。
第一段階:人々はなにかを目標として、自発的に実践する
第二段階:その結果として、当初意図していなかった社会的ネットワークが形成されていく
第三段階:人々がその自発的な生活を続けていくためには、このネットワークに保護されながらも、それがもたらす生活のパタン化に耐える必要がある。
第四段階:ところが人々はが当初めざしていた目標は、意味を失ってしまう。するとネットワークは生命を失って形骸化する一方で、このネットワークから逃れることは難しくなる。ネットワークは化石化した機械のようになる。それでも人々は、そのなかで暮らした方が居心地が良いと感じる。
第五段階:人々は、この化石化したネットワークの中で、家畜のように手なずけられ、
型にはめられ、精神性を発揮できなくなる。
では、このネットワークの中でどのような精神性を発揮できるか
1.新しい預言者が現れるかもしれないので、その人が現れたら、その人に従ってこの社会を変革していく
2.初期のプロテスタンティズムの生活に立ち戻ってみる。つまり、禁欲的に働きながら、
稼いだお金を使わず、慈善団体に寄付し、質素で勤勉な生活を続ける。
3.つまらない人間と思われるかもしれないが、この資本主義社会の中で、それなりの地位と職を得て、安定した収入を得ながら、そこそこ楽しい生活をする。
4.一定の職と地位を得つつ、その役職に求められる仕事量をはるかに超えた実践によって(官職カリスマとなって)、この資本主義社会を変革していく
5.やがて没落していく資本主義社会の現実に耐えながらも、以前の騎士階級の人たちが示したような、高貴な精神性を示す。