センゲの「学習する組織」は何度読んでも理解できないので、読んでみた。
僕なら、実践学習する組織という書名にするな。ぜんぜん、入門書ではない。システム思考を包含する(または一つの応用としての)学習する組織の手法。
リーダーの語源は「境界線を越えて足を踏み出す」なので、「学習する組織」はリーダーシップの手法である。
PDCAサイクルのようなシングルループ学習ではなく、メンタルモデルを修正するダブルループ学習がよい。
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基本理念(経営理念のうち組織にかかわる部分)、理論・ツール・手法(基本理念を実現するもの)、学習インフラのイノベーション(理論・ツール・手法を身に着けるための学習インフラ)の三つの要素からなる学習環境を戦略の構造と呼ぶ。
深い学習サイクルは、信念・前提、慣行、スキル・能力、関係、気づき・感性という五つの要素をつないだサイクルであり、ダブルループ学習を構成する。
、
組織がその目的を効果的に達成するためには、次の三つの学習能力が必要である。
・志を育成する力→自己マスタリー、共有ビジョン
→個人、チーム、組織が、自分たちが本当に望むことを思い描き、それに向かって自ら望んで変化していくための意識と能力
・複雑性を理解する力→システム思考
→自らの理解とほかの人の理解を重ね合わせて、さまざまなつながりでつくられるシステムの全体像とその作用を理解する意識と能力
・共創的に対話する力→メンタルモデル、チーム学習
→個人、チーム、組織に根強く存在する無意識の前提を振り返り、内省しながら、ともに創造的に考え、話し合うための意識と能力
これら三つの力は、それぞれを構成する五つのディシプリンから構成される。
・自己マスタリー
→ビジョンと現実の両方を見据えて探求・内省を行い、自ら意識的に選択を行うこと、そして根源とつながって自身のあり方を磨き続けること
・システム思考
→組織や市場や社会における相互関連性を理解すること、多様な個の集まった全体性を感じること
・メンタルモデル
→自らの思考やコミュニケーションの開放性を保つこと、そして、自らの無知を知りながら真実を愛する心を育むこと
・チーム学習
→メンバーたちが「今ここ」にありのままにいてエネルギーを集め、メンバー間の意図や理解が「合致」した状態を生み出すこと
・共有ビジョン
→メンバーの間で互いの目的やビジョンの共通性を見いだし、その理念と互いに対してコミットするパートナーシップを築くこと
・自己マスタリー
変化に賛同する人がティッピングポイント(閾値)17%を超えると組織は変化を許容する。
自分の意識と能力を高め続ける
志には、目的とビジョンがある。
目的は、存在理由を問う
目的は方向、ビジョンは到達地。
ビジョンと現実を対比し、意識的に選択する。
明確になったビジョンと現実を対比したときに働く創造的緊張は高い創造性を生む。
反対に現実の負の側面が強く出て感情的緊張が働くとビジョンの現実に抵抗する力が強くなり、
構造的な対立を招く。
構造的対立を避け、創造的緊張を強化するためには真実をありのまま見つめる。
・システム思考
構造がパターンに影響する
システムの全体像を捉える
システム原型を使って構造を見抜く
変化の起点となるレバレッジポイントを見出す。
レバレッジポイントの探し方
- 物理的な構造→ストック、フロー、バッファー、リードタイム
- フィードバック構造→自己強化型ループやバランス型ループとの相対的な強さ
- 情報の流れの構造→だれがいつどの情報にアクセスできるか
- 制度上の構造→目標、ルール、インセンティブ、罰則
- メンタルモデル
課題を抽出し、
①時系列変化パターングラフによって対局の流れを確認し、
②ループ図などによってシステムの構造をみえる化し、
③内省や対話を経て望ましい構造を築くように働きかけ、
特にレバレッジポイントを探求する。
全体像をとらえ、本質を見出す
なぜ期限通りに開発が終わらないのか
何が航空会社の明暗を分けたのか
システム思考とは
システムとは相互作用する要素の集合体
構造がパターンに影響を与える
システム思考の演習
システム原型――よくある問題構造の型
・メンタルモデル
メンタルモデルとは、頭の中にある現実をモデル化したもので思考の前提や枠組みとなる。
効率的な思考や行動を可能にする反面、バイアスや思い込みを生み出す。
- 推論のはしごをゆっくりあがる
- 信奉理論(どのように考えているか)と使用理論(どのように行動しているか)との違いに気が付く
- 行動レパートリーを広げる
メンタルモデルへの対処
- 気づく
- 内省する
- 行動レパートリーを広げる
・チーム学習
グループで一緒に探求、絞殺、内省を行うことで自分たちの意識と能力を共同で高めるディスプリン。
組織の成功エンジン
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- 場と関係性の質を高める
関係性の質、思考の質、行動の質、結果の質は、相互に作用しあって、しばしば悪循環や好循環をもたらす。
場の質を高めることで関係性の質を改善し、思考、行動、結果の質の向上をもたらす。
- 保留する、視座を転換する、手放す
チーム学習の能力向上には、メンタルモデルを「保留して」、他者の話をありのままに聴き、自己の主張を内省的に話すこと、相手の立場から共感的に聴き、あるいは全体の視点から俯瞰すること。そして、未来の制約を課すこだわりを「手放す」こと。
- 練習場と場の設計
チェックイン/チェックアウト、振り返りセッション、アクションラーニングなどの実践を重ねる。
物理的な場のデザイン、グラウンドルールなどを適切に設計する
せっけい
ビジョン・グアテマラ
チームとしての能力開発
チーム学習の演習
・共有ビジョン
組織全体で共有する使命、ビジョン、価値観
組織全体で個人ビジョンを聞き合い、共有ビジョンを紡ぎ、今の現実と対比して未来に対して創造的な姿勢で取り組むこと
- ビジョンが何をなすか→共有ビジョンに対する行動意欲に七段階あり、高次の意欲を引き出す
- ホログラムの原則→共有ビジョンは役割ごとの明確な具体像が描かれるとともに全体像がすべての人に共有されるホログラムのようなもの
- ビジョン展開マトリックス→創造的緊張を生み出すことが重要。ビジョン展開マトリックスを使って、今の現実をありのまま見るとともに、望ましい未来のビジョン、メンタルモデル、構造を明らかにして、選択を促す
共有ビジョンに対する行動意欲
- 無関心
- 反抗
- 嫌々ながらの追従
- 形だけの追従
- 心からの追従
- 参画
- コミットメント
ビジョン展開マトリックス
今の現実 | 望ましい未来 | |
できごと | ① | |
パターン | ② | |
構造 | ③ | ④ |
メンタルモデル | ⑤ | ⑥ |
ビジョン | ⑦ | ⑧ |
①から③は、システム思考
④はメンタルモデル
⑤は自己マスタリーと共有ビジョン
・実践上の課題と対策
- 時間の不足
- 支援の不足
- 自身の関与への逡巡
- 言行不一致
- 恐れと不安
- 評価体系の見直し
- 改革者と部外者
- 普及と浸透
- 組織の統治
- 組織の目的と戦略
・学習インフラのイノベーション
研修の工夫→練習場をつくる
- 経営戦略演習(経営ロールプレイ)
- アクションラーニング→実践の場
- 学習ラボラトリー→業務分野に特化した練習場
マルチステークフォルダーによるアプローチ、フィールドブックでふれている学習する組織「10の変革課題」の対策や
やUプロセス(U理論)の主要なポイントもおさえている。
つまり、Uプロセスに学習ディスプリンを適用する。
U字の左側を十分深く潜ったときに自分自身を見直す。
U字の底では、「自己マスタリー」を使って、自分自身と今の現実を見つめる。そして、「共有ビジョン」の構築に踏み出す。
U字の右側の谷から上がっていく際には、学習ラボラトリーを形成して、レバレッジポイントを探す。
これはデザインシンキングと類似している。