akon0.98bのよっぱらいの戯言

好客三年不変店 好店三年不変客

身銭を切れ

身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質

 

原書タイトルは、"Skin in the game"。 つまり「自分の発言や行動に自らリスクを背負っている」ってこと。内容的には、「身銭を切る」というよりも、リスクという意味を入れるには「自分事とする」に近いと思う。ピケティやマンダリン(官僚)階級への批判が痛烈であった。

 

第1部 「身銭を切る」とは何か

プロローグ

インケルト(不確実性)は、不確実性のもとで生き、食べ、眠り、論じ、戦い、睦み、働き、遊び、決断する方法や、ランダム性の問題について、(a)実践的な議論、(b)哲学的な物語、(c)科学的・分析的な解説を組み合わせたものである。

以下の話題について述べている。

(a)不確実性と、実践的な知識や科学的な知識の信頼性(両者が違うものだと仮定して)

たわごと(ブル●ット)を見抜き、ふるい分けること

カタカナにするならば、伏字にする必要もなく、伏字にするならブル●●●じゃないかな。

 

(b)公平、公正、責任、相互性といった人間的な物事における対称性。

→人生における対称性や相互性の歪み

(c)商取引における情報共有。

→他者と共有すべき情報量について

(d)複雑系や実世界における合理性。

→合理性と時の試練

 

身銭を切ること(つまり、対称性)は、公平性、商業的な効率性、リスク管理にとって必要なだけではない。

この世界を理解するうえで欠かせない条件なのだ。

→自分事とする

 

職人は魂を捧げている。

・職人は実存的な理由から仕事をしている。お金や営利は二の次だ。

・職人の仕事にはある種の「技(アート)」がある。

・職人は作品に魂を込め。自尊心が傷つくので、欠陥品や妥協品は売らない。

・職人は侵すことのできないタブーがある。

 

悪人は近道するが、善人は遠回りする。

 

アレクサンドル・デュマ・ペールには45人もののゴーストライタがいたとか、彼が自分自身の著書を何冊読んだかと書いてあるが実話ではないようだ。

 

アシスタントを雇うな。どうしても必要な作業以外で、魂を捧げられなくなる。

 

似非起業家は、説得力のあるビジネスプランを書く能力があるかどうかで見分けられる。

企業は起業家の手元を離れたとたんに腐れ始める。

モノを作る能力と売る能力は別物だ。

 

「英雄に本の虫はいない」

「牛肉を食べたからといって牛にならない」

教科書で勇気について学んだからといって、今以上に勇敢になれるわけではない。

 

本書の構成

第1部はプロローグ。

第2部では、リスク分担の対称性とエージェンシー問題について詳しく解説し、商業的な利益相反と一般的な倫理を結びつける。また、スケーリングの概念、個人と集団の違い、そしてグローバリズムや普遍主義の限界について。

第3部では、集団のごく一部の人々が集団全体にその選好を押しつける少数決原理について。

付録では、

(1)部分の集合が部分の総和ではなく、独自の意志を持つ実体のように振る舞うという事実

(2)社会「科学」と呼ばれているものの部分から導かれる結論について。

第4部では、現代生活における従属関係、有り体にいうなら奴隷制度について。

雇われ人が存在するのは、彼らのほうが契約労働者よりもずっと失うものが多いから。

また、フ××ク・ユー・マネーを持っているような独立した人間であっても、その人の大事な人々が悪徳企業や悪徳集団の標的にされると無力になるという事実について。

第3部では、見た目にはとれだけ無様でも、リスクを冒すことで説得力がぐっと増す理由について。また、リアルな人生と経験機械のなかの人生の違い、イエスが神でなく人間でなければならなかった理由、ドナルド・トランプがあまたある欠点ゆえに選挙に勝った理由。

 

第6章では、じっと講義を受けるよりも自ら身銭を切る(たとえば自転車に乗る)ほうがよっぽど世界の理解に役立つということがわからない知的バカという人種をご紹介する。

第7章では、リスクの格差と給料の格差の違いについて説明する。

第8章では、リンディ効果について。リンディ効果は、時の恵みを受けるものと時の災いを受けるもの、そのふたつを区別する。

第6部では、重大な隠れた非対称性に目を向ける。

第9章では、実践という観点から見ると世界はもっとシンプルになること、本物の専門家は役柄を演じる役者っぽ は見えないことを実証する。また、でたらめを探知するためのヒューリスティックも紹介する。

 

第10章では、金持ちは商品を売りつけるためにやたらとライフスタイルを複雑にしようとする人々の餌食になるカモであるということを実証する。

第1章では、本物の脅しとこけおどしの違いについて説明し、敵を殺さずして支配する方法を紹介する。

第2章では、ジャーナリストのエージェンシー問題について。彼らはほかのエージェントたちのご機嫌を取るため、真実を犠牲にし、虚構の物語をでっち上げる。

第3章では、善行にリスク・テイクが欠かせない理由を説明する。

第7部「宗教、信仰、そして身銭を切る」では、身銭を切るという概念や顕示選好の観点から、信条について説明する。

 第8部では、身銭を切るという概念と無関係な合理性の厳密な定義は存在しない。重要なのは、言葉でもおしゃべりでもなく行動だ。

 第19章「リスク・テイクのロジック」では、リスクに関する私の信条をまるまる要約し、低確率の事象に関する誤解を暴き出す。また、リスクを階層別(個人から集団まで)に分類し、集団のみ)行動するかぎり、勇気と思慮深さは両立しえないものではないことを証明する。また、ずっとり先送りしていたエルゴード性についても説明する。最後に、本書の考える予防原則をまとめる。

 

第2部 エージェンシー問題入門編

第1章 自分で捕まえた亀は自分で食べよ ──  不確実性に関する平等

「あなたが害をこうむっても何一つ影響を受けず、しかも本当は自分のためでもあるのに、「あなたのためですよ」などと言ってアドバイスをしてくる人間には要注意。

 

第3部 例のこの上ない非対称性

第2章 もっとも不寛容な者が勝つ

対称性→「フェアかどうか」

リバタリアンであれば、「自由で自発的な選択」と「それによる帰結を自身で受け入れること」こそが、フェアネスを担保すると考える。」

フリーランスは「社会保障を」的な発言するなということだな。

 

少数決原理

→コーシャ(またはハラル)食品を食べる人はコーシャ(ハラル)認定されていない食品は食べないがそれ以外の人はコーシャ食品を食べる分には問題ない。

 

コーシャ

ユダヤ人には、食事に関する禁止事項が500近くある。こうした禁止事項は、合理性を理屈で説明できる物事として定義している外部の人間から見れば、非合理。しかし、コーシャ規定が数千年にわたって生き延びてきました。それはコーシャ規定が「合理的」だからではなく、その規定を守る人々が生き延びてきたからなのだと。また、コーシャ規定は間違いなく団結をももたらした。

 

くりこみ群の現象は、拒否権効果。

集団内のひとりが拒否権を行使して集団の選択を操れる。

 

遺伝子は多数決原理に従うが、言語は少数決原理に従う

言語は移動するが、遺伝子はさほど移動しない

 

集団にまつわるいくつかの意外な事実

・市場参加者の平均的な行動を見て、市場全体の行動を理解することはできない。

・個人に関する心理学的実験で「バイアス」が証明されたからといって、そのまま個人の集合体や全体の行動、集団の振る舞いについて理解することはできない。

・脳の各部分(神経細胞など)の働きを理解したところで、脳そのものの働きは永久に理解できない

・ある部位の遺伝子構造を理解したところで、その部位の振る舞いそのものは決して理解できない。

知能ゼロの市場

・適切な市場構造のもとでは、バカの集まりでも市場をうまく機能させられる。

・集団が効率的に機能するためには、個人が特異な(一見すると、「非合理的」な)行動をとることが必要なのかもしれない。

・個人が行き先を知る必要はない。市場が知っているから。

 

 第4部 犬に紛れたオオカミ

第3章 合法的に他人を支配するには

→金銭的な奴隷にするなど

フ××ク・ユー・マネー

「上司に糞ったれ!といえるためのお金」、つまり「会社を辞めても活きていくのに充分なお金」

 

第4章 人に身銭を切らせる

大カトー

「死後になぜ私の彫像があるのかと訊かれるくらいなら、なぜ私の彫像がひとつもないのかと訊かれる方がいい」

 

第5部 生きるとはある種のリスクを冒すこと

第5章 シミュレーション装置のなかの人生

 

第6章 知的バカ

 

第7章 身銭を切ることと格差の関係

ピケティの「労働と比較した資本収益率の増大に関する理論」は、

「1年目と2年目で格差が変化しているというときには、頂点に立つのが同じ人々であることを証明する必要がある」のに、証明していない。

 

第8章 リンディという名の専門家

自由人とは、同僚の評価に大きく(または直接的に)運命を委ねていない人間のことである。

ほかの人々の評価は、それが現在ではなく未来の人々の評価である場合にのみ意味を持つ。

同時代の同僚は、貴重な共同作業の相手であっても、最終審判ではない。

 

・認知的油協和→手の届かないところにあるぶどうは酸っぱいに違いない

・損失回避→何かを得る喜びより失う痛みの方が大きい

・否定形のアドバイス→黄金律より白銀律のほうがすぐれている。何が正しいかよりも何が間違っているかの方が理解しやすい。

・身銭を切る→痒いところは自分の爪で掻くのが何より

・反脆弱性→魂が柔軟になると、蜂に刺されただけでも痛い

・時間割引→樹木の10羽は手中の1羽に如かず

・群衆の狂気→個人の狂気はかなり稀なものである。しかし集団、党派、民族、時代となると、狂っているのがつねなのだ。

・少ないほど豊か→口論が高じると真実が失われる

・自信過剰→過信して、すべてを失った。用心して、すべてを守った。

・進歩のパラドックス、または選択のパラドックス→ゆっくりするなら、無用な危険を冒さなくても、いまでもできる。

 

第9章 外科医は外科医っぽくないほうがいい

それらしい見た目をしていない人は、見た目を一切考慮する必要がない人。

偽物ほど本物に見せなければならず、本物であればそのような発想自体がないからだ

身銭を切ればうわべは重要ではなくなり、身銭を切らないとどんどんでたらめが膨らんでいく。

 

第6部 エージェンシー問題実践編

10章 毒を盛られるのはいつだって金持ち

泥棒は無一文の家には入らない。そして、毒はふつうの杯よりも金杯に盛られる。

 

第11章 不言実行

言葉の脅しでは、弱さやあいまいさ以外の何も伝わらない。

 

12章 事実は正しいが、ニュースはフェイク

13章 善の商品化

(1)決して善をひけらかすな!

(2)決してレントシーキングを行うな、

(3)是が非でもビジネスを始めよ、リスクを冒し、ビジネスを立ち上げろ!

勇気(リスク・テイク)は最高の善だ。

 

第14章 血もインクもない平和

 

第7部 宗教、信仰、そして身銭を切る

第15章 宗教を語るヤツは宗教をわかっていない

第16章 身銭を切らずして信仰なし

第17章 ローマ教皇無神論者か?

 

第8部 リスクと合理性

第18章 合理性について合理的に考える

合理性は、ある人の考えや“信念”ではなく、行動によって決まる。

生き残ることが合理性である。

特定のテール・リスクをものすごく非現実的で大げさな形で解釈しないかぎり、その人は生き残れない。

システム的な生存を脅かすようなテール・リスクを避ける方法としては、繊細な脅迫観念に従って行動するのは、たとえそれが取り越し苦労だったとしても、たいした手間ではない。脅迫観念がいちどでも正しければ、命が助かる。

 

顕示選好

・信念で人を判断するのは合理的でない。

・信念に“合理性“も何もない。あるのは行動の合理性だけ。

・行動の合理性は、進化の観点からしか評価できない

つまり、本人に訊ねるだけでは、人々の本心はわからないし、その人の行動は予測できない。本人すら自分の本心を理解していない場合もあるからだ。最後のものをいうのは、その人が目の前の商品に対して実際に払う対価だ。その商品をどう思っているか、どうしてそう思うのかについて、本人の言葉で説明している内容を鵜呑みにしてはならない。

 

第19章 リスク・テイクのロジック

アンサンブル確率と時間確率が等しい場合はエルゴード性が成り立つ。

エルゴード性が成り立たない場合は、確率的に持続可能とはいえない。

 

破滅を完全に避けつつも、リスクを愛することはできる。

破滅を含むような戦略では、利益が破滅リスクを帳消しにすることは決してない。

破滅とそれ以外の状況はまったく別の生き物である。

人間の侵すリスクは積もり積もってその人の余命を縮める。

合理性とはシステムの破滅を防ぐことである。

 

髭(または髪)が黒いうちは、結論は忘れて、理屈に気を配れ、髭に白髭交じりなら、理屈と結論の両方について考えよ。髭が真っ白なら、理屈はすっ飛ばして、結論に留意せよ。

 

 

用語集

用語集
■レント・シーキング
保護目的の規制や「利権」を利用して、経済活動になんら貢献することなく、つまりほかの人々の富を増やすことなく、収入を得ようとする行為。デブのトニーがいうように、保護による経済的恩恵をまったく受けることなく、マフィアにみかじめ料を払わされるのと似ている。

■顕示選好
ポール・サミュエルソンが考案した理論であり(当初は公共財の選択という形で)、経済主体は自らの行動の根拠を完全には理解できないという説。行動は観測できるが、考えは観測できないので、考えを厳密な科学調査に用いることはできない。経済学の実験では、経済主体の実際の支出を調べる必要がある。デブのトニーは、「口で言うのはいつだって簡単さ」と端的にまとめている。

■規制の虜
規制がある経済主体によって「操られて」しまう状況。その規制の本来の意図とは食い違う場合が多い。官僚やビジネスマンのなかには、保護目的の規制や特権から収入の一部を得ていて、そうした規制や特権を支持するロビー活動にせっせと励む者もいる。規制は、是正や撤回をするよりも導入するほうがいつでも易しいという点に注意が必要だ。

■科学主義
科学っぽく見えるものが科学であるという思いこみ。科学が持つ懐疑的なプロセスよりも、表面的な側面ばかりが重視される。科学主義は、エラい人が一定の指標に基づいて貢献度を評価するような分野にはびこっている。また、ジャーナリストや学校教師のように、科学を「実践」することなく講釈ばかり垂れている人々がのさばっている分野にもよく見られる。

■浅はかな合理主義
人間は世界の仕組みを理解できる、人間に理解できないものはこの世に存在しないという信念。

■知的バカ
バカ

■似非合理主義
(1)ある信念がもたらす結果ではなく、信念そのものの合理性に着目すること。
(2)お粗末な確率モデルを用いて、ある種の行動を取っている人々を「非合理的」だと決めつけること。

エージェンシー問題
代理人依頼人とのあいだの利害の不一致。たとえば、自動車セールスマンと顧客(車の購入希望者)、医師と患者など。

ロバート・ルービン取引
利益は目に見えるが(そして、その利益に対して一定の賞与が支払われる)、損失はほとんど目に見えない(そして、身銭を切っていないがために罰を受けずにすむ)という歪んだ領域における取引所。政治のように、罰則が弱く、被害者(納税者、株主など)が抽象的で分散しているどのような分野でも一般化できる。

■干渉屋
自分が世の中の仕組みをわかっていると思いこみ、脆さを生じさせる人間。彼らは身銭を切っていないので、現実によってふるい分けられることもないし、自制を利かせることもない。また、ふふつうはユーモアのセンスも乏しい。

■グリーン材の誤謬
外から見えづらく、扱いづらい知識と、グリーン材の「グリーン」の意味のような知識とで、どちらが重要な(あるいは必要な)知識なのかを勘違いしてしまう現象。もっと一般化すれば、私たちが「重要な知識」と呼んでいるものの多くは、実はあんまり重要じゃない。

■「鳥に飛び方を教える」現象
知識の方向性を逆転させ、「学問→実践」や「教育→富」であると思わせることで、体系的な科学が実際よりも技術の進歩に貢献しているかのように見せかけること。『反脆弱性』(特に上巻の第13章)を参照。

■リンディ効果
技術、思想、企業のような壊れないものは、人間、ネコ、イス、経済理論、トマトのような壊れるものとは違って、1日たつごとに余命が延びるという現象。たとえば、100年間発行されつづけている本は、売上が順調ならば、もう100年間は発行されつづける可能性が高い。

エルゴード性
本書のカジノの文脈でいえば、ギャンブラー集団の集合的な統計的性質(特に期待値)が、ひとりのギャンブラーの一定期間における統計的性質と等しくなる場合、エルゴード性が成り立つ。この場合、アンサンブル確率が時間確率に近くなる。エルゴード性が成り立たない場合、観測された確率から、破滅(吸収壁、「ケツを割る」水準)の存在する戦略のペイオフへと、リスク特性をそのまま移行することができない。つまり、 確率的に持続可能とはいえない。

■月並みの国
大成功や大失敗がほとんどない、平凡な結果ばかりで占められているプロセス(歯科医の収入など)。ひとつの観測結果が全体に大きな影響を及ぼすことはない。「シン・テール」や「ガウス分布族に属する」とも呼ぶ。

■果ての国
ひとつの観測結果が全体に大きな影響を与えうるプロセス(作家の収入など)。「ファット・テール」とも。フラクタルな分布族やべき乗則的な分布族を含む。専門的な付録の「劣指数分布」に関する議論も参照。

■少数決原理
全体の行動が少数派の選好によって決められるという非対称性。喫煙者は禁煙エリアに入れるが、非喫煙者は喫煙エリアに入れないので、やがておのずと非喫煙者のほうが優勢になる。それは非喫煙力がもともと多数派だったからでなく、喫煙者と非喫煙者とのあいだに非対称性が存在するからだ。言語、倫理、(一部の)宗教も、小数決原理に従っていると筆者は考えている。

■否定の道
神学や哲学において、「何ではないか、つまり間接的な定義に着目すること。肯定の道より誤謬に陥りにくいとされる。行動においては、何を避けるべきか、何をすべきでないかのヒントになる。増殖的で予想不能な副作用の存在する領域では、足し算よりも引き算のほうがうまくいく。たとえば、医療においては、患者に喫煙をやめさせるほうが、薬や治療を提供するよりも副作用は少ない。

■拡張可能性
物事の性質は、スケールが小さくなったり大きくなったりすると、急に変化することが多い。都市は大国とは違うし、大陸は島とはだいぶ異なる。集団の大きさが拡大すると、集団の行動は変化する。こうした事実は、地域主義を支持し、野放図なグローバリズムに反対する根拠となりうる。

■知的な単一文化
特定の分野において、身銭を切っていないジャーナリストや学者などの奴隷たちが、いっせいに「右へならえ」モードへと収束する現象。こうなると他者から操られる可能性があるし、経験的証拠に逆行しやすくなる。こうなってしまうのは、常識から逸脱した人々がすぐに「プーチン派」「人種差別主義者」「赤ちゃん殺し」(ペテン師たちがセンーショナルな主張をするときにいつも持ち出してくるのが子ども)というレッテルを貼られ、大きな罰を受けるからだ。この現象は、島が大きくなると生態的な多様性が減少するのと似ている(ブラック・スワン(特に下巻の第18章)を参照)。

■善の商品化
善をマーケティング戦略として用いることで、善の価値を貶めること。古典的には、善は隠れて行うべきものだった。現代の「環境を救おう」的なメッセージはこの原則に反する。善を売る人間は偽善者であることが多い。さらにいえば、勇気や犠牲を伴わず、身銭を切らない善は、善とはいえない。善の商品化は、聖職をお金で買うことができる中世の「聖職売買」や、お金で罪のゆるしを得ることができる「贖宥状」に似ている。

■黄金律(対称性)
「自分がしてほしいことを他者にもせよ」という原則。

■白銀律(黄金律の否定形)
「自分がしてほしくないことを他者にするなかれ」という原則。黄金律との違いに着目。お節介屋があなたの人生に口出しするのを防ぐのが白銀律だ。

■善意解釈の原理
知的議論において対称性を働かせること。つまり、相手の議論を、自分だったらこう解釈してほしいと思うとおりに解釈すること。「すり替え論法」の逆。

 

https://diamond.jp/articles/-/224589?page=3

 

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社会における非対称性

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否定の道スタイルの(長大な)格言で本書を締めくくろう。
体力なくして筋肉なし、
信頼なくして友情なし、
応報なくして意見なし、
美学なくして変革なし、
価値観なくして年功なし、
努力なくして人生なし、
渇きなくして潤いなし、
栄養なくして食事なし、
犠牲なくして愛情なし、
公平なくして権力なし、
厳密なくして事実なし、
論理なくして統計なし、
証明なくして数学なし、
経験なくして教育なし、
真心なくして礼儀なし、
体現なくして価値観なし、
博学なくして学位なし、
忍耐なくして軍政なし、
洗練なくして進歩なし、
投資なくして友情なし、
危険なくして美徳なし、
エルゴード性なくして確率なし、
リスクなくして蓄財なし、
深みなくして複雑化なし、
中味なくして雄弁なし、
非対称性なくして決断なし、
懐疑なくして科学なし、
寛容なくして宗教なし、
そして、何より、
身銭を切らずして得るものなし。

 

===

ハラム→利子つきで(借り手のダウンサイドを引き受けることなく)お金を貸す

サラフィー主義

ワッハーブ派

ヨベルの年の債務免除

===

目次
第1部 「身銭を切る」とは何か

身銭を切ることの意外な側面

プロローグ

その1 アンタイオス、殺られる

アンタイオスなきリビア
他人の命で遊ぶ ──  Ludis De Alieno Corio
人民の庇護者でなければ、貴族たりえない
ロバート・ルービン取引 ──  隠れた非対称性とそのリスク
システムは排除によって学ぶ

その2 対称性の簡単なおさらい

I.ハンムラビからカントへ
  なぜかパリにあるハンムラビ法典
  白銀は黄金に勝る
  普遍主義なんて忘れちゃえ
II.カントからデブのトニーへ
  ペテン師か、バカ者か、その両方か
  因果関係の不透明性と顕示選好
  身銭を切る必要のある人ない人
III.近代主義
  専門化の痛すぎる弊害
  シンプルがいちばん
  身銭を切らないと私は愚鈍になる
  規制か法制度か
IV.魂を捧げる
  職人
  起業家という言葉に要注意
  傲慢も方便
  楽しみとしての市民権
  英雄に本の虫はいない
  魂を捧げる人々と適度な保護主義
  身を切った裁判官

その3 『インケルトー』の肋骨


研ぎ澄まされた探知器
書評家
本書の構成

第1部の付録 人生や物事における非対称性


第2部 エージェンシー問題入門編

第1章 自分で捕まえた亀は自分で食べよ ──  不確実性に関する平等

お客は毎日生まれている
ロードス島穀物の値段
不確実性に関する平等
ラブ・サフラとスイス人
会員と非会員 ──  個から一般へのスケール変換の難しさ
私でもあなたでもなく、私たちのもの ──  Non Mihi Non Tibi, Sed Nobis 
あなたは右でも左でもなく“斜め”寄り?
(文字どおり)同じ船の仲間
自分の持ち株を勧める
診察室に寄り道
次のテーマ

第3部 例のこの上ない非対称性

第2章 もっとも不寛容な者が勝つ ──  頑固な少数派の支配

あらゆる非対称性の生みの親「少数決原理」
ピーナッツ・アレルギー持ちの犯罪者 ──  ラベリング
オーガニック食品と遺伝子組み換え食品を普及させるための共通の戦略
くりこみ群
“拒否権”効果
共通語
遺伝子と言語の違い
宗教の一方通行性と、ふたつの非対称的な規則
再び、分権化の話
道徳は少数派によって作られる
少数決原理の安定性に関する確率的議論
ポパーゲーデルパラドックス
市場と科学は聞く耳を持たない
1頭のみ、されど獅子 ──  Unus Sed Leo
まとめと次のテーマ

第3部の付録 集団にまつわるいくつかの意外な事実

知能ゼロの市場

第4部 犬に紛れたオオカミ

第3章 合法的に他人を支配するには

フリーランス修道士が教えてくれること
パイロットを飼い慣らすには
企業マンから企業人へ
コースの企業理論
複雑な現代世界
奴隷所有の面白い形
自由はタダじゃない
犬に紛れたオオカミ
損失回避の心理
コンスタンティノポリスの復活を待ちわびて
官僚王国を揺るがすな
次のテーマ

第4章 人に身銭を切らせる

住宅ローンと2匹のネコ
隠れた弱みを見つける
自爆テロ犯に身銭を切らせるには
次のテーマ

第5部 生きるとはある種のリスクを冒すこと

第5章 シミュレーション装置のなかの人生

エスはリスク・テイカ
パスカルの賭け
マトリックスの世界
あのドナルド・トランプが勝ったのは欠点のおかげ
次のテーマ

第6章 知的バカ

ココナッツはどこにある?
科学と科学主義
知的俗物
言語を話す前に文法を学ぶ
結論
追記

第7章 身銭を切ることと格差の関係

2種類の格差
静的な格差と動的な格差
ピケティとマンダリン階級の反乱
靴屋靴屋を妬む
格差、富、縦の交流
共感と同類性
データ、ああ似非データ
公務員の倫理
次のテーマ

第8章 リンディという名の専門家

脆弱性とリンディ効果
“真”の専門家は誰?
リンディのリンディ
審判は必要なのか?
女王との紅茶
学術機関の罠
自己の利益に反して
もういちど、魂を捧げる
科学は耐リンディである
経験的か理論的か?
おばあちゃんと研究者の対決
おばあちゃんの知恵のおさらい

第6部 エージェンシー問題実践編

第9章 外科医は外科医っぽくないほうがいい

人は見た目が大事
グリーン材の誤謬
最高に着飾ったビジネス・プラン
仮装する主教
ゴルディアスの結び目
人生の過剰な知性化
干渉のもうひとつの側面
金と稲
報酬制度が生み出す歪み
贅沢品としての教育
いんちき探知ヒューリスティック
本物のジムはジムっぽくない
次のテーマ

第10章 毒を盛られるのはいつだって金持ち ──  他者の選好について

金持ちの選好は操られている
毒は金杯で飲まれる
巨大な葬儀場
会話の成立条件
進歩の非線形
次のテーマ

第11章 不言実行

断りづらい提案
暗殺教団
マーケティングとしての暗殺
民主主義としての暗殺
カメラは身銭を切らせる道具

第12章 事実は正しいが、ニュースはフェイク

自分自身に反論する方法
情報は支配に抗う
反論の倫理学
次のテーマ

第13章 善の商品化

「善」の不正利用者ソンタグ
公と私
善の“売人”
そうなのか、そう見えるのか
聖職売買
善とは他者や集団に対して行うもの
不人気な善
リスクを負え

第14章 血もインクもない平和

平和はトップダウンでは生まれない
火星対土星
ライオンはどこへ消えた?
救急治療室から見た歴史
次のテーマ

第7部 宗教、信仰、そして身銭を切る

第15章 宗教を語るヤツは宗教をわかっていない

宗教の意味は人と時代によって異なりまくる
信念対信念
リバタリアニズムと教会なき宗教
次のテーマ

第16章 身銭を切らずして信仰なし

神々は安上がりなシグナリングがお嫌い

第17章 ローマ教皇無神論者か?

ローマ教皇無神論者の見分けはつくか
言葉では信心深い人たち
次のテーマ

第8部 リスクと合理性

第18章 合理性について合理的に考える

目の錯覚
エルゴード性が第一
サイモンからギーゲレンツァーへ
顕示選好
宗教は何のためにある?
“おしゃべり”と安っぽい“おしゃべり”
リンディの言い分は?
お飾りはお飾りとはかぎらない

第19章 リスク・テイクのロジック

エルゴード性
繰り返しリスクに身をさらすことが余命を縮める
“あなた”って誰のこと?
勇気と思慮深さは対極ではない
もういちど、合理性の話をしよう
ある程度のリスクを愛そう
浅はかな経験主義
まとめ

エピローグ リンディが教えてくれたこと


謝辞

参考文献

注解

専門的な付録

用語集

索引