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両利きの経営

原書タイトルは、 Lead and Disrupt: How To Solve the Innovator's Dilemma.
本文では、Exploration(探索)ととExploitation(深化)で、これをもってAmbidexterity(両利き)としている。

米国の経営学者はクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」よりも取り上げている。

サクセストラップ
調整機能により短期的に成功する企業では、マネージャーは戦略を実行するために、適切な人材獲得に奔走し、組織を整備し、評価や報酬の対象を適切に定め、KSFの達成につながる行動を促す文化を醸成する
→組織的慢性も醸成され、脅威に対する変革が難しくなってしまう。

サクセストラップへの対応策
→既存の資産や組織能力を深化し、今日の収益源である成熟事業で競争しながら、新規事業を探索して未来の市場に備えなければならない。

■両利き
両利きになるための構成要素
1.探索と深化が必要であることを正当化する戦略的意図を明確にする。
2.新しいベンチャーの育成と資金供給に経営陣が関与し、監督し、その芽を摘もうとする人びとから保護する。
3.ベンチャーが独自に組織構造面で調整を図れるように、深化型事業から十分な距離を置くとともに、企業内の成熟部門が持つ重要な資産や組織能力を活用するのに必要な組織的インターフェースを注意深く設計する。
4.探索ユニットや深化ユニットにまたがって、共通のアイデンティティをもたらすビジョン、価値観、文化を醸成する。


戦略的意図の検討方法

本業の資産の活用が低い 本業の資産の活用が高い
戦略的な重要性が高い 領域C→独立の事業ユニット ・領域D→両利き組織
戦略的な重要性が低い 領域A→スピンアウト 領域B→既存事業ユニットもしくはアウトソーシング

本業の資産の活用( コンピテンシー、技術、製造、マーケティング、営業、ブランド、チャネル)

領域 状況 とるべき方策
領域A:スピンアウト 新しい機会が戦略的に既存事業と整合性がなく、既存の資源や組織能力が活かせない状況 市場機会があったとしても推進すべき理由は少ないために、大企業内でのスピンアウトを推進の方法として推奨
領域B:既存事業ユニットもしくはアウトソーシング 新しい機会に対して現状の組織能力を活用できるが、戦略として重要ではないという状況 自社の資産をより生産的に活用できるかを踏まえ、継続して内部で行うか、パートナーにアウトソーシングするなど外注に出すという方法を推奨
領域C:独立の事業ユニット 戦略的に重要だが、現状の資産や組織能力が活かせない状況 従来の考え方が邪魔しないように完全な別組織化を狙い、新規事業を独立の事業ユニット化
領域D:両利き組織 新しい機会が戦略的に重要であり、既存の資産やオペレーションの組織能力からの恩恵が得ることができる状況であり、この場合が両利きの経営の構想が最も必要とされる状況 知の探索を進めるユニットをスピンアウトし、未来に向けた事業を推進

■ダイナミック・ケイパビリティ
カルフォルニアバークレー校のデイビット・ティース教授らが1990年代に提示した考え
・環境変化が激しい中でも、企業が恒常的に変化して対応し続ける能力である。
ケイパビリティは次の二種類

  • 環境が安定している場合、オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)、既存の知識に基づいて効率性を追求する能力(利益最大化)→知の深化
  • 環境の変化が激しい場合、ダイナミック・ケイパビリティによって環境に適応するために、既存の資産やオーディナリー・ケイパビリティを再構成・再配置して付加価値を増加する(付加価値最大化)→知の探索

イノベーションストリーム
・著者らが独自に提示する実務的なフレームワーク
・市場と組織能力の二軸で4領域に分け、自分たちが目指したい方向性や潜在的な競合他社の可能性を探り、イノベーションの方向性を表現する。

■VSR(多様化・選択・維持)プロセス
・生物進化学を応用した社会学の視点がベース
・企業内では「人材」「情報」といった重要な経営資源においてVSRプロセスが働く傾向があり、こうしたリソースが企業の特性を規定し、そこから環境対応能力が形成される。

  • 多様化(variation)

有機体や組織が違う特徴を持つ

  • 選択(selection)

違いによって、その有機体が生き延びる能力に差が生じる場合がある

  • 維持(retention)

ある世代から次の世代へと、有益な特徴が受け継がれる可能性がある



両利きの経営を実現するためのリーダーシップ
組織の観点でいうと、深化がマネジメントの問題であるのに対し、探索は基本的にリーダーシップの問題である。

求められる3つの行動
1.新しい探索事業が新規の競合に対して競争優位に立てるような、既存事業の資産や組織能力を突き止める。
2.深化事業から生じる惰性が新しいスタートアップの勢いを削がないように、経営陣が支援し監督する。
3.新しいベンチャーを正式に切り離して、成熟事業からの邪魔や「支援」なしに、成功に向けて必要な人材、構造、文化を調整できるようにする。

両利きの経営の成功と失敗に関わるリーダーシップの原則
1.心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む。
2.探索と深化との緊張関係をどこに持たせるかを明確に選定する。
3.幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。
4.「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する。
5.探索事業や深化事業についての議論や意志決定の実践に時間を割く。

戦略的刷新が適切かどうかを判断するための問い
1.成長機会が限られた成熟期の戦略によって、大方の業績が決まっているか
2.自組織の戦略を移行できる製品、サービス、プロセスの機会があるか
3.中核市場の外部に機会または脅威はあるか
4.その機会は、自社の中核となる組織能力や関連するアイデンティティの脅威となるか

リーダーシップの実践方法
1.成長に向けて感情移入のできる抱負を定める。
2.儀礼的な文書化された計画プロセスではなく、対話として戦略を扱う。
3.今後起こることを教えてくれる実験を通じて成長する。
4.リーダーシップコミュニティを刷新活動に巻き込む。
少なくとも幹部チームがかけてくるものと同等の圧力が、ボトムアップから生じるようなプロセスを設計する。
5.実行するための規律を持たせる。
刷新は、一夜漬けの仕事だと甘く見てはいけない。

イノベーションビジネスパーソンにとっては迷惑千万。
誰かが起こした破壊的なイノベーションに対して、
どうすれば後手に回らず的確に対応できるか。一度ならず何度も

リアル×シリアス
サイバー×フィジカル


解説 なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か(入山章栄)
1.イノベーションという難題
2.探索と深化
3.イノベーションストリームとのバランスを実現させる
4.6つのイノベーションストーリー
5.「正しい」対「ほぼ正しい」
6.両利きの要件とは?
7.要としてのリーダー(および幹部チーム)
8.変革と戦略的刷新をリードする
解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書(冨山和彦)