akon2.00βのよっぱらいの戯言

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統辞構造論

 

 

 

統語論とはsyntaxらしいが(日本語の意味を英語でかかないとならないのが情けない)、 grammar と syntax との違いが分からなった。

grammar = morphology +  syntax

morphology=単語が文字ないし音韻でどう変化するか(形態論)

syntax=(単語をどう並べて文をつくるか)

なんだろう。

 

「統辞構造論」の翻訳底本には2002年の第2版を使用しているが、第2版で追加されたD. Lightfoorのintroductionは省略されているが、それ以外は内容に違いはない。

「統辞構造論」は、生成文法の概要を理解するには便利だが、理論を専門的なレベルで正確に理解することは難しいので、チョムスキー言語基礎論集に収録されているが、チョムスキーが「言語理論の論理構造」を出版する際に書いた「言語理論の論理構造 序論」を併録されている。ここには、生成文法の誕生の事情を説明している。

さらに、訳者による解説「「生成文法の企て」の原点―『統辞構造論』とその周辺―」が併録されている。生成文法誕生における知的背景について詳述され、生成文法誕生以後の展開についても概観されている。

統辞構造論が180ページに対し、序論が113ページ、解説が約90ページである。

 

なお、普遍文法、言語能力、言語運用、S構造、D構造、パラメタなどのチョムスキーの基本タームは出てこない。「チョムスキーと言語脳科学」を読まないといけないようだ。

 

 

チョムスキー言語学を科学にした。

統辞構造

広い意味→意味論に対置されるもの

狭い意味→音素論と形態論に対置されるもの

 

言語構造に関する三つのモデル

・ある種の極めて単純なコミュニケーション理論に基づく言語モデル

・直接構成素分析

・変換モデル

 

第1章 序文

言語学的レベル→音素論、形態論、句構造

→文法の構築にとって利用可能な記述装置の集合

 

第2章 文法の独立性

言語→それぞれの有限の長さを持ち、また、要素の有限の集まりから構成される文の(有限あるいは無限の)集合

 

個々の自然言語には、有限の数の音素(あるいはアルファベットの文字)があり、文の数は無限であるが、それぞれの文はこれらの音素(あるいは文字)の有限列として表示される。

 

言語Lの言語分析の根本的な目標は、言語Lの文である文法的(grammatical)列を、Lの文ではない非文法的(ungrammatical)列から区別し、文法的列の構造を研究することである

 

文法的列を非文法的列から区別する

言語学者がフィールドワークから得たどのような特定の発話コーパスとも、文法的な文の集合を同一視できない。

・文法的という概念は意味論における有意味なや有意義なといった概念と同一視できない。

・英語におけて文法的的いう概念は英語に対する高次の統計的近似を同一視することはできない。

 

言語能力は、 実際の談話においては一度も発話されたことのない語の組み合わせを発話できなければならない。 また統計や意味によらず、どのような文が文法的であり、また文法的でないか、を判断できなければならない。

 

第3章 初歩的な言語理論
言語は無限であるが、文法は有限である。 形態素の列の単なる一覧表ではありえない(それは有限ではない)。

始状態と終状態を持ち、エッジとして単語を持ち、再帰的装置としてループも許容する有限状態マルコフ過程としての文法モデル(有限状態文法)が提示される。 言語の統計的構造ではなく文法的構造の研究なので、遷移確率についての一般化には踏み込まない。

 

英語は有限状態言語ではない。

 

有限状態言語では取り扱えない、埋め込みのような文形成プロセスが存在する。

 

第4章 句構造

統辞レベルにおける言語記述は構成素分析を用いて定式化される。

置換規則だけを適用し、Sentenceという抽象記号から漸次的に具体的な文を生成する有限列 を派生(derivaration)という。

同じ樹形図に帰着する二つの派生を、「同値(equivalent)である」というが、一つの文が同値でない複数の派生を許す場合、構造的同音異義性(constructional homonymity)が生じているといい、この文は多義(ambiguous)となる。

有限状態文法で扱えなかったような文が、句構造文法で扱えるようになる。

***

第5章 句構造による記述の限界
句構造に組み込めない規則群
・等位接続
句構造文法の各規則は、派生の各段階での最終状態しか要求しないが、問題の規則は派生の履歴を参照できることを要求する。
句構造文法の各規則は、単一記号の置換であるが、問題の規則は二つの文を同時に参照できることを要求する。
・助動詞句
句構造文法は、助動詞句(have...enやbe...ing)をうまく扱うことができない。助動詞句は不連続要素(複数語に渡って扱われる要素)であり、さらに倒置を扱えることを要求する。

・受動と能動
 この規則は文法の大幅な単純化を可能にするが、句構造文法の限界を大きく超える。

これらの句構造の限界を踏まえ、句構造(Phase structure) + 変換構造(Transformational structure) + 形態音素論(Morphophonemics) の3つのレベルに分かれた文法モデルが提示される。

 

変換レベルの規則群の性質
句構造レベルから分離された変換レベルの規則群は、以下のような性質を有する。

・変換の適用には順序を定めなければならない。
・変換は、派生が文となるために必ず適用される義務的(obilgatory)なものと、そうではない随意的(optional)なものに二別される。助動詞句に関する変換が前者、受動・能動に関する変換が後者となる。義務的変換のみを適用して得られる文を核文(kernel sentences)、その集合を核(kernel)という。

 

第6章 言語理論の目標について
・文法は妥当性の外的条件(exterenl conditions of adequacy)を満たす必要がある。
→その文法によって生成された文は、母語話者にとって容認可能でなければならないだろう。
・文法は一般性の条件(conditions of generality)を満たす必要がある。
→所与の言語文法は言語構造に対する特定の理論に則って構築されなければならず、また、その理論においてはいかなる個別言語とも独立に「音素」や「句」といった用語が定義されていなければならないのである。

言語構造の一般理論が、コーパスが与えられたときに個別文法に対して提供できる機能に対して、3段階の要請がありうる。
・発見手続(discovery procedure) : コーパスだけを入力として、文法を構築して出力する方法・装置
・決定手続(decision procedure) : 入力・提案された文法が、入力されたコーパスの源となる言語の最良の文法なのかどうかを決定して出力する方法・装置
・評価手続(evaluation procedure) : 二つの文法が入力・提案されたとき、どちらがコーパスの源となる言語のよりよい文法なのかを選択する方法・装置

評価手続が最も弱い要請である。そして、言語理論が満たせる最大限の要請である。

文法の評価・選択を行うために例えば単純性(simplicity)のような基準を用いる場合、三つの課題がある。
・「文法の妥当性に関する外的基準を(もし可能ならば、操作的、行動的テストも含めて)精密に述べる」こと。
・「文法の形式を一般的かつ明示的な形で特徴付け、その結果その形式を持つ文法を個別言語に対して実際に提案」すること。
・「適正な形式を持つ文法間の選択にあたって我々が用いようとしている単純性の概念を分析し定義」すること。

第7章 英語におけるいくつかの変換
核の構造
英語の文の核は、単文であり、平叙文であり、能動文であるような文の集合であり、それ以外の文は変換体として核の外に置かれる、という直感とあまり矛盾しない結論が示される。


変換の議論の利得
構成素構造を確定するための基本的な基準の極めて多くは、実のところ変換に基いているものである

 


第8章 言語理論の説明力
我々が示唆していることは、「文を理解する」という概念は、言語学的レベルという概念に基いてある程度説明されるべきであるということである

文法が文の構造に備わる類似性や多義性、分類という問題に対処するには、 それぞれの問題に応じた言語学的レベルを扱える必要がある。
・形態論レベル
句構造レベル
・変換レベル


第9章 統辞論と意味論
・音素的弁別
同義語 synonyms(音素的に弁別されるが同一の意味を有する発話トークン)、同音異義語 homonyms(同義語の逆)の説明ができない。
形態素と意味
形態素は意味を有する最小の要素である。
・能動と受動
能動文とそれに対応する受動文は同義(synonymous)である。
・形式的特徴と意味的特徴
主語や目的語の概念には構造的意味が付されるというよりは、 単に文法理論に属する形式的な要素として扱われるべきである。

言語理論の論理構造 序論

言語、文法、構造

 

名詞や動詞などの「統辞範疇」が文を構成する「原子」のようなものだと考えたが、
それらがさらに小さな単位の複合体であり、「素粒子」に相当するような「素性」というがある。

 

 

■「生成文法の企て」の原点―『統辞構造論』とその周辺―

 

 

目次

まえがき
第1章 序文
第2章 文法の独立性
第3章 初歩的な言語理論
第4章 句構造
第5章 句構造による記述の限界
第6章 言語理論の目標について
第7章 英語におけるいくつかの変換
第8章 言語理論の説明力
第9章 統辞論と意味論
第10章 要約
第11章 付録Ⅰ 表記と術語
第12章 付録Ⅱ 英語の句構造規則および変換規則の例
参考文献

言語理論の論理構造 序論
第1節
第2節
第3節

参考文献

【解説】「生成文法の企て」の原点――『統辞構造論』とその周辺
第1節 はじめに
第2節 「革命」の背景
歴史言語学―「順序付けられた書き換え規則」という概念
ゼリッグ・ハリスと構造主義言語学
哲学,数学,数理論理学
ケンブリッジでの出会い―モーリス・ハレを中心に
第3節 「革命」の内容
言語研究の目標―言語,文法,言語理論
書き換え系の研究と代数的言語学
変換の理論
第4節 「革命」後の展開――概観
生成音韻論の発展
心理学,生物学との交流
人間言語の代数的研究
デカルト言語学
統辞理論の進展
第5節 おわりに

参考文献
あとがき
人名索引
事項索引