akon2.00βのよっぱらいの戯言

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病気はなぜ、あるのか

 

 

 

病気が「どのようにして生じるのか」という至近要因(メカニズムの解明)をこれまで問題としてきたが、究極要因すなわち病気が「なぜ生じるのか」(進化的起因の解明)にも目を向けるべきだ。この視点に立つ医学研究が進化医学(チャールズ・ダーウィン自然淘汰の理論に基づくダーウィン医学)と呼ばれる。

 

ウィルスが宿主を病気させるのは、咳や下痢といった防御機能を作動させ、体外に排出させ、他の宿主に移動し拡散するため。

ウィルスにとって致死性が高いと、感染前に宿主が死んでしまい自分も絶滅してしまう。最適なのは、症状を長引かせて大量の遺伝子を対外に放出すること。

 

感染症の戦いに人類が勝利を収めることはできない。

数が膨大で寿命が短く、頻繁に世代交代を繰り返すことで進化の速度が速いので、新種の抗生物質にもたちまち抵抗力を持つ。

 

ヘモクロマトーシス

鉄分の過剰吸引→わかいときは鉄分の欠乏を防ぐ

 

ペプシノゲン

胃潰瘍のもと。わかいときは胃酸の濃度が高いことで感染症への抵抗が強かった

 

免疫系は感染症から守るために化学物質を放出するがこの化学物質がガンを引き起こす

 

つまり、成長のある時期に生殖能力を最大限にしている。

 

病気の原因

防御、感染、新しい環境、遺伝子、設計上の妥協、進化の遺産

 

自然淘汰は集団ではなく遺伝子に有利に働く。

レミング集団自殺は単に演出。溺死するのはまれ。
進化では、自己を犠牲にして他者を助けるような行動をする固体は有利にならない。

進化には計画性も方向性もない。個々の生物体に生じたランダムな変異がその生物体の適応度にわずかな違いを生み出す。

 

人間の生理機能には、形質がほぼ最適な数値に作られているものがある。

骨の形と大きさ、血圧、ブドウ糖レベル、脈拍数、胃酸の濃度

 

母乳のたんぱく質は20%のラクトフェリン(鉄分と結合する分子)でできていて、牛乳には2%しか含まれていないため、母乳で育てられた赤ちゃんは病気に感染しにくくなる。

 

防衛とは、細菌にとって重要かつ希少な資源である鉄分をわたさないということである。感染がおこると、白血球内因性媒介物質という化学物質を出して体温をあげると同時に、血液中の鉄分の量を大幅に減らし、腸が鉄分を吸収する量も感染中は減少させる。

 

グルーミングは単なる儀式ではなく、予防健康管理。

 

強制排出に基づく防御

開口部は病原体の侵入口であるが、それぞれに特別な防御メカニズムが備わっている。

口→唾液

目→涙

耳→抗菌性の耳垢

鼻→鼻甲介

 

マクロファージ

異質なたんぱく質を見つけ出し、ヘルパーT細胞に渡し(抗原提示)、ヘルパーT細胞から放出されたサイトカインにより、キラーT細胞が病原体や感染細胞を攻撃、またB細胞がその病原体にだけ特別に攻撃能力を発揮する抗体をつくって、病原体を攻撃。

 

損傷した組織を再生する能力は、これを可能とする装置を維持するコストがかかるだけでなく、害になるような成長を制御する能力が下がるというコストもかかる。

 

病気の原因となる一般的な遺伝子

・鎌状赤血球遺伝子の同型接続体

グルコース6リン酸脱水酵素欠損

 

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帰納的な設計の不備

・網膜の内と外が裏返し

・網膜の上に血管がある

→このため、目は数分の1秒ごとにわずかに異なる場所を走査するように、絶え間なく小刻みにぴくぴくと動いている。

 

自然淘汰で徐々に虫垂のサイズを小さくすると、虫垂炎にかかりやすくなり、大きめが淘汰上有利となる。

 

固体が他の個体と遺伝的にまったく同じであれば、ある病原体に感染すると全滅してしまう。

 

病気の原因に関する総論

・病気にかかりやすくさせる遺伝子がある

→適応度に影響を及ぼすには遅すぎるような人生の後半でその不利益が現れるため、その遺伝子が取り除かれない。

・進化してきた環境では存在しなかったような新しい要因にさらされることによって生じる病気

・直立姿勢をとるから腰痛が起きるように、からだの設計の妥協によって生じる。

・病原体も自然淘汰によって適応を生み出している。

 

【目次】
まえがき i
謝辞 xv
第1章:病気の神秘 1
 二種類の原因
 病気の原因
 本書で述べていないこと
第2章:自然淘汰による進化 17
 自然淘汰は集団ではなく遺伝子に有利に働く
 血縁淘汰
 自然淘汰はどのように働くか
 進化的仮説の検証
 適応論的アプローチ
第3章:感染症の徴候と症状 39
 感染に対する防御としての発熱
 鉄分の抑制
 戦略と対抗戦略
 衛生
 皮膚
 疼痛と倦怠感
 強制排出にもとづく防御
 侵入者を攻撃するメカニズム
 損傷と修復
 病原体による宿主の防御のくぐり抜け
 宿主の防御への攻撃
 病原体がもっているその他の適応
 病気への機能的なアプローチ
第4章:終わりなき軍拡競争 75
 過去の進化 対 現在の進化
 抗生物質への細菌の抵抗性
 毒性の短期的な進化
 免疫反応の利益と損失
 ますます複雑になる偽装
 新しい環境要因
第5章:ケガ 99
 ケガの回避
 一般化された学習と理解
 ケガの修復
 やけどと凍傷
 放射線
 からだの部分の再生
第6章:毒素−新,旧,いたるところ 117
 自然の毒素と自然でない毒素
 自然の毒素に対する防御
 新種の毒素
 突然変異と催奇物質
第7章:遺伝子と病気−欠陥,変わり者,妥協 139
 遺伝子がすること
 病気の原因となるまれな遺伝子
 病気の原因となる一般的な遺伝子
 無法者遺伝子
 遺伝的気まぐれ−近視その他たくさん
 遺伝子を怖がるな
第8章:若さの泉としての老化 165
 加齢の神秘
 老化とは何か
 一頭立ての馬車
 なぜ年をとるのか
 老化のメカニズム
 老化の速度における性差
 医学的な意味合い
第9章:進化史の遺産 189
 他の機能的な設計の不備
 最後の仕上げ
 石器時代における死
 石器時代の生活
第10章:文明化がもたらした病気 217
 現代の食生活の不適切さ
 現代の栄養の取り過ぎ
 中毒
 現代の環境に由来する発達上の問題
 現代の環境に由来するその他の病気
 結論といくつか奨励したいこと
第11章:アレルギー 239
 IgEシステムの不思議
 アトピー
 もっともやっかいな疑問
第12章:癌 259
 問題
 解決
 癌の予防と治療
 女性の生殖器系の癌
第13章:性と繁殖 275
 なぜ性があるのか?
 男性性と女性性の本質
 雄と雌のあいだの葛藤と協力
 配偶者の好み
 欺瞞的な配偶戦略
 繁殖の解剖学と生理学
 嫉妬
 性的障害
 妊娠
 出産
 幼児期
 泣きと疝痛
 乳幼児突然死症候群SIDS
 離乳とその後
第14章:精神障害は病気か? 313
 感情
 不安
 新しい危険
 悲しみとうつ病
 愛情の欠如
 子どもの虐待
 精神分裂病
 睡眠障害
 夢を見ること
 精神医学の将来
第15章:医学の進化 353
 病気の原因に対する総論
 研究
 なぜこんなに長くかかったのか?
 医学教育
 診療においてもつ意味
 政策上の意味合い
 個人的および哲学的な意味合い
訳者あとがき 377
注 [9-34]
索引 [1-7]